霞ヶ浦の漁師を親戚に持つ友人から、自慢げな話を聞かされたことがある。
「川海老漁をすると、脱皮したての海老が僅かに混じる。柔らかいのが混じっていると市場に出せないので丁寧に取り除くのだが、これがめっぽう旨い。市場に出されることがないので、幻の川海老とも呼ばれている」
話を聞いて食べたくなり、何度かねだってはみたが未だに貰えていない。
さて、川海老ではなく伊勢海老の話。
脱皮したての「幻の伊勢海老」を販売する業者を見つけた。
海中の伊勢海老は岩陰などに隠れて脱皮するから、それを捕獲するのは事実上不可能だが、この業者は伊勢海老を生け簀で飼って、脱皮したのを見つけたらすぐに取り上げて冷凍保存している。
業者の名前は「幻屋」。商売の存続を考えれば心配になる社名だが、繁盛しているようである。
それを取り寄せてみた。
冷凍の真空パック姿の、小ぶりなのがニ尾。
取り出して触ってみると、なるほど、気持ちが悪いほどに柔らかい。
本来なら硬い甲羅も、鋭いヒゲやトゲも、フニャフニャである。
刺し身でも食べられるのだが、ぶつ切りにして、
唐揚げに。
カリッとした食感にするため2度揚げをした。
外殻が柔らかいので、丸々全部が食べられて、捨てるところが無い。
噛みごたえが良くて、甘くて、驚くほど旨かった。
柔らかな外殻と一緒にほおばれるから美味しいのだと思う。
何を食べても見た目きれいな写真をアップして「メチャクチャ美味しかった」と書くブロガーが多いが、ボクはそういう人種ではない。
これは本当に美味しいぞ。
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