NHK『坂の上の雲』第1回を見た。
テレビドラマとしては空前のスケール。
大作である。
そして、労作である。
キャストもいい。
演出や映像も頑張っている。
トータルで、かなり面白いドラマになっていた。
それらは十分認めた上で、「さて、なぜ今、『坂の上の雲』なのか」と思ったのも事実。
「この物語を3年間にわたって見せようというNHKの意図はどこにあるのか」と考えたのも本当だ。
番組ホームページでは、以下のように説明されている・・・
<企画意図>
「坂の上の雲」は、司馬遼太郎が10年の歳月をかけ、明治という時代に立ち向かった青春群像を渾身の力で書き上げた壮大な物語です。発行部数は2,000万部を超え、多くの日本人の心を動かした司馬遼太郎の代表作でもあります。
今回、国民的文学ともいえるこの作品の映像化がNHKに許されたのを機に、近代国家の第一歩を記した明治という時代のエネルギーと苦悩をこれまでにないスケールのドラマとして描き、現代の日本人に勇気と示唆を与えるものとしたいと思います。
21世紀を迎えた今、世界はグローバル化の波に洗われながら国家や民族のあり方をめぐって混迷を深めています。その中で日本は、社会構造の変化や価値観の分裂に直面し進むべき道が見えない状況が続いているのではないでしょうか。
「坂の上の雲」は、国民ひとりひとりが少年のような希望をもって国の近代化に取り組み、そして存亡をかけて日露戦争を戦った「少年の国・明治」の物語です。そこには、今の日本と同じように新たな価値観の創造に苦悩・奮闘した明治という時代の精神が生き生きと描かれています。
この作品に込められたメッセージは、日本がこれから向かうべき道を考える上で大きなヒントを与えてくれるに違いありません。
・・・堂々たる文章だ。
何しろ「現代の日本人に勇気と示唆を与える」のだから。
しかし、まだ十分には腑に落ちない。どこか納得がいかない。
一つには、ちょうど先日、東大の加藤陽子さんの近著『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読んだことが影響している。
高校生たちに向かって語る、という形式を用いて、「時々の戦争の根源的な特徴、時々の戦争が地域秩序や国家や社会に与えた影響や変化を簡潔に明解に」まとめた一冊だ。
この本の中に、日露戦争の“意味”についての説明がある。
と、ここまで書いて、加藤さんの本を探したのだが、混迷を深める部屋のどこかに紛れ込んだらしく、見つからない(笑)。
出てきたら、修正します。
本の中で、『坂の上の雲』の主人公の一人である秋山真之が、乃木希典に何通もの手紙を送り、たとえ4~5万人の陸軍兵士の命を失ってでも旅順陥落を成し遂げて欲しい、と訴えたことが紹介されている。
記憶で続けると、加藤さんは、多大な犠牲を払って勝利した日露戦争の“記憶”は、国民の中に強く残った、という。
さらにその記憶は、政治家や軍人によってリプレイされ、「昭和の戦争」の発動にも大きく影響している、というのだ。
『坂の上の雲』をドラマ化するのであれば、日露戦争を否定的に描くことは困難だろう。
結果的に、このドラマでは、「明治の戦争」は“国家防衛戦争”として肯定的に描き出され、それは“侵略戦争”としての「昭和の戦争」と対比され、もしくは切り離されて語られたりはしないのだろうか。
考え過ぎかもしれないが、そこのところが、とても気になる。
ということで、また後日、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を発見したら(笑)、あらためて書いてみたい。
テレビドラマとしては空前のスケール。
大作である。
そして、労作である。
キャストもいい。
演出や映像も頑張っている。
トータルで、かなり面白いドラマになっていた。
それらは十分認めた上で、「さて、なぜ今、『坂の上の雲』なのか」と思ったのも事実。
「この物語を3年間にわたって見せようというNHKの意図はどこにあるのか」と考えたのも本当だ。
番組ホームページでは、以下のように説明されている・・・
<企画意図>
「坂の上の雲」は、司馬遼太郎が10年の歳月をかけ、明治という時代に立ち向かった青春群像を渾身の力で書き上げた壮大な物語です。発行部数は2,000万部を超え、多くの日本人の心を動かした司馬遼太郎の代表作でもあります。
今回、国民的文学ともいえるこの作品の映像化がNHKに許されたのを機に、近代国家の第一歩を記した明治という時代のエネルギーと苦悩をこれまでにないスケールのドラマとして描き、現代の日本人に勇気と示唆を与えるものとしたいと思います。
21世紀を迎えた今、世界はグローバル化の波に洗われながら国家や民族のあり方をめぐって混迷を深めています。その中で日本は、社会構造の変化や価値観の分裂に直面し進むべき道が見えない状況が続いているのではないでしょうか。
「坂の上の雲」は、国民ひとりひとりが少年のような希望をもって国の近代化に取り組み、そして存亡をかけて日露戦争を戦った「少年の国・明治」の物語です。そこには、今の日本と同じように新たな価値観の創造に苦悩・奮闘した明治という時代の精神が生き生きと描かれています。
この作品に込められたメッセージは、日本がこれから向かうべき道を考える上で大きなヒントを与えてくれるに違いありません。
・・・堂々たる文章だ。
何しろ「現代の日本人に勇気と示唆を与える」のだから。
しかし、まだ十分には腑に落ちない。どこか納得がいかない。
一つには、ちょうど先日、東大の加藤陽子さんの近著『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読んだことが影響している。
高校生たちに向かって語る、という形式を用いて、「時々の戦争の根源的な特徴、時々の戦争が地域秩序や国家や社会に与えた影響や変化を簡潔に明解に」まとめた一冊だ。
この本の中に、日露戦争の“意味”についての説明がある。
と、ここまで書いて、加藤さんの本を探したのだが、混迷を深める部屋のどこかに紛れ込んだらしく、見つからない(笑)。
出てきたら、修正します。
本の中で、『坂の上の雲』の主人公の一人である秋山真之が、乃木希典に何通もの手紙を送り、たとえ4~5万人の陸軍兵士の命を失ってでも旅順陥落を成し遂げて欲しい、と訴えたことが紹介されている。
記憶で続けると、加藤さんは、多大な犠牲を払って勝利した日露戦争の“記憶”は、国民の中に強く残った、という。
さらにその記憶は、政治家や軍人によってリプレイされ、「昭和の戦争」の発動にも大きく影響している、というのだ。
『坂の上の雲』をドラマ化するのであれば、日露戦争を否定的に描くことは困難だろう。
結果的に、このドラマでは、「明治の戦争」は“国家防衛戦争”として肯定的に描き出され、それは“侵略戦争”としての「昭和の戦争」と対比され、もしくは切り離されて語られたりはしないのだろうか。
考え過ぎかもしれないが、そこのところが、とても気になる。
ということで、また後日、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を発見したら(笑)、あらためて書いてみたい。
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