けい先生のつぼにくる話

はりきゅう漢方の先生が教えてくれる健康に関する話
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不妊症に使う、温経湯(うんけいとう)ができました!

2007-08-01 05:03:17 | 婦人科系疾患
昨日は温経湯(うんけいとう)の粉剤をつくりました:
既製品の顆粒やタブレットや丸薬のバージョンもあるのですが、当診療院では米国FDAの基準をクリアーした単品12種類の漢方薬剤を漢方書籍の記載にのっとって調剤したものです。こちらの患者さんはお忙しい方が多いので、土瓶でぐつぐつと調理するのではなく、粉剤としてお湯に溶いて飲んでいただくか、どうしてもあの味がだめという方にはカプセル詰にしてお出ししています。

この温経湯(うんけいとう)は不妊症の漢方薬として知られています。よって月経不順、下血、冷え性、冷え性でのぼせる、無排卵、帯下、手掌角化症、潰瘍性大腸炎、流産後などにも用いられます。
西洋医学的な病名を並べるとこのような疾患名の羅列となりますが、東洋的に観ると、肝虚陽虚寒証といって、足の厥陰肝経という経絡と東洋的に観た肝の気や血が虚していて、冷えの症状が見られる場合ならこれ以外の多くの病名にも適応します。
ご質問があれば、いつでも歓迎いたします。

素人さんの誤解:
ずいぶん前になりますが、不妊症の方にこの温経湯(うんけいとう)を処方して、苦情を言われてことがありました。
「温経湯(うんけいとう)には牡丹皮(ぼたんぴ)という薬剤が入っている、これは体が冷えて流産する危険があるというので、ほかの漢方薬に変えて欲しい」とおっしゃるのです。この方の体質を含めた症状が、上記の肝虚陽虚寒証なので温経湯が一番適当なのですよとご説明したのですが、「だめだ」の一点張りです。 これは一時日本でも問題になった件です。結果はもちろん「安全無比」です。

この方はインターネットで漢方薬のことを大変勉強をされている方でしたので、お電話を受けながら私もインターネットでこの方の情報源を探ってみるに、やはり日本の「医者」の素人判断でした。日本では漢方薬を扱えるのは薬剤師か医師ということになっているので、多くの関係者は大学時代から西洋医学の知識からの漢方薬を分析するようになってしまっているのです。そうすると東洋医学全体の観点から鍼灸と漢方の技術を学んだ者とは大きな隔りができてしまいます。

合せ飲みの妙味:
この漢方的素人医師の言っていることは料理にたとえると、「カレーライスを作るのに、塩は体に毒だから全部抜いて作れ」といっているのと同じです。確かに塩だけをなめたら体にはよくない、しかしそうなるとこれはまともなカレーライスではなくなってしまいます。
ここに西洋の分析医学の弊害が出ているわけです。

漢方薬は単品(1種類)だけで服用することはまずありません。必ず複数の薬剤を使って「合せ飲みの妙味」を作り出すのです。
これだと1プラス1イコール2プラスアルファーの効果が出るのです。

2種類以上の生薬をまぜて服用したときに起こる現象は、ただ単にそれぞれの生薬によって起こる作用を加え合わせたということでは、説明の付かないことが多い。折るときはその作用が、ただ単に加え合わせてと考えられる以上に強くなり(相乗作用という)、あるときは弱くなり(相殺作用という)、またあるときは、全く別の作用を示す(方向転換という)。例えば、麻黄(まおう)を例にとって見ると、麻黄単独の作用は発汗剤で、皮膚の排泄機能障害を治すものである。ところがこの麻黄に桂枝(けいし)を加えると発汗剤(相加作用)となり、石膏(せっこう)を加えると止汗剤(方向転換)となる。さらに麻黄に桂枝と石膏の3種を混ぜ合わせると、麻黄と桂枝の作用である発汗作用が助長される。(相乗作用) また、麻黄に朮(じゅつ)を加えると利尿剤(方向転換)となり、麻黄に杏仁(きょうにん)を加えると鎮咳剤(方向転換)となる。
このように、加えられる相手によってその作用が変って行くのである。(この段は、「漢方薬の実際知識」東洋経済社より抜粋)

合せ飲むことによって限りなく夢が広がるのです。

日本伝統鍼灸漢方

コメント (2)
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