碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ドラマ「ブラックペアン」への”抗議”をめぐって

2018年05月31日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


業界団体は抗議も
「ブラックペアン」ドラマ的演出の是非

これまで心臓手術用機器「スナイプ」が物語の軸だった「ブラックペアン」(TBS系)だが、新たに内視鏡手術支援ロボット「ダーウイン」が登場した。こうした最新機器を使った手術でトラブルが発生し、患者の命が危うくなった時、主人公の渡海征司郎(二宮和也)が現われ、その腕を振るうのがこのドラマのパターンだ。

また渡海が時々眺める1枚のレントゲン写真がある。そこに映っている手術器具「ペアン」には、師事する佐伯教授(内野聖陽)と渡海の亡くなった父親との因縁と秘密がある。この謎からくる鬱屈を含め、二宮は渡海の人物像を大胆かつ繊細に表現しており大健闘だ。

ところで最近、ドラマの中の治験コーディネーターに関して日本臨床薬理学会から抗議があった。医師を高級レストランで接待する場面や、被験者に渡す高額の負担軽減費などが「実像からかけ離れている」というのだ。

しかし、このドラマは不可能を可能にする手術などダイナミックな展開で楽しませるエンターテインメント作品である。加藤綾子が演じる治験コーディネーターのキャラクターや仕事ぶりに、他の登場人物と同様、ドラマ的な演出や味付けが施されているのは当然だ。

物語全体がドラマというフィクションであり、現実に沿った内容に終始するのであれば、医療ドラマだけでなく、刑事ドラマも弁護士ドラマも成立しなくなる。

(日刊ゲンダイ 2018.05.31)

実習授業「TV制作」

2018年05月30日 | 大学
収録へ向けてのリハーサル




「コンフィデンスマンJP」は、フジ「月9」の新たな挑戦か!?

2018年05月29日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評


フジ「月9」の新たな挑戦

フジテレビの月曜夜9時枠は「月9」と呼ばれる。人気のピークは「東京ラブストーリー」などの恋愛ドラマを量産した90年代だが、その後も恋愛ドラマの代名詞ともいうべきブランド枠として維持されてきた。しかし支持層の中心だった若者の恋愛観の変化や、フジテレビという局そのものに対する逆風もあり、近年は低迷が続いていた。

今期の月9は「コンフィデンスマンJP」。恋愛ドラマではない。コンフィデンスマン、もしくはコンマンとは詐欺師やペテン師の意味で、相手を信用させて詐欺を働くのがコンゲームだ。

有名な「コンゲーム映画」としてはポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの「スティング」(73年)がある。最近ならジョージ・クルーニー主演「オーシャンズ11」シリーズだろうか。このドラマはまさに「コンゲームドラマ」だ。

チームの主要メンバーはボスのダー子(長澤)、人の良さそうな青年詐欺師ボクちゃん(東出昌大)、そして変装名人リチャード(小日向文世)の3人。これまでにターゲットとなったのは裏の顔を持つ公益財団会長(江口洋介)、ホテルチェーンの強欲な経営者(吉瀬美智子)、美術品の真贋を偽って儲ける美術評論家(石黒賢)などだ。

第5話「スーパードクター編」では、山場の手術場面で「ボストンの名医」に化けたダー子が実際に患者の体にメスを入れるのを見て、ボクちゃんが驚愕した。そして多くの視聴者も。つまり相手や仲間だけでなく、視聴者もだまされてしまうのがコンゲームドラマの快感なのだ。

しかしドラマスペシャルのような「単発」ならともかく、「連ドラ」となると制作側は大変だ。なぜなら毎週だと視聴者も徐々に慣れてきて、「今回も我々をだまそうとしてるんでしょ?」と身構えてしまうからだ。

脚本はドラマ「リーガル・ハイ」(フジテレビ系)などを手掛けてきた古沢良太のオリジナル。ハリウッド並みのスケールは無理でも、3人のキャラクターを生かした「だまし技」の連打が腕の見せどころだ。「視聴者に何を、どこまで、どのタイミングで知らせるか」が緻密に計算された、毎週楽しめるコンゲームドラマになっている。

(しんぶん赤旗 2018.05.28)

【気まぐれ写真館】 地下鉄で、謎の動物たちに遭遇!?

2018年05月28日 | 気まぐれ写真館

うるんだ目でこちらを見ているのですが・・・


【気まぐれ写真館】 いつもの千歳「柳ばし」で特製定食

2018年05月27日 | 気まぐれ写真館

自家製ウドのチャンプルー定食
(メニューにはありません、悪しからず)

HTB「イチオシ!モーニング」

2018年05月27日 | テレビ・ラジオ・メディア
2018.05.26















27日のTBSレビューで、「アンナチュラル」について話します!

2018年05月26日 | テレビ・ラジオ・メディア

「TBSレビュー」
2018年5月27日(日) 
あさ5時40分〜6時

アンナチュラル〜新しいサスペンスのあり方

「アンナチュラル」。不自然な死=アンナチュラル・デスをテーマにした異色のドラマだった。一見、非日常とも思える不自然な死というテーマだが、その死因を探っていくと奇妙に日常に繋がってくる。

脚本は「逃げ恥・・」などで知られる野木亜紀子さんによるオリジナルであり、専門性の高い内容を、テンポよく分りやすく展開し、毎回、予想のつかない結末が好評だった。そのため新しいサスペンスドラマとの評価も高かった。

この作品はいかにして生まれたのか。今回の「TBSレビュー」では、このドラマを例に、新しいサスペンスの形とはなにか、またその可能性とはなにか、さらにはこの作品がいまのテレビドラマに何を問いかけたのか考えていく。

キャスター:
秋沢淳子(TBSアナウンサー)

出演者:
碓井広義(上智大学教授)
新井順子(ドリマックス・テレビジョン)


番組webサイトより

HTB北海道テレビ「イチオシ!」

2018年05月26日 | テレビ・ラジオ・メディア
2018.05.25










「卒業写真」の撮影

2018年05月25日 | 大学
毎年、なぜかこの時期に「卒業写真」なのです




【気まぐれ写真館】 街の灯り

2018年05月24日 | 気まぐれ写真館
四ツ谷駅前

雑学バラエティ「チコちゃんに叱られる」(NHK)の痛快

2018年05月23日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


“5歳児”の素朴な疑問
NHK「チコちゃんに叱られる」の痛快

今期も新しいバラエティ番組が何本か登場したが、最もおススメしたいのが金曜夜の「チコちゃんに叱られる」(NHK総合)だ。コンセプトは明快で、子どもが投げかける「素朴な疑問」に大人として答えてみよう、という番組である。

この「素朴な疑問」ってやつが結構難物で、たとえば「空はなぜ青いの?」と聞かれたとき、正確でわかりやすい説明が出来る大人は(私を含め)少ないのではないか。

番組に登場するのは「チコちゃん」という5歳の女の子。ただし生身の人間ではなく、頭の部分はCGで、その下はワンピースの着ぐるみだ。そして自分の問いかけにスタジオの大人たちが答えられないと、目が炎と共に燃え上がり、頭から大量の湯気を噴き出して、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と激怒する。これが痛快なのだ。

先週も「なぜ高齢者のことをシルバーというの?」という素朴な疑問をMCの岡村隆史(47)たちにぶつけ、叱りつけていた。番組は45年前に国鉄(現在のJR)が採用したシルバーシートをめぐる再現ドラマ(主演・鶴見辰吾)まで作ってしまう。

この「チコちゃん」の声、音声変換で演じているのはキム兄こと木村祐一(55)だ。チコちゃんの言動が時々関西のオッサンと化すのは番組名物となっている。超個性的な“地上最強の5歳児”に、週に一度叱られてみるのも悪くない。

(日刊ゲンダイ 2018.05.22)

『コンフィデンスマンJP』は笑って楽しめるコンゲームドラマ

2018年05月21日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


長澤まさみ主演『コンフィデンスマンJP』は、
笑って楽しめるコンゲームドラマ!?


「コンゲームドラマ」に挑んだ、今期の月9

コンフィデンスマン、もしくはコンマン。その意味は詐欺師とかペテン師であり、相手を信用させて詐欺を働くことを指すのが「コンゲーム」です。

「コンゲーム映画」なら、懐かしいところではポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの『スティング』(73年)でしょうか。最近だとジョージ・クルーニー主演の『オーシャンズ11』シリーズなどがありますよね。

現在放送中のフジテレビ月9『コンフィデンスマンJP』は、まさに「コンゲームドラマ」です。チームのメンバーはボスのダー子(長澤まさみ)、人のいい青年詐欺師ボクちゃん(東出昌大)、そして変装名人リチャード(小日向文世)の3人で、随時必要な助っ人が加わります。

これまでにターゲットとなったのは裏の顔を持つ公益財団会長(江口洋介)、ホテルチェーンの強欲経営者(吉瀬美智子)、美術品の真贋を偽って儲けている美術評論家(石黒賢)などなど。

たとえば第4話「映画マニア編」で狙われたのは、食品偽装で利益をあげてきた会社の社長(佐野史郎)で、彼の映画好きを利用した「映画製作詐欺」ともいうべき仕掛けが見ものでした。

そう、コンゲームドラマの醍醐味は、一にも二にも「仕掛け」の面白さにあります。それはだましの方法やテクニックだけでなく、映画『スティング』で本物そっくりの偽の賭博場を造ったりするような物理的投資も含みます。

このドラマでも「美術」には結構な予算を使っているように思えます。何しろ、背景のしつらえが本物らしく見えないと、ドラマ全体が嘘っぽくなります。ただでさえ、嘘をつくのがテーマのドラマですからね。


視聴者に、何を、どこまで知らせるのか!?

一般的にドラマの中で描かれている内容は、大きく次の数種類に分けることができます。

・登場人物も視聴者も知っていること。
・登場人物も視聴者も知らないこと。
・登場人物は知っているけど視聴者は知らないこと。
・登場人物は知らないけど視聴者は知っていること。

もちろん登場人物は一人じゃなかったりするので、登場人物Aが知っていることを登場人物Bは知らないという状況を、視聴者が分かって見ている場合があります。またそんな状況を視聴者も分かっていないケースもあるわけです。

第5話「スーパードクター編」の山場である手術場面で、「ボストンの名医」に化けたダー子(見開く目はドクターXこと大門未知子風)が、実際に患者の体にメスを入れるのを見て、ボクちゃんは驚愕します。そして視聴者も。

仕掛けた本人だからダー子は真相を知っている。でも仲間であるボクちゃんは知らない。視聴者は全体像を知ってるつもりだったのに、まんまとだまされる。いや、だまさなかった視聴者もいたでしょうが(笑)。

つまり相手や仲間がだまされると同時に、見る側(観客・視聴者)もだまされてしまう。それが「コンゲーム映画」や「コンゲームドラマ」の快感でしょう。でも、これって言うのは簡単。作るほうは大変なのです。

ましてや映画やドラマスペシャルのような「単発」ならまだしも、「連ドラ」で毎週やるとなったら一大事。なぜなら、毎週だと視聴者も慣れてくるからです。「きっと今回も我々視聴者をだまそうとしてるんでしょ?」てな具合に身構えますよね。

脚本は、ドラマ『鈴木先生』(テレビ東京系)や『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)、映画『三丁目の夕日』シリーズなどを手掛けてきた名手、古沢良太さんのオリジナルです。

ハリウッド並みのスケールは無理だとしても、3人のキャラクターを生かした「だまし技」の連打が、古沢さんの腕の見せどころ。「視聴者に、何を、どこまで、どのタイミングで知らせるのか」を緻密に計算した、毎週楽しめる「コンゲームドラマ」になっています。

加えて、長澤さんの異様なハイテンションと、吹っ切れたような毎回のコスプレショーも一見の価値あり。後半戦にも期待の長澤さんには、今期ドラマの「怪演大賞」を贈呈したいと思います。

是枝裕和監督「パルムドール」受賞に拍手です!

2018年05月20日 | 映画・ビデオ・映像


是枝裕和監督の「万引き家族」が、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したとのこと。

拍手です!

思えば、是枝さんと初めて会ったのは、テレビマンユニオンの新人採用試験の面接。

30年前のことです。

もう30年かあ、といった感慨はともかく(笑)。

是枝さん、おめでとう!

早く「万引き家族」が見たいものです。


第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された「万引き家族」がパルムドールを受賞した是枝裕和監督が、5月19日(現地時間)の受賞式後、日本の報道陣の前でその喜びを語った。

パルムドールのトロフィーを持って現れた是枝監督は、「授賞式後ずっと持ち続けているので、じつは腕がもうがちがちなんです」と、少しリラックスした様子で笑顔をのぞかせた。そして「ふだんは緊張しないタイプなのですが、さすがに(壇上では)緊張しました。挨拶は喋りながら考えました。一番大きな賞を頂き、あと20年ぐらいは作り続けられる勇気をもらったと思います」とコメント。また今回家族をテーマにした作品で評価されたことについて、「『誰も知らない』のときにふだん社会のなかで見過ごされがちな人々を可視化させようと考えて作りましたが、今回もそれをストレートに出したつもりです。プレミア上映のときのリアクションも良く、海外の記者の取材を受けたときも『タッチング』や『ラブ』という言葉を良く聞いたので、届きたいところに届いたのかなと感じました」と語った。

審査委員長のケイト・ブランシェットも、「ふだんあまり目につかない人々をとりあげた作品が今年は目立った」と語り、そのなかでも是枝作品を「監督のビジョンが感じられる素晴らしい作品」と評価。また審査員のひとりであるドゥニ・ビルヌーブ監督も、「とても深く心を動かされた。深みがあり、演出も秀でていて、輝くものがある」と語った。

(映画.com 2018.05.20)

【気まぐれ写真館】 「ミニオンズ」のボブ

2018年05月20日 | 気まぐれ写真館
『怪盗グルー』シリーズの人気者

書評した本: 後藤広喜 『「少年ジャンプ」 黄金のキセキ』ほか

2018年05月19日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


後藤広喜 『「少年ジャンプ」 黄金のキセキ』
ホーム社 1728円

今年、「週刊少年ジャンプ」(以下「ジャンプ」)は創刊50周年を迎える。元編集長である著者が、新入社員として「ジャンプ」編集部に配属されたのは創刊から2年後の1970年。発行部数はすでに100万部を超えていた。編集長に就任した86年が450万部。退任翌年の94年には653万部の最高記録に達した。

そんな「ジャンプ」の歴史を、どんな漫画家がどのような作品を描いてきたのかという、最も興味深い視点でたどっていくのが本書だ。おかげで回想記を超えた漫画家論、漫画作品論、そして漫画創作技術論になっている。たとえば、創刊当時はギャグ漫画が主流だった「ジャンプ」に革命を起こしたのは本宮ひろ志『男一匹ガキ大将』だ。キーワードは暴力、金力、権力の3つ。著者はアクションシーンの構図や感動シーンの演出などを通じて魅力を解説する。

また鳥山明『DRAGON BALL』の面白さの要因はキャラクターの造形と描写であり、人間関係も物語展開もシンプルであることだと指摘。それは言葉よりも「映像の連続で考える」鳥山の姿勢から来ていた。さらにスポーツ漫画の金字塔、井上雄彦(たけひこ)の『SLAM DUNK』。ワンシーンの細部に宿るキャラクター像が見事だが、それを支えているのは井上の図抜けた画力だという。

本書のもう一つの特色は、漫画家と編集者との関係を明かしていることだ。元々「ジャンプ」は後発だったため、新人の育成に力を入れてきた。著者が初めて担当した新人は『アストロ球団』の中島徳博だ。より読者の意表をつくアイデアを求める若い2人は、二人三脚どころか七転八倒。激した著者は、なんと中島の頭をトレーシングペーパーで殴ってしまう。漫画が最も熱い時代の熱いエピソードだ。

よく知られているように、「友情」「努力」「勝利」はこの少年漫画誌の編集方針だが、漫画家と編集者と読者をつなぐ約束の言葉でもある。


松本大介 
『本屋という「物語」を
 終わらせるわけにはいかない』

筑摩書房 1620円

盛岡の「さわや書店」は伝説の本屋だ。“魔法のPOP”と呼ばれる手書きの推薦文で、文庫本の外山滋比古『思考の整理学』などを売りまくったことで知られている。現役社員である著者が内側から見た「さわや」と本へのこだわりを熱く、しかも淡々と語っていく。


反町 理 『聞きたいことを聞き出す技術』
扶桑社 1512円

著者はBSフジ「プライムニュース」のキャスター。政治家などのゲストから本音を聞き出す技術を開陳したのが本書だ。事前にゴールを把握する。相手に敬意を伝える。質問を前後・左右・上下に振るなど、生放送という一回性の場を逆手にとった戦い方が見えてくる。


(週刊新潮 2018年5月17日菖蒲月増大号)