『日刊ゲンダイ』の連載コラム「テレビとはナンだ!」。
今週の掲載分は、日本テレビとNHKによる、映画「借りぐらしのアリエッティ」のドキュメンタリー対決について書きました。
見出し:
日テレ「アリエッティ」特番はNHKを見習え
コラム本文:
すでに600万人を動員し、興行収入も70億円を超えたという映画「借りぐらしのアリエッティ」。
先週、日本テレビはNEWS ZERO特別版「借りぐらしのアリエッティを支えた職人たち」を放送した。
「密着120日」が売り文句だ。
番組には宮崎駿監督や今回抜擢された米林宏昌監督の他、“職人たち”として作画監督、美術監督、音響監督などが登場した。
彼らは作品をジブリ・ブランドたらしめる原動力だが、取材が中途半端で総花的なのが致命的。
たとえば45人のアニメーターを束ねる作画監督の仕事など、もっと詳しく見せて欲しかった。
また、この番組が「NEWS ZERO」の番外編とはいえ、ジブリの仕事場を見学するだけの鈴江奈々アナや、作曲者に形ばかりの質問をする宮本笑里は不要。
その分の時間を、“背景画の天才”と呼ばれる美術監督や、登場人物の心情を表す音を“手作り”する音響監督の職人技に、1分でも多く回すべきだ。
今月10日、NHKで「ジブリ 創作のヒミツ~宮崎駿と新人監督 葛藤の400日」という秀作ドキュメンタリーが流された。
悩みながら作品と向き合う米林監督。じっと見守る宮崎監督。
密着400日は日テレの120日を大きく上回るが、単に日数の問題ではない。
「何を見せたいか」が明確かどうかで、番組の質は大きく違ってくるのだ。
(日刊ゲンダイ 2010.08.31付)