◇朝日新聞8月14日
改憲論の有力な論拠に「アメリカから押しつけられたから」というものがあります。アメリカのことは別にして、日本側の「戦争放棄」提案が明らかになりました。朝日新聞8月14日から転載します。
◇日本側の白鳥元駐イタリア大使、憲法に「戦争放棄」条項を進言
日本国憲法制定前の1946年1月、後にA級戦犯として終身禁固刑を受けた白鳥敏夫・元駐イタリア大使=服役中に病死=が、9条の原型となる戦争放棄や軍備撤廃を新憲法の条項に盛り込むべきだとする提案をまとめた書簡を、当時の吉田茂外相を通じて幣原喜重郎首相に送っていた。
ドキュメンタリー番組製作者・鈴木昭典さん(76)が憲法制定に関わった関係者の証言テープや極東軍事裁判の記録を調査し、一連の経過をまとめた。9条の基になる考えが日米どちらから出たのかについては議論が分かれているが、非軍事国家を目指すことを憲法に明記する構想が、日本側にあったことになる。
◇白鳥書簡-国民を外戦に赴かしめず、国家資源を軍事目的に充当せざるべき
鈴木さんが国立国会図書館憲政資料室にある約800冊に上る「極東国際軍事裁判記録」を調べ、書簡を見つけた。書簡は1945年12月10日付。原文は英文で書かれており、戦犯の指名を受けて入所した巣鴨拘置所から吉田外相あてに出された。末尾には、検閲のため1946年1月20日ごろまでマッカーサー司令部に留め置かれたことが付記されている。
それによると、「将来この国民をして、再び外戦に赴かしめずとの天皇の厳たる確約、如何なる事態、如何なる政府の下においても、(略)国民は兵役に服することを拒むの権利、および国家資源の如何なる部分をも軍事の目的に充当せざるべきことなどの条項は、新日本根本法典の礎石」になると位置づけ「憲法史上全く新機軸を打ち出すもの」とした。
そのうえで、「天皇に関する条章と不戦条項とを密接不可分に結びつけ(略)憲法のこの部分をして(略)将来とも修正不能ならしむることに依りてのみこの国民に恒久平和を保証し得べき」と延べ、戦争放棄の条項を天皇制条項と結びつけることで、天皇制を守ることもできると強調した。
◇白鳥書簡-幣原首相に渡る
極東軍事裁判で白鳥元地脚の弁護をした広田洋二氏が1947年12月に作成した吉田茂の陳述書によると、「私は白鳥氏の要請を容れ当時首相にも写を一部手交しました」とある。
戦争放棄を新憲法に盛り込む発想は1945年1月24日のマッカーサー・幣原会談で出たとされる。幣原が言い出したとされるが論争があり、決着はついていない。
1月20日ごろに検閲が解除され、吉田外相を通じてマッカーサーとの会談前の幣原喜重郎首相に届けられた可能性が高い。
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