碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

書評した本: 佐々木俊尚 『広く弱くつながって生きる』ほか

2018年04月30日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。

佐々木俊尚 
『広く弱くつながって生きる』

幻冬舎新書 842円

ストレスは自分と外界との関わりが原因であることが多い。本人が意識する、しないにかかわらず、家族、会社、業界、そして社会といった集団との関係は濃密で強い。息苦しさに始まり、やがて「逃げ場がない」と自分を追い込んでしまうこともある。佐々木俊尚『広く弱くつながって生きる』は、そんな自縄自縛から脱する一つのヒントだ。

かつて新聞記者だった著者は、所属する組織と取材相手の両方に対して、「強いつながり」を持ちながら仕事をしてきた。フリーランスとなって15年。リーマン・ショックや東日本大震災を経験することで、縦の強いつながりではなく、横に広がる「弱いつながり」の有効性に気づいたと言う。

提言としては、まず組織への過剰依存をやめてみること。その代わり、個人同士のつながりを蓄積していく。著者はその方法としてフェイスブックの活用を勧める。ただし、そこでは利害関係を発生させない。また友だちに見返りを求めない。「相手にとって必要な人」になることを目指す。その際に大切なのが笑顔、好奇心、謙虚さの3つだ。それによって自分より若い世代とも「弱いつながり」を持つことが可能になる。

自分は誰とつながっているのか。どういう人間関係を持っているのか。組織という面ではなく、個人という点を大切にしているか。少し立ち止まって自己点検するのもいいかもしれない。人生は「短絡的な物語」ではなく、偶然や相互作用も社会の原理なのだから。


週刊ダイヤモンド編集部:編 
『慶應三田会 学閥の王者』

ダイヤモンド社 1512円

三田会とは慶應のOB組織だ。学年、地域、業種や企業など幾重にも張り巡らされており、一人が複数の三田会に所属することも多い。本書では銀行、総合商社、不動産会社などを例に、ビジネス界における三田会の強さを探っている。組織論、経営論としても興味深い。


古屋美登里 
『楽な読書』

シンコーミュージック・エンタテイメント 1620円

翻訳家である著者の書評コラム集。たとえばチャンドラー『ロング・グッドバイ』の魅力は、「マーロウの目を通して見たこの世界の成り立ち方」と明快だ。また浦沢直樹『20世紀少年』では音楽の役割に注目する。倉橋由美子を取り上げた連続コラムも読み応え十分。


松田文夫
『内部告発てんまつ記~原子力規制庁の場合』

七つ森書館 1944円

原子力規制庁で不正入札が行われていた。発注者・受注者の出来レースと官製談合の2件だ。本書は現役技術参与による内部告発の一部始終である。最初は無反応。受理された後も調査は一向に進まない。逆に国家公務員法違反の疑いをかけられた著者は反撃に出る。

(週刊新潮 2018年4月19日号)


【気まぐれ写真館】 今月も、千歳「柳ばし」で特製定食

2018年04月29日 | 気まぐれ写真館

特製「豚カルビ定食」


名物「メンチカツ」と並ぶ、超人気メニュー「チーズササミ」


【気まぐれ写真館】 札幌駅のホームで

2018年04月29日 | 気まぐれ写真館
2018.04.28

HTB北海道テレビ「イチオシ!モーニング」

2018年04月29日 | テレビ・ラジオ・メディア

















2018.04.28

「アガサ・クリスティ原作」スペシャルドラマ3本を振りかえる

2018年04月29日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


ミステリの女王「アガサ・クリスティ」原作の
スペシャルドラマ3本を振りかえる


野村萬斎主演「黒井戸殺し」(フジテレビ系)

今月14日に、野村萬斎主演のスペシャルドラマ「黒井戸殺し」(フジテレビ系)が放送されました。ドラマの原作は、“ミステリの女王”アガサ・クリスティの長編小説「アクロイド殺し」です。

クリスティがこの作品を発表したのは90年以上前の1926年でしたが、そこで使われたトリックが、というよりこの作品全体の「仕掛け」が衝撃的で、当時は「フェアか、それともアンフェアか」という論争が巻き起こった問題作でもあります。

原作では、のどかなキングズ・アボット村で1人の女性が亡くなります。睡眠薬の過剰摂取でした。その後、彼女の再婚相手といわれていた富豪、アクロイドが何者かに殺害されてしまいます。彼の姪が助けを求めたのは、引退してこの村で暮していた(のんびりとかぼちゃ作りをしていた)名探偵エルキュール・ポアロでした。

原作に忠実な“脚色ぶり”

脚本は、三谷幸喜さん。かつて同じフジテレビで放送された「オリエント急行殺人事件」(15年)の脚本も手掛けています。

三谷さんは物語の舞台を日本の地方の村へと移し替えると共に、時代設定を昭和27年(1952年)としています。その上で、原作小説を読んでいない視聴者のためにも細心の注意をはらいながら、3時間のドラマを構成していました。もっとストーリー自体をいじってくるかと思いましたが、全体としてはむしろ忠実な“脚色ぶり”だったと思います。

ドラマでは、ポアロが前作「オリエント急行殺人事件」と同じ勝呂武尊(すぐろ たける/野村萬斎)に、そして語り手のシェパード医師は柴平祐医師(大泉洋)になっていました。大泉さんの役名は、日本だからシェパード犬じゃなくて柴犬っていう駄じゃれですね(笑)。

主な登場人物は、殺害される富豪が黒井戸禄助(遠藤憲一)。夫を亡くした女性は唐津佐奈子(吉田羊)。柴の姉はカナ(斉藤由貴)。そして勝呂の依頼人となる、黒井戸の姪が花子(松岡茉優)。なかなか豪華なキャストです。

三谷さんは、「全員が容疑者」という前提で話を展開していましたので、「フェアか、アンフェアか」の仕掛けやネタばれもあまり心配せずに、ドラマを楽しむことができました。

「黒井戸殺し」で気になったこと

ただ、気になったことが2点ほどあります。1つ目は野村萬斎さんのややオーバーに見える演技です。もちろんポアロと勝呂は別人格ですし、勝呂はこういう人物だと言われたら、「そうですか」と言うしかないのですが、あまりにも作り過ぎの(わざとらし過ぎる)話し方や表情に、ちょっと引き気味の視聴者も多かったのではないでしょうか。もう少し抑えてくれたらよかったのですが。

2点目は、容疑者の一人として登場した「復員兵の男」です。前述のように、このドラマの設定は昭和27年です。翌年にはテレビ放送も始まるという時期であり、さすがに「兵隊服姿の復員兵」が町をうろうろと歩いている時代ではありません。

横溝正史原作の映画「犬神家の一族」(1976年、市川崑監督)では、例の白いマスクを着けた佐清(すけきよ)が戦地から復員してきた、まさに「復員兵の男」でした。あの作品は敗戦から数年後という設定でしたから、「兵隊服姿の復員兵」は当たり前のような存在だったのです。でも、今回は・・・。

といったことはあるにせよ、このドラマは、全体として「ポアロ物」としての雰囲気を十二分に醸し出していました。「三谷×クリスティ」企画、ぜひまた見てみたいものです。

テレビ朝日系の「クリスティ原作」ドラマ2本

最近は、ブームかと思うほどクリスティ原作のドラマが続きました。テレビ朝日が「パディントン発4時50分」と、「鏡は横にひび割れて」というクリスティの小説をドラマ化し、3月24日・25日の2夜連続で放送していたのです。

どちらも、クリスティが生み出したもう一人の“名探偵”、ミス・マープルが主人公の小説です。ミス・マープルはポアロのような職業的探偵ではなく、いわば「うわさ好きのおばあちゃま」という感じの一般人。まあ、そこが「マープル物」の面白さでもあるのです。

ところが、テレ朝の2本は、ミス・マープルというキャラクター、人物像そのものを大幅に変更していたのです。変更というか、オーバーな言い方をすれば、マープルそのものを消し去っていました。

「パディントン発4時50分~寝台特急殺人事件~」の探偵役は、「元敏腕刑事にして危機管理のプロという華麗な経歴を持つデキる女、天乃瞳子(あまの・とうこ)」。演じていたのは、天海祐希さんです。

また、「大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~」のほうは、「警視庁きっての名警部、捜査一課・特別捜査係の相国寺竜也(しょうこくじ・りゅうや)」で、沢村一樹さんが扮していました。

瞳子も、相国寺も、「うわさ好きのおばあちゃま」とは、ずいぶんかけ離れていますよね。そう、この2本における主人公の設定は、「黒井戸殺し」がポアロを勝呂に変えながら、ドラマを「ポアロ物」として作っていたのとは別次元です。はっきり言って、「マープル物」ではありませんでした。

原作者と作品への礼儀と敬意

原作となる小説に、制作側が手を加えながらドラマ化するのは、ごく普通に行われることです。しかし、変更や手を加えるのも程度問題であり、「主人公」そのものをどこかへ追いやるというのは、ちょっとやり過ぎではないでしょうか。

有名作家の作品のタイトルと物語の筋だけを拝借し、まったく別の人物が主人公となって活躍するドラマにしてしまう。そこには、オリジナルを創りだした原作者へのリスペクトが、大きく欠けています。

クリスティが亡くなってから42年が過ぎています。もしも彼女が生きていたなら、この「ミス・マープル不在のマープル物」2本をどう見ただろうか、なんてことまで思ってしまいました。

そもそもこの企画自体、クリスティの「マープル物」の日本版を作りたいというより、天海祐希さんや沢村一樹さんが主演のスペシャルドラマを作りたかっただけではないのか、という印象が強いのです。だったら、別の原作もあったでしょうに。

とはいえ、熱演の天海さんや沢村さんに罪はありませんし、どちらもドラマそのものは、スペシャルと呼べる出来になっていたのは確かです。また楽しんだ視聴者もたくさんいたはずです。それだけに、大きく「クリスティ原作」をうたっていた2本に、どうにも違和感がありました。本当は、「パディントン発4時50分」に出演してらした草笛光子さんなど、ミス・マープルにはぴったりだったんですけどね。「主演・草笛光子」で、なぜいけないのか(笑)。

クリスティの小説は確かに面白いです。ドラマ化したくなるのもわかります。しかし映像化権を得て(使用料を払って)いれば原作をどう扱おうと勝手だろう、というものではありません。少なくとも、無から有を生み出した原作者、そして作品そのものへの礼儀と敬意は忘れないでほしいと思うのです。

HTB北海道テレビ「イチオシ!」

2018年04月28日 | テレビ・ラジオ・メディア




















2018.04.27

【気まぐれ写真館】 今月も、札幌「まる山」で鴨せいろ

2018年04月28日 | 気まぐれ写真館
2018.04.27

【気まぐれ写真館】 札幌 気温12℃

2018年04月28日 | 気まぐれ写真館
2018.04.27

【気まぐれ写真館】 四ツ谷駅前夕景

2018年04月27日 | 気まぐれ写真館
2018.04.26

週刊新潮で、「福田セクハラ次官問題」についてコメント

2018年04月27日 | メディアでのコメント・論評


福田セクハラ次官問題 
「なぜ自社で報道できないか」の疑問に答える

セクハラオヤジから“口撃”された女性の告発の舞台が、なぜ本誌(「週刊新潮」)なのか――。騒動を扱う情報番組でコメンテーターや司会者が口にしている、この単純な疑問に頷いた視聴者も少なくなかろう。お説ごもっとも。ならばいま一度、端的に説明させていただきます。

たとえば、4月15日のTBS系「サンデー・ジャポン」。「今回ちょっと思ったのはね」と、テリー伊藤。

「本当だったらああいうことがあったら自分が属しているメディアに対して言えばいいのに、(中略)事務次官の方だって当然、誰だってことは分かるわけじゃない。彼女自身がやりにくくないのかなあと思って」

この翌日。日本テレビ系の「ミヤネ屋」では、

「女性記者の方だったら、なんでそれを週刊新潮さんに持っていくんですかね。自分でできないんですかね」

元読売巨人軍の宮本和知がこう言い、宮根誠司は、

「だから結局そうなってくると、特定されてしまうってことがあるんですかね」

これらを約(つづ)めれば、「被害女性たちは、なぜ自社で報道できないか」となる。

それにはまず、「自社」に訴えたことのある女性の声をご紹介しよう。彼女は40代、大手新聞社の勤務だ。

「社会部記者でした。情報源からのセクハラを受けいれてネタを引いているとか、ただならぬ関係にあるんじゃないかと疑われて口惜しい思いをしたので、会社に相談したのです」

すると、どうなったか。

「幹部に呼び出され、“ひとりの人間を潰す気か”と叱責されました。情報源の勤務先に洩れて迷惑がかかったらどうするんだ、と」

記者クラブと会社の看板

次官の件とはいささか異なるが、そもそもの問題は、「日本は、組織ジャーナリズムで動いていますから」と、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)。

「記者クラブのような組織に属し、会社の看板を背負うからこそ取材ができるのです。そういったなかで自らが属する媒体で被害を報じれば、同僚が取材現場でなんらかのリミットをかけられることは火を見るより明らか。福田次官の件がそんな相手の立場の弱みを巧みに利用した、卑怯な手口だったといっても、彼女たちもセクハラを受けて、そこで帰ってしまえば、会社から“なにやってんだ”と言われてしまうんですよ」


具体的に言えば、こういうことだ。財務省を担当するデスクの解説。

「セクハラに反発したりすれば、その女性記者が所属する社は財務省から嫌がらせをされて“特オチ”(※他社は報じているのに、自社だけが逃したニュース)が待っている。そうなると同僚にも迷惑がかかります」

これは検察や警察、各省庁の記者クラブにもあてはまる。政治家相手も然り。

「新聞やテレビの記者がもっとも避けたいのが特オチです。特オチは会社の看板に泥を塗るだけでなく、記者の評価にも直接、響く。つまり、ひとりの女性記者がセクハラで声をあげると、その社のクラブ員が特オチし、評価を下げられる可能性がある。それが分かっているから、女性記者は多少のセクハラにもニコニコ笑って耐え、取材相手に愛敬を振りまくわけです」

たとえば、財務省担当の至上命題のひとつに、日銀総裁人事がある。

「それで特オチしようものなら、それこそ地方の支局に飛ばされます。最強官庁と呼ばれる財務省は情報の出し入れがうまく、記者を使った情報操作にも長けている。日ごろから財務省の意に沿う原稿を書いていないと、日銀総裁人事が取れないといった仕打ちを受けるおそれがあります」

いかがでしょう? なぜ自社で報道できないか、お分かりいただけたのでは。

(週刊新潮 2018年4月26日号)

「未解決の女 警視庁文書捜査官」 本当の主役は誰か!?

2018年04月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


脇役の鈴木京香が主演の波瑠を食う?
女性版「相棒」の試み

主演は波瑠(26)。脚本が大森美香。これってNHK朝ドラ「あさが来た」(2015年)の組み合わせだ。それが今回は刑事ドラマ「未解決の女 警視庁文書捜査官」(テレビ朝日系)である。しかも変種の刑事物で、主役たちの任務は未解決事件の文書捜査なのだ。ヒロインの矢代朋(波瑠)は熱血刑事。体を張った捜査で負傷し、復帰してみると「特命捜査対策室第6係」への異動が待っていた。

地下にある元・文書保管倉庫の部屋にいたのは「文書解読」のエキスパート、鳴海理沙刑事(鈴木京香)だ。他に定時退庁が決まりの係長・財津(高田純次)、コワモテの刑事・草加(遠藤憲一)らがいる。

先週の初回では若い女性の連続変死事件が発生。彼女たちの部屋に、10年前に殺害されたミステリー作家・嶋野泉水(中山美穂)の著作があったことから再捜査が始まった。

事件の捜査においては同じ捜査1課の第3強行班などが主役で、「文書解読係」の6係はあくまでサポート部隊であり、脇役だ。しかし、その脇役が主役を食うような活躍を見せるところが、このドラマの醍醐味なのだ。

特に「倉庫番の魔女」と呼ばれる鳴海理沙が展開する、文章心理学をベースにした推論が冴えていた。一見とっぴな推測も、それを重ねることで隠れていた真相が明らかになる。鳴海が部下である朋を自在に動かしていく様子はかなりの見ものだ。

その意味では、本当の主役は波瑠ではなく鈴木京香なのかもしれないが、まあ堅いことは言わず、この女性版「相棒」の試みを楽しめばいい。

(日刊ゲンダイ 2018.04.25)

デイリー新潮で、「岡本圭人」上智大中退についてコメント

2018年04月25日 | メディアでのコメント・論評


Hey! Say! JUMP「岡本圭人」が上智大を中退 
「あの大学は芸能人には向かない」との声

「すべてはぼくの力不足です」――。「女性セブン」18年5月3日号(小学館)で、Hey! Say! JUMPの岡本圭人(25)が、2012年に入学した上智大学国際教養学部を、昨年(17年)夏に退学していたことを明かした。しかも、一度は自主退学したものの、思い直して復学した結果の中退という。 

 高学歴化が進むジャニーズ事務所のタレントたちだが、なぜ?

 ***

 昭和生まれの方には、男闘呼組の岡本健一(48)の息子、と言ったほうが通りがいいかもしれないが、父と共にジャニーズ事務所に所属する“ジャニーズ2世”が岡本圭人だ。

「彼が通っていた上智大学国際教養学部というのは、1学年50人ほどと人数も少なく、帰国子女や留学生など英語に堪能な学生が多い。入試は公募制推薦とTOEFLまたはIELTSの点数と英文レポートの提出で行われる書類選考で決まり、いわゆる一般入試とは違います。入学後も授業はすべて英語で行われますから、大変だと思いますよ」とは、上智大学のOBである。

とはいえ圭人は、父・健一の方針で、9歳から5年間、英国に留学し、帰国後もインターナショナルスクールに通ったという。英語は堪能なはずだ。

上智大学の碓井広義教授[63](メディア文化論)は、

「国際教養学部に限りませんが、上智大学は他の大学に比べると規模はそれほど大きくない。これは校風でもありますが、各定員が少なく、何百人もの学生が入れる大教室もありません。多くても100人、通常は30~40人ほどの教室で、学生それぞれの顔が見える授業を行うことが多いんです。出欠を取る授業も多く、代返など効きません。芸能活動をしながら、というのは、厳しいでしょうね」


意外に多い上智出身芸能人

 もっとも、かつて上智大学を卒業した芸能人は多いのだ。川平慈英(55)、早見優(51)、西田ひかる(45)、BENI(32)、クリスタル・ケイ(32)、青山テルマ(30)など、圭人が中退となった国際教養学部やその前身である比較文化学部、さらに前身の外国語学部比較文化学科の卒業生たちである。

「最近は特に、出欠には厳しくなってきています。それは国際教養学部ばかりではありません。都心にある大学なので、通いやすいメリットはあるでしょうけど、上智大学には芸能人枠があるわけでもありませんから、仕事との両立はなかなか厳しい」(同)

 その昔、芸能人の学校といえば、堀越高校や明治大学付属中野高校(定時制)などが相場であった。だが昨今のジャニーズには、高学歴のタレントが増えている。嵐の櫻井翔(36)は慶應大を卒業し、ニュース番組「NEWS ZERO」(日本テレビ系)のキャスターを、NEWSの小山慶一郎(33)は明治大卒で「news every.」(同前)のキャスターを務めるなど、バラエティ番組の司会とは一線を画す領域に踏み込んでいる。高学歴は仕事の幅を広げるようだ。

 ところが最近の上智大学を見てみると、文学部新聞学科に在籍中、政治好きとして数多くの番組に出演していた春香クリスティーン(26)も、結局は単位が取れず、一昨年(16年)に除籍となっている――圭人クンは行くべき大学を間違えたのではないか。

代返なんて昔の話

 キャンパスナビネットワークを運営する大学通信の安田賢一常務が解説する。

「時代が違いますよ。いまは上智だけでなく、大学は出欠に厳しくなっています。文部科学省は、少子化により誰でも大学に入れる“大学全入”となってから、学生の質の低下を懸念して安易に卒業させない教育をするよう大学に求めたのです。いくら期末試験でいい点数をとっても、出席数が足らなければ単位は与えないとか、誰でも“優”がもらえる授業はやめるというもの。かつての日本の大学は、入るのは難しいが卒業は簡単、といわれていましたが、それを許さないというわけです。大学側も出欠の確認にはGPSのついたiPhoneで教室にいるかどうか確認できるシステムを取り入れたり、駅の改札を通るようにSuicaで出欠をとる学校もあります。授業を休むには証明書が必要なところもある。そうなれば欠席の理由が『芸能活動のため』とは言えないでしょうね」

 辛いのは学生ばかりではないというのは、とある大学教授である。

「半期に15回以上の授業を行わなければなりませんし、休講にしてしまったら、休日をつぶして補講を入れなければならない。だから学生だって休講を喜びません。それに最近の学生は、素直に授業に出るんですよね。『お前ら、それでも大学生か』と言いたくもなりますが、ここ10年ほど厳しくなってきた様に思います。大学での教育成果は、文科省に報告、チェックされて、上手くいっていなければ助成金が減らされるわけです。私立大学だって、いまや助成金なしではやっていけないのですから、従わざるを得ませんよ」

 中退は「すべてはぼくの力不足です」と圭人は反省しているが、仮に早稲田や慶應に入ったとしても、それなりに真面目に通わなければ、卒業はできないということらしい。 

 その圭人と入れ替わるように、この4月より上智大学国際教養学部へ通っているのが、Sexy Zoneのマリウス葉(18)。ドイツ人の父と日本人の母の下、ドイツのハイデンベルクに生まれた、日本語、ドイツ語、英語に堪能なトライリンガルで、昨年は米ハーバード大学で行われた世界各国の高校生28人によるサミットにも参加したとか。英語の授業に困ることはなないだろう。

 さて、彼は無事卒業できるか――。

(デイリー新潮 2018年4月24日)

ハンディは「個性」 NHK朝「半分、青い。」 

2018年04月23日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評


週刊テレビ評
NHK「半分、青い。」 
ハンディは「個性」爽やか

NHK連続テレビ小説「半分、青い。」がスタートした。ヒロインの誕生以前、母親の胎内にいた時点から描き始めるという、なかなか凝った作りの導入部だった。主人公の楡野鈴愛(にれのすずめ)(永野芽郁(めい))が生まれたのは1971年7月7日。岐阜県東濃地方の町で食堂を営む楡野宇太郎(滝藤賢一)と晴(松雪泰子)夫妻の長女だ。

鈴愛は小学3年生の時、左の耳が聴こえなくなってしまう。恐らく朝ドラ史上初の「ハンディキャップを持つヒロイン」の登場だ。開始前、そのことがどう描かれるのか気になっていたが、基本的に「障害ではなく個性なんだ」という姿勢であることがわかり、ほっとした。鈴愛は「障害のある女の子」ではなく、「個性的でユニークな女の子」なのだ。

聴力を失った左耳は常に耳鳴りがしているが、鈴愛は「左耳、面白い。小人(こびと)が歌って、踊ってる」と言う。この感性が素晴らしい。踊る小人は秀逸な「例え」だ。耳鳴りを小人に「見立てる」ことで、自分が持つハンディキャップの「解釈」も変わってくる。

思えば、人生のどんな出来事も自分の解釈次第なのかもしれない。もちろんこれは鈴愛というより、脚本の北川悦吏子の優れた表現力のおかげだ。その意味では、タイトルの「半分、青い。」こそ最高の例えと言えるだろう。

他にもこのドラマには楽しい例えがいくつも出てくる。鈴愛は母親の晴のことを、「怒ると(『マグマ大使』に出てくる)ゴアみたいだ」と言っていた。

また鈴愛と同じ日に生まれた萩尾律(佐藤健)の母、和子(原田知世)は、息子から「時々、説教臭い」と指摘され、「出来損ないの金八先生みたい」とNHKらしからぬ例えで自分のことを笑っていた。しかも武田鉄矢の「このバカちんが!」という物まね付きだ。

かつて「あまちゃん」(2013年)で話題となった80年代文化だが、他にも松田聖子の歌から温水洗浄便座までさまざまなアイテムを登場させて楽しませてくれている。成功例を踏まえた目配りが見事だ。

そしてドラマの序章を盛り上げたのは晴と和子だった。同時出産から子供を巡ってやり取りするシーンなど、これまでの朝ドラにないほど印象深く母親2人を描いている。キビキビした感じの松雪と、ホンワカした雰囲気の原田。それぞれが個性を生かして団塊世代の母親像を演じているのだ。

現在、鈴愛は高校3年生。永野芽郁の生き生きとした表情が、見る側を朝から元気にしてくれる。同じ高校に通う律との関係に注目しながら、この爽やかな青春ドラマを楽しみたい。

(毎日新聞 2018年4月21日)

【気まぐれ写真館】 「夏日(なつび)」の夕景

2018年04月22日 | 気まぐれ写真館
夏日=最高気温が25度以上となった日

産経新聞で、「財務次官セクハラ問題」テレ朝の対応についてコメント

2018年04月22日 | メディアでのコメント・論評


【財務次官セクハラ問題】
「社員を守るため毅然と抗議すべきだった
テレ朝の初期対応に識者指摘

財務省の福田淳一事務次官(58)による女性記者へのセクハラ問題をめぐり、テレビ朝日が19日未明、被害者は自社の女性社員であることを会見で明らかにした。福田氏はなおもセクハラを否定するが、世間との感覚の「ずれ」を指摘する声は強い。一方、会見では女性社員が、発言を隠し録りした音声データを第三者である週刊新潮に提供していたことが明確になった。セクハラ告発が目的とはいえ、報道の倫理を侵すことにならないのか。識者の間でさまざまな意見が上がった。

「辞任でも救済されず」

「どういう調査をしたか知らないが、(会話の)全体をみればセクハラに該当しないことは分かるはずだ」

19日朝、福田氏は記者団からテレビ朝日が女性社員のセクハラ被害を公表したことについて問われると、自身のセクハラ行為を改めて否定した。

こうした対応について、セクハラに詳しい大阪大の牟田和恵教授(ジェンダー論)は「そもそも発言の根底には、エリートの立場を利用し、誰も自分には楯突くことはできないという思いがある」とした上で、「簡単に非を認めるはずがない。言った側はいつまでも言い逃れをする」と話す。

「セクハラは組織の問題。福田氏が辞任したからといって被害者は救済されない。疑惑の真相解明がうやむやになることはあってはならない」。こう訴える牟田教授は「財務省としてもきちんと内部調査を行い、問題のある行為だったと反省し、被害者への謝罪、全ての女性記者が働き続けられるような再発防止策に取り組む必要がある」と強調した。

一方、元財務官僚でもある嘉悦大の高橋洋一教授は「政策的な話と違い、セクハラは反論すればするほど立場が悪化する」と言及。「本来なら組織を守るために財務省OBが福田氏に進言して身を引かせるべきだったが、それができなかったという意味では、OB・現役も含め財務省という組織に余裕が無くなり、弱体化している」と分析した。

隠し録り「身を守るため」

今回、福田氏の辞任の「決め手」となった音声データ。テレビ朝日によると、女性社員は福田氏との1対1の会食の際にセクハラ発言が続いたことから「身を守るため」に会話を無断で録音していたという。通常、取材では相手に断った上で録音し、音声を公開する際にも了承を得ることが多く、「隠し録り」はいわば「不意打ち」ともいえる取材手法だ。

ただ、立教大の服部孝章名誉教授(メディア法)は「勧められたものではないが、政治家や行政のトップを取材する際に、公益性、公共性のために隠し録りを使って報道することが必要な場面は出てくる」と指摘。今回のセクハラ問題も「音声データがなければ言った言わないの話にされ、うやむやになっていた」とみる。

専修大の山田健太教授(言論法)も「セクハラ被害を訴える際に記録は不可欠で、発言の録音は一般的な社会常識に沿った行為。通常の取材における無断録音とは異なり、報道倫理とは切り分けて考えるべきではないか」としている。

リーク「緊急避難的行為」との見方も

意見が分かれるのが、取材で得ていた情報を第三者である週刊新潮に提供していた点だ。

テレ朝は、女性社員が音声データの一部を週刊新潮に提供したことについて、「報道機関として不適切な行為」として遺憾の意を表明した。記者が取材で得た情報を外部に提供することは通常の報道活動とは大きく異なり、過去には処分を受けたケースも多い。

「女性社員の行動は記者の倫理に反する」と見るのは日本大の福田充教授(危機管理学)。「女性社員は財務次官に『テレビ朝日』という組織を名乗って向き合っており、そこでの出来事を他の媒体に持っていって報道することは信義則に反する。ジャーナリズム全体の信頼を損ないかねない行動だ」と問題視する。

一方、メディアの動向に詳しい国際医療福祉大の川上和久教授(政治心理学)は、「倫理違反」という点については同意見ながら、「女性社員が人権を守るための緊急避難的な行為だったとみなすことができる」と擁護。服部氏も「問題なのは、データを外部に提供したことではなく、テレビ朝日の度量が狭くて自社で報道できなかったことだ」と述べた。

判断ミス「闘うべきだった」

識者が総じて批判するのは、セクハラを訴えた女性社員に対するテレ朝の初期対応の不適切さだ。同社によると、セクハラを報じることを相談された上司は、本人が特定され二次被害の恐れがあるという理由で「報道は難しい」と告げていたという。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は「女性社員は上司の判断に『(セクハラを)かわしてうまくやれ』というニュアンスを受け取ってしまった可能性がある。本来なら女性社員とともに闘うべきだったが、訴えがあった時点でそのような判断ができなかったのは残念だ」と語った。

「記者という職業上、相手の懐に入るためには少々のことは我慢すべきという空気が業界に蔓延(まんえん)していることも推察される」と話すのは、企業の法令順守に詳しい関西大の森岡孝二名誉教授(企業社会論)。「社内調査でセクハラと認定した対応は評価できるが、他社の報道を受けてであり、相手が権力機構だろうと一般人だろうと社員を守るために毅然と抗議することが必要だったのではないか」と分析した。

テレ朝は産経新聞の取材に対し、19日未明の会見以降、「視聴者からさまざまなご意見をいただいた」としたが、件数や内容については明らかにしなかった。

(産経新聞 2018年4月20日)