碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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サカイ引越センターCM「私の引越日記」徹底した私視点

2025年02月04日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

徹底した私視点で描く一作

サカイ引越センター

私の引越日記

「はじまり」篇、「見積り」篇

 

相米慎二監督の映画「お引越し」を観たのは約30年前のことだ。両親の別居に心が揺れる少女を演じてデビューした、田畑智子さんが印象的だった。

サカイ引越センターの新CМシリーズ「私の引越日記」に登場したのは平川結月さんだ。「王様戦隊キングオージャー」(テレビ朝日系)などで活躍してきたが、今回は等身大の女性がよく似合っている。

初めての引越に臨む結月さん。まずはスマホで引越会社を検索し、母親や友人の意見も参考にする。意を決して電話。「初めての私でもなんとかなりそうだ」という安心感がありがたい。

やがて引越アドバイザーが見積りのためにやって来る。結月さんは「まあまあ荷物あるなあ、って思ってるよなあ」と気にするが、誠実に対応するアドバイザーに信頼感が増す。

世の中に同じ引越はない。あるのは個々の人生の物語だ。このCМは徹底した「私」の視点で作られており、小さな不安や喜びも丁寧に織り込んでいる。引越という「決断と実行」の先にある、新たな生活への期待も膨らんでいく。

(日経MJ「CM裏表」2025.02.03)

 


哲学と矜持、CM超えたCMの力「I HОPE.希望の美容液」

2024年12月24日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

哲学と矜持、CM超えたCMの力

カネボウ化粧品 カネボウ

フュージョニング ソリューション

「I HОPE.希望の美容液」

 

今年もまた膨大な数のCМを目にした。たくさんの優れたコンセプト、映像、コピーなどに触れてきた。

そんな中で強烈に気持ちを揺さぶられた1本が、KANEBOの新ブランドCM「I HОPE.希望の美容液」だ。

まず、「唇よ、熱く君を語れ」の合唱をバックに展開される映像の質感と情動感が見る者をとらえて離さない。

強い風にあおられながら、何かを模索するかのように世界を見つめるのはモデルの中島セナさんと俳優の森山未來さん、そして柔道家の阿部詩さんだ。いずれも自立と自律を体現する人たちである。

またナレーションによる「宣言」ともいうべき言葉も魅力的だ。いわく「人間そのものを見つめることで生まれた美容液だからこそ、人を動かす原動力になると信じたい」。

さらに「私たちは、化粧品を売っているのではない。 希望を売っている」と続くのだ。

不安定と不確実性の時代だからこそ、この確固たる哲学と矜持(きょうじ)が多くの人を励ますことにつながる。CMを超えたCMの力だ。

(日経MJ「CM裏表」2024.12.23)

 

 


ナース専科転職CMで、「キョコロヒー」の名コンビ再現

2024年11月26日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

「キョコロヒー」の名コンビ再現

エス・エム・エス ナース専科転職

「仕事終わりの焼肉」篇

 

転職は「当たり前」の時代といわれる。しかし、昔も今も本人にとって大きな決断であることに変わりはない。エス・エム・エス「ナース専科転職」の新CМ「仕事終わりの焼肉」篇は、期待と不安に揺れる転職希望者の背中をユーモアいっぱいに押してくれる。

焼肉屋で向き合っているのは、先輩ナースのヒコロヒーさんと後輩の齊藤京子さんだ。仕事終わりに「行くか?」「行きましょう」。「焼肉」「ですね!」といった、打てば響く会話があった。

食べながら、「早く帰れる職場もいいけど、仕事終わりのご飯がおいしい職場って最高っすね」と齊藤さん。転職して、ナースの仕事がさらに好きになったのだ。そんな後輩に「え、なんて?」と笑顔でとぼける先輩。本当はちゃんと聞こえていたのにね。

2人のやりとりが実に自然で、本物の先輩後輩を思わせる。深夜番組「キョコロヒー」(テレビ朝日系)で培った名コンビぶりを映す。相手の話に耳を傾けながら笑いを作る、ヒコロヒーさんの芸風が存分に生かされている。

(日経MJ「CM裏表」2024.11.25)

 


「クノール カップスープ」CMの河合優実さん

2024年10月30日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

ほら、もう目が離せない

味の素「クノール カップスープ」コーンクリーム

「コーンなうれしい朝にして」篇ほか

 

ドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)で、インパクトのある昭和の女子高生を演じて注目を集めた河合優実さん。その後も映画やドラマで「今年の顔」と言っていい活躍を見せている。

最大の魅力は、演じた人物の背後にある「物語」まで想像させる力だ。どこか謎めいており、見る側は「本当はどんな女性なのか」「心の中で何を思っているのか」と気になって仕方がない。

そんな優実さんが、味の素「クノール カップスープ」のCМに21代目キャラクターとして登場した。

「コーンなうれしい朝にして」篇、「ポタージュなお年ごろ」篇、「ごちそうの方程式」篇の3本が並ぶが、中でも「お年ごろ」篇から目が離せない。

お父さんと向き合ってスープを飲みながら、「子どもじゃないのよ私、もう」という心の声。ポタージュの深みが分かるし、一緒に味わうカレシだって…と、つい言いそうになる。

驚くお父さんを見て、ウソともホントともとれる「罪な微笑」でごまかす優実さん。ほら、もう目が離せない。

(日経MJ「CM裏表」2024.10.28)

 


Canva(キャンバ)のCM 北野作品を思わせる本格映像 

2024年10月04日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

北野作品を思わせる本格映像

「世界随一のオールインワン

ビジュアルコミュニケーション

プラットフォームCanva」

信じられないほど、素晴らしく。和平成立篇

 

まるで本物の時代劇を見るようだ。Canva(キャンバ)のCM「信じられないほど、素晴らしく。和平成立篇」である。

時は戦国、北野武軍と劇団ひとり軍が長い戦いを終らせた。夜の陣営で、北野武将が和平記念に作ったSNS投稿画像をひとり武将に見せる。

その出来栄えの良さに、ひとり武将が「嘘だあ。プロレベルですよ、これ」とからかった。すると突然、ろうそくの火が消え、「本当に俺が作ったんだけどなあ」と不穏な空気が漂う。

さらに「デザイナー雇ったんでしょ?」と言われ、「バカ野郎!」と一喝。ついに刀を手に取る。結局、北野武将が実際にCanvaで画像を作成してみせたことで、ひとり武将も納得。和平関係は保たれた。

このCMの醍醐味は北野監督作品を思わせる本格的な映像作りにある。俳優の演技、照明、美術などに「贅(ぜい)」と「艶(つや)」が満ちているのだ。

「SHOGUN 将軍」のエミー賞最多受賞という快挙が記憶に新しい中、昨年の「首」に続く北野監督のサムライ映画が見たくなった。

(日経MJ「CM裏表」2024.09.30)

 


「一平ちゃん夜店の焼そば」CMの仲野太賀さん

2024年08月27日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

まねしたくなる仲野さんの持論

明星食品 

一平ちゃん夜店の焼そば

「混ぜない男」篇

 

俳優・仲野太賀さんはNHK朝ドラ「虎に翼」でヒロイン(伊藤沙莉さん)の夫を演じた。昼は銀行で働き、夜は大学で学ぶ真面目な青年だった。

そして、「新宿野戦病院」(フジテレビ系)では白いポルシェを乗り回す、チャラ系の美容皮膚科医だ。真逆のキャラクターだが、噴出する〈素のおかしみ〉は共通している。

そんな仲野さんが明星食品「一平ちゃん夜店の焼そば」のCM「混ぜない男」篇に出演中だ。

「からしマヨネーズ」のコクがアップしたと知り、「やばいよ、やばいよ、やばいの俺だけ?」と大ハシャギ。

「一口目は絶対混ぜないのよ。だって辛子マヨ、感じたいっしょ?」と持論が披露されると、見る側もつい真似したくなる。

実は、「新宿野戦病院」に他社のカップ焼きそばが実名で登場する。塚地武雅さん演じる看護師長の大好物という設定だ。

しかし、主演の仲野さんがこのCMで「一平ちゃん」を推したことで、〝焼きそば界隈〟は一気にヒートアップしてきた。猛暑とはいえ、夏バテなどしている場合ではない。

(日経MJ「CM裏表」2024.08.26)

 


ビッグマックCM「あしたも、笑おう。」篇は、最強コンビとのコラボ

2024年07月23日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

最強コンビとのコラボ 拍手

日本マクドナルド ビッグマック

「あしたも、笑おう。」篇

 

このCМが流れると、思わずにっこりしてしまう。日本マクドナルドのビッグマック「あしたも、笑おう。」篇である。

画面には世代や性別も様々な人々の笑顔が映し出されていく。背景も公園、海辺、プール、街の歩道と多彩だ。

楽しそうに、おいしそうにビッグマックを頬張る人たちに混じって、どこかで見たことのある、3人の女性の歩く後ろ姿が目に入ってくる。

しかも流れている曲は「I feel Coke」だ。見る側は喧騒と熱気の1980年代後半へと一気にワープしてしまう。

昨年、ビッグマックと一緒に最もよく飲まれたドリンクがコカ・コーラだったそうだ。

どちらも71年の日本マクドナルド創業時からメニューに並んでおり、半世紀を超える「最強コンビ」と言えるだろう。

とはいえ、他社が過去に放映したCMのイメージを取り込むのは容易なことではない。懐かしい曲まで巧みに復活させた「コラボ力」に拍手だ。何より記憶を呼び覚ます音楽の力に驚いた。

今後のCM界にも少なからぬ影響を与えそうな好企画の1本だ。

(日経MJ「CM裏表」2024.07.22)

 


JTの企業CM「鬼のゆく道」心の豊かさ、探す旅

2024年07月02日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

JT「鬼のゆく道」

心の豊かさ、探す旅

 

どこかの山の中。鬼(山田孝之さん)がおばあさん(大方斐紗子さん)と出会う。JTの企業CM「鬼のゆく道」だ。

おばあさんは、お地蔵様を洗っている。鬼が「おい、ヒト。何してる?」と問うと、「こうすると心が洗われるんだあ」と答えた。

「心?」と聞き返す鬼に、「心の豊かさ、大事」と言いながら饅頭(まんじゅう)をくれた。鬼はそれをひと口で食べ、「なあ、心の豊かさって何だ?」と尋ねる。

しかし、おばあさんは「なんだろうねえ」とほほ笑むばかりだ。ヒトの心が知りたくなった鬼は旅に出る。

民俗学者の小松和彦は著書『鬼と日本人』の中で、「鬼は、なによりもまず怖ろしいものの象徴」だとしている。

また、「鬼は邪悪な存在とみなせるが、人間の側に立って人間に福をもたらすような鬼も存在していた」という。

鬼は畏怖すべき対象であると同時に、人間の魂を反映した「異形の隣人」でもある。

だからこそ、これまでとは違う「心の豊かさ」を見つけ出せるかもしれない。鬼の旅は始まったばかりだ。

(日経MJ「CM裏表」2024.06.24)

 


NTTドコモCMの河合優実さん、変幻自在の演技力

2024年05月29日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

変幻自在の演技力

NTTドコモ  Google Pixel 8a

「かこって検索ってなに?」篇

喫茶ピクセル第1話

 

ドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)は、令和の世界にタイムスリップしてきた「昭和のおじさん」が、コンプライアンス全能の社会に笑いながら疑問符を投げつける痛快作だった。

このドラマで、主人公の娘である「昭和の女子高生」を演じたのが河合優実さんだ。聖子ちゃんカットにロングスカート。令和を体験した不良少女は、猛勉強して第一志望の大学に合格を果たす。

主演の阿部サダヲさんに負けない注目を集めた優実さんが、NTTドコモのWEBムービー「喫茶ピクセル」に出演している。

舞台はグーグルピクセルを愛用する人たちがやってくる喫茶店だ。常連客の優実さんが、動画を見ながら「この赤ちゃんのほっぺ、ぷにっぷに~。触ってみたいなあ~」とつぶやく。

突然、自身の頬を指で押し始めるマスター(はんにゃ・金田哲さん)。「張り合わないでよ」という優実さんの一喝が笑いを誘う。

昭和の女子高生から令和の大人の女性まで。見る者の目を引きつけるのは変幻自在の演技力だ。

(日経MJ「CM裏表」2024.05.27)

 


「ビューカード」CM 名コンビが新生活にエール

2024年04月23日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

名コンビ、新生活にエール

ビューカード

「そこは、ビューカードでしょ。」

第三弾「新生活篇」

 

春は、新入生や新入社員のように、新たな環境に飛び込む人が多い。JR東日本子会社のビューカードによる「ビュー・スイカ」カードの新CM「新生活篇」は、この時期ならではの一本だ。

登場するのは眞島秀和さんと山田杏奈さん。会社の上司と部下という関係だ。

山田さんが新人時代を回想する。不安でいっぱいの自分を元気づけてくれたのはビューカードだ。買い物や定期券購入、オートチャージでもポイントがたまるのは、思わず高笑いしたくなるような快感だった。

そして今、チャージしようと駅に急ぐ新人さんに気づいた山田さんは、「がんばって!」と声をかける。その明るい笑顔が誰をも元気にするのだ。

昨年、ドラマ「ゼイチョー〜『払えない』にはワケがある〜」(日本テレビ系)で、市役所納税課の新人徴税吏員を好演した山田さん。

出張先の地域グルメや地酒を帰りの新幹線車内で堪能する、「居酒屋新幹線」シリーズ(毎日放送・TBS系)の会社員がハマり役の眞島さん。

名コンビが新生活の春に熱いエールを送る。

(日経MJ「CM裏表」2024.04.22)

 


オープンハウスCM 特撮への敬意、タイムリーに 

2024年03月26日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

特撮への敬意、タイムリーに

オープンハウスグループ

「マイホームマン登場」篇

 

山崎貴監督「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」が、第96回アカデミー賞視覚効果賞を受賞した。

視覚効果とは撮影された映像を加工したり、合成したりする技術だ。現実にはない世界や、撮影が困難なシーンを表現するために使われる。山崎監督は脚本や演出だけでなく、視覚効果も自身で手掛けた。受賞はアジア映画初の快挙だ。

オープンハウスグループの新作CM、マイホームマン「登場」篇。戸建ての契約を済ませた堺雅人さんに、「もし、怪獣とか来たら、これで」と謎のバッジが手渡される。

突然、怪獣が出現。驚きながらバッヂのボタンを押すと、堺さんは巨人へと変身する。購入した土地を守るべく、怪獣との戦いが始まった。日本の特撮映画で見慣れた「着ぐるみ」の怪獣と、「ミニチュア」の街並み。スーツ姿の堺さんと怪獣の対比が可笑しい。

今年は円谷英二監督が特撮技術を手掛け世界を驚かせた、初代「ゴジラ」の公開70周年にあたる。令和の現在まで継承される特撮の伝統と革新性。先人たちへの敬意にあふれる、実にタイムリーなCMとなった。

(日経MJ「CM裏表」2024.03.25)

 


新作CM「わたしオン、気持ちいい春」篇の伊藤沙莉さん

2024年02月27日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

新たな日常へ、伊藤さんと切り替え

エスエス製薬 アレジオン20

「わたしオン、気持ちいい春」篇

 

一昨年の特集ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」(NHK)で、文化庁芸術祭テレビドラマ部門「放送個人賞」を受賞した伊藤沙莉さん。

昨年は「シッコウ‼~犬と私と執行官~」(テレビ朝日系)で主演を務めた。シリアスとユーモアのバランスが抜群で、千変万化する表情も含め、画面から一瞬も目が離せない。

そんな伊藤さんの新作CMが、エスエス製薬のアレジオン20「わたしオン、気持ちいい春」篇だ。

花粉の季節、伊藤さんも「外、出たくない」とソファに横たわっている。しかし、「頼むぞ、アレジオン」の掛け声と共にスイッチ・オン! ドアを開けて飛び出せば、そこは花咲く草原だ。

思い切り走った後は、草の上に大の字になって深呼吸する。それは花粉症で悩む人たちが熱望する光景だ。見る側も伊藤さんにならって、新たな日常へと切り替えたくなる。

4月には、伊藤さん主演のNHK朝ドラ「虎に翼」が始まる。日本初の女性弁護士をモデルとした物語が、どんな“気持ちいい春”を運んでくれるのか、楽しみだ。

(日経MJ「CM裏表」2024.02.26)

 


「日常」の幸福を、あらためて思うCM

2024年01月30日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

「日常」の幸福、改めて思う

明治ブルガリアヨーグルト

「笑顔をつなぐ」篇

 

薬師丸ひろ子さんが、映画「野生の証明」でデビューしたのは1978年のことだ。

以来、「セーラー服と機関銃」や「探偵物語」での清冽な印象を保ちながら、大人の表現者として成熟してきた。2013年の朝ドラ「あまちゃん」で演じた、清純派の大女優・鈴鹿ひろ美も忘れられない。

明治ブルガリアヨーグルトの50周年ブランドCM「笑顔をつなぐ篇」。薬師丸さんは、離れた場所で暮らしている娘(原菜乃華さん)を思いやる、やさしいお母さんだ。

母と娘をつなぐのは、「ひと段落すると、いつもこれだった」定番のヨーグルト。機嫌がいい時はスプーンに3杯で、どちらも食べると満足気に「うん!」とうなずいてしまう。この時間が好きなことも2人は共通している。

誰かとつながっていること、今日の営みが明日へと続いていることは、「日常」という名の小さな幸福だ。大きな災害で幕を開けた今年だからこそ、あらためてその大切さを思う。

被災地の方々の「いつもの毎日」が、少しでも早く戻ることをお祈りしたい。

(日経MJ「CM裏表」2024.01.29)

 


「Times CAR」CMの高橋一生さん

2023年12月19日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

真面目と愉快のいいとこどり

パーク24 Times CAR 

「レール&カーシェア」篇

 

知っている人には当たり前のことでも、知らない人にとっては驚きの事実。最新のIT事情に限らず、そういう事態は珍しくない。

Times CARのCM「レール&カーシェア」篇に登場する、営業マンの高橋一生さんも同様だ。

得意先まで1時間。その後3軒回るので、当然のようにクルマを使うつもりでいた。ところが後輩の若手社員は「むしろ電車っすね」と言う。

「電車?」と聞き返す高橋さんに、「と、カーシェアです」ときっぱり。渋滞を回避できる電車と、行った先で何軒も回れるクルマを組み合わせると言うのだ。

しかも「まあ、いいとこどりっすね」と平然としている。「今って、そうなってんの⁉」と高橋さん。強烈な風を受けて、のけぞる表情が実に愉快だ。

言動は真面目なのに、どこかおかしみが漂う人物。そんな役柄に命を吹き込むのが高橋さんだ。

ドラマ「カルテット」のヴィオラ奏者も、映画「シン・ゴジラ」の文部科学省課長もそうだった。

今ごろ、どこかの街で効率的な訪問営業に励んでいるに違いない。

(日経MJ「CM裏表」2023.12.18)

 


大阪王将CM「忘れられない男」篇の香里奈さん

2023年11月24日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

香里奈さん、3年目はいじらいさ披露

大阪王将

ぷるもち水餃子・羽根つき餃子

「忘れられない男」篇

 

香里奈さんが、イートアンドフーズ「大阪王将」ブランドのイメージキャラクターを務めて3年目になる。

これまでに、友人たちとの中華パーティーで小籠包を熱く語ったり、刑事に扮して立てこもり犯に呼びかけたりと、コミカルな演技を披露してきた。

今年はシリーズCM「忘れられない男」篇だ。

前作の「羽根つき餃子」では、男から「餃子焼いたから羽根だけ食べて。餃子は俺が食べる」と言われ、「あんなしょうもない男にフラれるなんて」と洗面台の前で憤っていた。

そして、新作の「ぷるもち水餃子」。香里奈さんは空っぽのバスタブに膝を抱えて座っている。

今度は男から「大阪王将のぷるもち水餃子は日本で売り上げ1位でしょうか?」と当たり前のことをクイズに出されて、がっかり。さらに「あんなしょうもない男が忘れられないなんて」と悔しがる。

確かに、この男は困りものだ。だが、こんな男にフラれて、しかも忘れられない香里奈さんが、すこぶるいじらしい。

“忘れられない味“は餃子だけではないのだ。

(日経MJ「CM裏表」2023.11.20)