碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「思いもしなかった3月」が終わる

2011年03月31日 | 大学

今日、3月31日は2010年度最後の日。

「思いもしなかった3月」になってしまったわけだが、明日、4月1日から2011年度の新学期となる。

今日は在学生向けのガイダンスが行われて、キャンパスも久しぶりで賑わった。

卒業式も入学式も中止のため、どこか“区切り感”が希薄になっているが、一応、今日は“ひと区切り”の日だ。

明日から、学生たちも、それぞれ学年がひとつアップ。

「1年間、おつかれさまでした」と「新年度、よろしくお願いします」が交差する。






今日も構内では震災の募金が行われていた。

毎日、ポケットの中にある分を入れさせてもらっている。

被災地の子どもたちは、どんな気持ちで新学期を迎えようとしているのだろう。

せめて1日でも早く、東北に桜咲く春が来てほしいと思う。



日本テレビを眺めながら

2011年03月31日 | テレビ・ラジオ・メディア

打ち合わせがあって、新橋・汐留へ。

機関車のある駅前広場と反対側は高層ビルが林立している。

かつてそこに何があったのか、もはや思い出せない。


見上げれば、威風堂々の日本テレビ社屋。

28日に、日本テレビの代表取締役会長・氏家斉一郎さんが亡くなったことを思い出した。

ここ数年、雑誌などでの、「テレビの危機」に関する率直な発言が印象に残る。

合掌。


30日夜、日本テレビのドラマ『さよならぼくたちのようちえん』で放送事故。

画面が突然暗くなり、復活したかと思ったら、今度は約8分間、同じ場面が重複して放送されたという。

合掌。


日本テレビを退社した夏目三久アナウンサーが、4月からテレビ朝日の深夜バラエティー番組『マツコ&有吉の怒り新党』にレギュラー出演するそうだ。

捨てる神あれば疲労、いえ、拾う神あり。

今度は、しくじらないでね(笑)。

合掌。



NHK「クロ現」で、ヱヴァ!

2011年03月30日 | テレビ・ラジオ・メディア
(3・11以前のTOKYO)

29日夜、NHK『クローズアップ現代』で、「ヤシマ作戦」が紹介されていた。

おお、クロ現で、ヱヴァ!(笑)

見ていて、なんだか、ちょっと嬉しくなりました。

ヤシマ作戦は、「新世紀ヱヴァンゲリヲン」で実行された作戦名。

日本全体を停電にすることで電力を集め、陽電子砲で攻撃したのだ。

クロ現では、「地震後の節電運動の中で、ネット上をこのヤシマ作戦の文字が飛び交った」と紹介されていた。

「ヱヴァ」での、列島一斉停電&陽電子砲発射シーンの一部も、堂々のオンエア。

同じ29日夜、フジテレビ『教えてMr.ニュース池上彰のそうなんだニッポン』では、池上さんが、東日本と西日本で電力の相互支援ができないことを解説していた。

そう、ヘルツ、周波数の違いってやつだ。

実際はその通りで、だから東電は中電(中部電力)や関電(関西電力)などから電力を回してもらうことは出来ないわけで。

でも、気持ち的には、やっぱ、「ヤシマ作戦」じゃないですか(笑)。


ACは過去の優れた公共CMも流したらどうだろう

2011年03月29日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分では、ACジャパンの「公共キャンペーンCM」について書きました。



ACは過去の優良なCMの名作集も流したら
どうか


ACジャパンが、新しいキャンペーンCM、それも今回の大震災に対応した新作を流し始めた。

SMAPの5人がカメラに向かって語り掛けるものや、サッカーの岡崎慎司選手、長友佑都選手が登場するものなどだ。

通常のCM制作が何カ月もかかる中で、よくぞこの短期間で放送まで漕ぎつけたものだと思う。

3月期のCM枠は地震前、すでに各スポンサー企業に売られていた。

しかし、企業側も3月11日以降は通常CMを流すわけにいかず、自粛の形をとった。

それを埋めるのがACジャパンの「公共広告」だ。

ところが地震発生以来、使われる公共CMが限定されていた。

しかも各局で同時かつ大量に流されたため、視聴者から「どうにかならないか」の声が上がっていたし、今もある。

どんなにいい内容であっても、あまりに同じものを繰り返し見せられると、見る側はうるさく感じたり、反発さえ覚えたりする。

映像とはそういうものだ。

その意味で新作は大歓迎だが、時間がたてば同じことになっていく。

そこで提案だが、ACには過去数十年にわたって制作してきた数多くの優れた公共CMがある。

これらの中から現状にマッチしたものを選び、一種の「名作集」として新作と併せて流してみたらどうだろう。

原発の動向によっては通常CMの完全復活まで、まだ時間がかかるかもしれないからだ。

(日刊ゲンダイ 2011.03.28)

大切な人たちと一緒に戦う『ザ・ファイター』

2011年03月28日 | 映画・ビデオ・映像

26日から公開が始まった『ザ・ファイター』を観てきた。

実在のボクサー、ミッキー・ウオード。その実話映画だ。

「貧しい大家族に生まれたミッキー(マーク・ウォールバーグ)は、天才的な元ボクサーで麻薬中毒の兄、ディッキー(クリスチャン・ベール)や、マネジャーを務める母(メリッサ・レオ)と世界王者を目指す」という内容。

ミッキー役のマーク・ウォールバーグは、私の好きな俳優のひとり。

昨年ホノルルで観た『ジ・アザーガイズ』(日本未公開?)以来だが、あのコメディ調と同じ役者とは思えない。

本物のボクサーに見えるほどの、徹底した役作りだ。

また、先日のアカデミー賞では、クリスチャン・ベールが最優秀助演男優賞を、メリッサ・レオが最優秀助演女優賞を獲得した。

確かに、マーク・ウォールバーグを含め、3人とも見事な演技だ。

ボクシング映画だと、『ロッキー』や『レイジング・ブル』や『ミリオンダラー・ベイビー』が思い浮かぶが、そのどれとも違う。

“家族愛”とか“兄弟愛”というものが主軸だ。

それにミッキーの恋人(実話としては後に結婚)であるシャーリーンも大きな存在。

彼を支えることで自分自身も“再生”していく。そんな彼女を演じたエイミー・アダムスも良かった。

自分を大切に思ってくれている人たちがいる。

自分もその人たちを大切にする。

当たり前のことみたいだが、困難の中でどこまでそれが出来るか。

「決してあきらめず、一緒に夢を実現する」という物語。

それこそ、いつか被災地の人たちに見てもらいたい、と思ってしまいました。



千歳市の「柳ばし」で

2011年03月27日 | 日々雑感

札幌から戻ってきました。

JRで新千歳空港に向かう際、例によって千歳駅で途中下車。

「お食事処 柳ばし」に寄る。

柳ばしのことは、このブログにも頻出するのですが・・・

以前私は千歳科学技術大学の教員をしていて、6年間の単身赴任生活を送りました。

その間、ほとんど毎晩、夕食を食べていたのが、この「柳ばし」。

当時、息子さん2人が在学生だったことがご縁でお店にうかがい、以来ずっとお世話になりました。



お父さんこと増子仁さんと、お母さんこと悦子さんのご夫妻。そして元気な地元女子高生アルバイトさんが、元祖オープンキッチン(笑)の中できびきびと仕事をしています。

名物は絶品のメンチカツ。

それから、私が名付け親(笑)の「サルサDEチーズササミ」。これも美味い。

東京の大学に移った後も、北海道に行った時は、よく顔を出します。

あらためてご紹介しておきますね。

場所:北海道千歳市東雲町5丁目46(千歳警察署の近くです)
電話:0123-22-5951

本日、私がいただいたのは、サクラマスのフライ。


季節の魚が、お父さんによって“サクサクほっくり”に。

ごちそうさまです。

ちなみに、写真にも写っている「ご飯茶わん」は、千歳時代に、お母さんがプレゼントしてくださったもの。

側面にドラえもん(内側にはどら焼き)のイラストが入った“MYお茶碗”です。

私が毎晩お店に行っていた頃から、ずっと使わせていただいているお気に入りで、今もボトルキープならぬ、茶わんキープ(笑)。

今日もまた、暖簾をくぐってお店を出る時、お母さんが「いってらっしゃい!」と声をかけてくれました。

今週の「読んで書いた本」 2011.03.27

2011年03月27日 | 書評した本たち

福島原発、まだまだ厳しいですね。

これが何とかならないうちは、世の中全体が「さあ、復興へ向かおう!」という気分にならないわけで。

とはいえ、出来ることをしていくしかないので、個人的には可能な範囲で節電したり、コンビニなどのカウンターでは必ず募金箱に入れたりしています。


さて、今週、「読んで(書評を)書いた」のは、以下の7冊です。

福田和代 
『迎撃せよ』 角川書店

鹿島 茂 
『渋沢栄一』1・2 文藝春秋

筒井康隆 
『漂流~本から本へ』 朝日新聞出版 

高野秀行 
『世にも奇妙なマラソン大会』 本の雑誌社

テリー伊藤 
『テリー伊藤のテレビ馬鹿一代』 毎日新聞社

日経ビジネス:編 
『ソーシャル・ネット経済圏』 日経BP社

玄侑宗久 
『四季の公案』 佼成出版社



・・・・鹿島茂さんの『渋沢栄一』全2巻は、「名前を知ってはいたが、なるほどこういう人だったのか」という、納得の人物評伝。

筒井さんの『漂流~本から本へ』では、あらためて“本のチカラ”“活字のチカラ”を思う。


* 上記7冊の書評は、発売中の『週刊新潮』最新号(3月31日号)に
  掲載されています。


札幌で、「トークDE北海道」「イチオシ!」の生出演

2011年03月26日 | テレビ・ラジオ・メディア

札幌に来ている。

25日(金)午前中、UHB「のりゆきのトークDE北海道」。



テーマは、「5・7・5」の俳句や川柳による被災地への応援メッセージだった。

来週から番組がリニューアルとなり、現在のレポーターの皆さんは今日がラスト。



長年、のりさんのパートナーを務めてきた水野悠希アナウンサーも、新たに始まる夕方のワイド番組「U型テレビ」へと異動するのだ。

スタジオに、たくさんの「おつかれさまでした!」の声が響く。


寂しくなるけど、水野さん、新番組でも頑張ってください。


午後はHTB「イチオシ!」。

やはり全体的に震災関連企画が並ぶ。

ニュースコーナーの中で、震災報道についてコメント。

募金の使われ方、送れる&送れない支援物資の種類などを紹介していた。


夜は、二人の彫刻家を追ったドキュメンタリー映画に関す会議。

終了後、コアメンバーで打ち合わせを兼ねて夕食。初めてのイタリア・ビール、美味。

給料日の金曜のせいか、札幌の繁華街は賑やかでした。




卒業、おめでとう!

2011年03月25日 | 大学

23日は大学の卒業式だった。

いや、卒業式のはずだった。

今回の震災の影響で中止になったのだ。




それでも、学生に直接、学位記(卒業証書)を手渡す学科別集会は開かれた。

ひとりひとり、名前を呼ばれて、仲間たちの拍手の中で卒業証書を受け取った。





また、その後の謝恩会も行われた。

卒業生たちによる手作りのイベントだ。




我が家にも大学4年の娘がいるが、やはり卒業式は中止。

こちらは「学位記」を手渡す会も、謝恩会もなく、卒業生たちは各自、大学事務室で卒業証書を受け取るのだという。

ちょっと寂しい。

もちろん、まだ余震が続き、計画停電も続く中では、仕方ないかもしれない。

卒業式に地方からたくさんの父母が東京にやってきて、式の最中に何かあったらいけない、という配慮もわかる。

卒業式など所詮形式ではないか、という意見もあるだろう。

しかし、卒業生本人たちにしてみれば、学生から社会人へという大きな区切り、ひとつの旅立ちであり、それを祝福してあげられないのは残念でした。

3・11以前と以後、という区分けができそうなほど、社会のあらゆる面での価値観の変化や転換が起きているように思う。

彼らは、「3・11」を経験した最初の卒業生だ。最初の社会人だ。

そこから生まれるものも、きっとあるのではないか。

いや、そんな何かを生み出していってもらいたいと思う。

そのためには、これまでの常識や既成概念にとらわれず、自分のアタマで考えること。

池上彰さんに聞いてばかりじゃいけません(笑)。

そして、ぜひ、お父さんやお母さんに、心からの「ありがとう」を。

・・・・といった話を、謝恩会の挨拶で、させてもらいました。



卒業、おめでとう!




『朝日新聞』で、震災報道についてコメント

2011年03月24日 | メディアでのコメント・論評

23日の『朝日新聞』夕刊。

特集記事「テレビ 被災者の声重視」で、震災報道についてコメントしています。


テレビ 被災者の声重視


大津波被害の惨状、原子力発電所の緊迫、不自由な生活をおくる多くの避難者たち――。テレビは連日、東日本大震災を伝えている。阪神大震災報道の教訓は生かされたのか。多チャンネル化、ネット時代を迎えたテレビの災害報道の役割とは。(岡田匠、田玉恵美)

◆ありのままを伝える

20日正午のNHKニュース。東京電力福島第一原発の状況などの最新情報を報じる一方で、中継を結んだ宮城県南三陸町の避難所から佐藤仁町長が直接、支援を訴えた。

ほかに総合テレビでは、被災者が現状を伝える「テレビ伝言板」をはじめ、阪神大震災で避難所生活をした人たちの体験談も多く伝えている。こうした情報は地震発生3~4日後から目立ってきた。

地震発生当初はNHK、民放各局とも、津波が田んぼや住宅をのみ込む空撮映像や、視聴者が間近で撮影した津波の映像を放送。未曽有の大災害の恐ろしさを伝えた。

だが次第に衝撃的な映像は減らし、「被災者の生の声に重点を置く方針」(NHK)へとシフトしている。民放も同様の傾向だ。

背景には阪神大震災の教訓がある。倒壊した高速道路やビルの映像を繰り返し流し、効果音をつける演出もあった。被災者が求める情報が少ないといった批判が出た。

阪神大震災の被災者でもある小川博司・関西大教授(メディア文化論)は「東京で編集した映像が多く、ドラマ仕立てで刺激的だった。だが今回は東京も被災地の意識があるためか、ありのままを伝えている」と見ている。

被災者の声を拾うといっても、ガソリンを使って大勢で動き、現地で調達しないようにと食料を持ち込む取材への視線は厳しい。ある民放幹部は「被災者のストレスが高まっており、報道陣への嫌悪感が表出している」と明かす。

一方、テレビ報道について朝日新聞に寄せられたメールやはがきには、「山積みの物資を映して『被災地に届かない』と報じるだけでなく、その原因を追及して」といった注文も少なくない。

碓井広義・上智大教授(メディア論)は「そもそも、テレビは大ざっぱになってしまうメディア」と分析する。

「被災者に向けられたカメラが伝える悲嘆の声は、被災地から離れた視聴者の興味は引くが、実は被災者たちが本当に欲しい情報ではない。誰に向けて、何を伝えるのか。そこを考えるべきだ」


◆BSは独自色乏しく

地上波とBSの役割分担も課題だ。民放のBSデジタル各局は地震直後から60時間以上、系列の地上波やCSの震災特番を放送した。BS朝日は、震度6弱以上の地震の際はテレビ朝日の特番に同調することにしている。他局にはこうした内規はないが、「報道の使命として独自に判断した」(BS日テレ)という。

関西大の小川教授は「地上波と同じではなく、BSは局ごとに使い分けては」と提案する。例えば、被災者の癒やしになる音楽や、避難所で必要な情報に特化させる――。

だがBS各局は社員60~70人ほどで、BS―TBS以外は報道部門もない。「独自の災害報道をやれと言われても現状ではマンパワーが足りない」(BS朝日)。「どのタイミングで、どんな番組を流せばいいのか判断が難しい」(BSフジ)という声もあがる。

民放BSが開局し10年。有事の際の地上波との役割分担について、「各局がBSの理念を確立させてこなかった。せっかくの多チャンネルを有効に使っていない」と上智大の碓井教授はいう。

BS―TBSは、「平常時に地上波とどう差別化するかで精いっぱいだった。今回の震災報道を機に、災害時の役割を考えていきたい」。

一方、NHKは地震直後、地上波とBSの計5波で一斉に震災を報じたが、14日以降はBSハイビジョンを通常編成に戻し、教育とBS2は安否情報や子ども番組を流すなど、「複数波を生かした編成を意識している」という。

国内に住む外国人や観光客に向け、副音声を使った多言語放送も実施。英語、中国語、韓国語、ポルトガル語の4カ国語で注意を呼びかける音声を1分間ずつ、津波警報が解除されるまで、総合とBS3波で放送した。

◆ネット配信 海外でも視聴

停電などでテレビが見られない被災者に向け、各局はインターネットの「ユーストリーム」や「ニコニコ動画」などに番組を配信した。テレビとネットの連動で、被災地の惨状が海外へも伝わった。

NHKは11日夜から総合、教育、ラジオ第1の放送を配信した。フジとテレ朝は14日まで、TBSは18日まで配信した。ただ日テレは「動画が通信を圧迫し、かえって被災地の通信事情を悪くする恐れがある」として配信しなかった。

民放はCMに配慮した。TBSは、スカパーに有料で流しているCMがないニュース番組を配信。テレ朝はCMが再開する約6時間前に配信をやめた。フジは「権利の問題も出てくるので、CMの再開に合わせてやめた」と言う。

黒田勇・関西大教授(放送論)は「放送をネットに流した判断は評価できる」とした上で、「その逆が怖い。ネットで騒ぎになった情報をそのまま放送した局もあり、余計な混乱を招く」と話す。

一方、災害時に役立つと言われたワンセグ。携帯電話の通話ができなくても、電波さえ届けばどこでも見られるはずだが、黒田教授は「充電できない被災地では携帯の電池が続かず、動き回ると電波が届かない。結局、ワンセグが役に立っていない現状が浮き彫りになった」と指摘する。

(朝日新聞夕刊 2011.03.23)


『スタジオジブリ物語』からのメッセージ

2011年03月22日 | テレビ・ラジオ・メディア

仕事の合間にふと目にして、ついそのまま最後まで見てしまった。

21日夜、2時間以上に及ぶドキュメンタリー『スタジオジブリ物語』(日本テレビ)である。

いやあ、見ごたえがありました。

単なるメイキング番組や映画宣伝などとは、まったく別次元(笑)。

ジブリというか、宮崎駿監督の軌跡(作品)とその思想を解読する、
いわば「テレビによる映画批評・評論」だ。

これで途中にACの公共広告(最近いろんな意味で話題ですが)が挿入されていなければ、まんま「NHKスペシャル」と思ったかもしれない(笑)。

途中、ドキュメンタリー『「もののけ姫」はこうして生まれた。』(DVD3枚、399分)の映像がふんだんに出てきた。

それで分かったのだが、やはり「構成・演出」は浦谷年良さん。制作はテレビマンユニオン。



宮崎駿監督が作品に込めてきたメッセージ(特に自然と人間の共生)を、ヘンに具体的だったり、押しつけがましい形だったりせずに「被災地の皆さんへのメッセージ」へと昇華させていた点も見事でした。

ACの公共広告はともかく(笑)、徐々に“通常放送”が戻りつつある中で、「戻ってみたら、また馬鹿騒ぎの横並び」といわれない1本だったのではないか、と思います。



言葉の備忘録47 浦沢直樹『MONSTER』

2011年03月21日 | 言葉の備忘録

浦沢直樹さんの『MONSTER モンスター』を、第1巻から読み直している。

その第10巻。

刑事のスークがグリマーに問いかける。

「僕にはもう・・・わからない。
 何を信じればいいのいか・・・」

グリマーが答える。

「信じられるのは、自分だけだ! 
 最後に信じられるのは、あんた自身だ」


また別のシーン。

グリマーがテンマに向かって投げる言葉が今回、“備忘録入り”です。



誰だって、いろんな罪を背負ってる。
その罪は消えない。
でも、やらなきゃいけないことがある。
――浦沢直樹『MONSTER』

『週刊ポスト』で震災報道の失言・放送事故についてコメント

2011年03月20日 | メディアでのコメント・論評

連休のため、いつもより早めに発売された『週刊ポスト』(4月1日号)は、震災に関する総力特集だ。

この中のテレビ報道に関する記事で、コメントをしています。


想定外/「面白い」「笑えてきた」震災中継さ中の失言・放送事故

台本のない生放送には不測の事態がつきものである。とはいえ被災者の神経を逆なでする「失言」はいただけない。

矢のような批判を受けたのは、14日の「スッキリ!!」(日本テレビ系)で、気仙沼市から中継した大竹真レポーター(39)。

カメラとマイクが自分に切り替わっていることに気がつかず、津波で変わり果てた市街地をバックに、「ほんっと~に面白いね~」と話しながらニタニタ笑っている様子が映し出されたのだ。

「大竹さん!大竹さん!」スタジオの司会者・加藤浩次(41)が血相を変えて叫ぶ。

ようやくカメラが回っていることに気づいた大竹は、何事もなかったかのように、レポートを始めたが。時すでに遅し。

「面白い」という言葉が、被災地の惨状のことを指していたのかどうかはわからない。しかし、ネット上では「不謹慎きわまりない」「絶対に許せない」「宮城から出ていけ!」という主旨の避難が相次いだ。

フジテレビもやらかしている。

12日夜の菅首相の会見中、「ふざけんなよ、また原発の話なんだろ、どうせ」という男性の声や「アハハ、笑えてきた~」といった女性の声が漏れ聞こえてきたのである。

スタジオでのスタッフの会話と思われる。

それらの発言がどういった脈絡で発せられたものなのかはわからないが、正確な情報を得ようと画面を食い入るように見つめていた視聴者からしてみれば、「バカにしているのか!」と文句の一つもいいたくなる(フジテレビは「音声については外部からの混線の可能性も含めて現在調査中」との回答)。

上智大学新聞学科教授(メディア論)の碓井広義氏が指摘する。

「NHKが取材力を活かして被災者のための情報を流しているのと比較すると、民放はどうしても“被災地以外の人々”に向けての報道という印象がぬぐえない。

それはややもすると、傍観者的でもあり、興味本位と受け取られかねないということです。

災害報道の本質は、面白ければそれでよいという視聴率競争とは全く意味合いが違う。

特殊な状況で、取材の現場が疲労困ばいなのは理解できるが、だからこそ失言や放送事故には細心の注意を払うべきです」


ちなみに、大竹レポーターは失言の翌日以降、テレビ画面から消えている。

(週刊ポスト 2011.04.01号)


・・・・ちなみに、この記事の隣には、『安藤優子「白ヘルメット」と「高級コート」の現場中継』と題する一文も。

ベテラン・キャスターである安藤さんが、阪神淡路大震災におけるテレビ取材陣への批判を忘れているとは思えない。

いや、それ以前に、テレビが“印象のメディア”であることなど百も承知のはずなのだが。

やはり“1000年に一度”の出来事が、安藤さんをもってしても、「久々の現場で興奮」「やり過ぎ」(記事の文言)といった状態にしてしまったのだろうか。



『週刊新潮』で、“震災とテレビ”についてコメント

2011年03月19日 | メディアでのコメント・論評

発売中の『週刊新潮』最新号で、“震災とテレビ”についてコメントしています。


7月「地デジ」移行で「震災情報」を見られない
世帯


これほどテレビというものの存在を有り難く感じたことがあったろうか。

「被災地の様子が一目瞭然ですし、離れていてもこちらへの影響も想像できる。原発の爆発も、政府発表を聞くだけと映像で見るのとでは
違います」とは上智大学の碓井広義教授(メディア論)だ。

「ただ気になったのは、避難所で被災者の方たちが見ているテレビはアナログが多かったこと」(同)

今年7月24日をもってテレビは地上デジタル放送に完全移行、つまりこれまでのアナログ波は終了する。

しかし東北地方に限らず公民館や学校といった公共施設に、地デジ化していないところは多いのではないか。


総務省が発表した地デジ普及率(昨年12月時点)は、94.9%! 公共施設どころか、仲間内にだって、もっと“未”デジ化は多いはず。

放送に詳しいジャーナリストの坂本衛氏は、「デタラメな調査です。デジタル化していない人は調査に非協力的で、デジタル化した世帯ばかりが協力すれば、普及率は高くなる。しかも、80歳以上を調査対象から外しているのです」

全国5000万世帯の内、80歳以上の単身世帯は約150万、夫婦が80歳以上の世帯は約100万にも上る。

「高齢者250万世帯を無視して、普及率もあったものではない。さらに今回の地震で東北3県はデジタル化どころではなくなりました。被災者にとっては横型テレビや綺麗な映像など必要なく、ライフライン情報こそが重要なのです」(同)

善後策は簡単だ。

「アナログ亭波の延期です。少なくとも東北3県は延期せねばならない。デジタル対応が遅れている地域は現行のサイマル放送(デジタル・アナログ双波での放送)を対応できるまで続ければいいだけです」(同)

7月には台風シーズンもやって来るのだから・・・・。

(週刊新潮 2011.03.24号)


大震災から一週間

2011年03月18日 | テレビ・ラジオ・メディア

3月11日(金)の東北関東大震災から、ちょうど一週間。

地震が発生した午後2時46分には、私も黙とうした。

今日も現地では原発への放水が行われている。

自衛隊員も命がけの作業であり、ぜひ効果があらわれて欲しいと思う。

作業の様子は、30キロ離れたところから撮影しているというNHKの映像で見た。

30キロといえば、以前、八王子にある東京工科大までクルマ通勤をしていた時の片道分だ。結構遠い。

それでもホースから吹き出される水や、それに反応した水蒸気もちゃんと見えた。

すごいぞ、NHKの撮影技術。


今回の事故は、放射能という“見えない恐怖”が相手であり、これまでとはレベルが違うこともあって不安も大きい。

愛読している池田信夫さんのブログに、今日、以下のような解説があった。


原発の危険は核爆発ではなく、放射能汚染である。この点では、原子炉よりも使用ずみ核燃料の問題のほうが深刻だ。

プールに保存されている核廃棄物は約200トンで、原子炉内の核物質より多く、その主要な成分であるプルトニウムの毒性は核燃料のウランよりはるかに高いからだ。

さらにサイト内には6400本の使用ずみ核燃料が貯蔵されており、この冷却がうまく行かなくなると危険である。

使用ずみ核燃料で事故が起きた場合にどうなるかも想定されており、これは再処理工場の事故に近い。

核廃棄物が過熱して火災が起こると、それによって放射性物質が拡散され、サイトの周辺が放射能で汚染される。

今のところ使用ずみ核燃料プールの温度は100℃以下と推定されているので、それほど心配はないが、ここで核廃棄物が集まって再臨界を起こすと暴走して、大量の死の灰が炎に乗って立ち昇るおそれがある。

しかし以上のような最悪の事態が発生しても、人体に影響が出るのは原発から半径100km以内だろう。200km以上離れた東京にも放射性物質は飛んでくるが、人体に影響を及ぼすほどの量が飛来することは考えられない。

政府の避難計画はレベル7も想定して立てられており、現状はレベル5である。「外人は逃げた」とか「政府は隠している」という疑心暗鬼があるようだが、被害想定ではレベル7事故が起こっても東京には避難勧告は出ない。

警戒は必要だが、過度に心配することはない。

(池田信夫blog 2011.03.18)



また、同じく池田さんのブログで紹介されているのが、「おなかがいたくなった原発くん」という傑作アニメだ。



「福島第一原発の事故は、ウンチ(核廃棄物)がおなかにたまって、オナラ(水蒸気)が出ている状態だ」という秀逸な「譬え」で、この事故を、子どもにもわかるように解き明かしている。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51689181.html


もちろん複雑なことをシンプルに説明しているので、「そんなもんじゃないよ」と言う人や、「ユーモアまじりに語るな」とか思う人がいるかもしれませんが、一度このアニメをご覧になってみるのも悪くないと思います。