早期発見即手術ではない前立腺ガン

ガンは誰でも発症し得る疾患ですが、現在では不治の病ではありません。適切な治療によりガンの60～70％は根治に至ります。

前立腺ガンは早期発見されても手術などの積極的治療を行わずに「監視療法」という経過観察が選択されることがあります。他のガンと同様に命にかかわる疾患なのですが、前立腺ガンはその増殖速度が遅く、しばらく放置しても問題がないことがあるからです。

国立がん研究センターの報告によると、高齢化による影響を除外した年齢調整罹患率では、男性の主要部位の多くのガンは横ばいか漸減傾向にありますが、前立腺ガンのみ急増しています。

一方年齢調整死亡率を見ると、前立腺ガンは漸減傾向にあり、「5年生存率」を見ると前立腺ガンは上昇傾向が顕著で、生存率が100％に迫る勢いです。

前立腺ガンも他のガンと同様にじっと寝ていて治る病気ではありません。治療しなければ徐々に進行して転移し、痛みや苦しみにさいなまれることになりかねません。前立腺ガンは、手術症例に限ると10年相対生存率は集計上100％になっています。

つまり手術をすれば確実に治るといえますが、それでも前立腺ガンと診断されてもあえて放置する監視療法が選択されています。

前立腺が機能しなくなっても命に別状はありませんが、その果たす役割は排尿や性機能など大切な生理機能に深く関わるものです。前立腺の役割は、排尿・射精の調節です。尿と精液はどちらも尿道を通って排出されますが、同時に出ることはなく、前立腺の周囲や内部の筋肉によって排尿と射精を巧みにコントロールしています。

その他精液の生成や男性としての象徴の役割を持っています。前立腺の手術後には、排尿障害（尿漏れ）や性機能障害（勃起不全）が必ず発症し、手術によってＱＯＬ（生活の質）の低下は避けられません。

前立腺ガンは進行が遅く、生存率が高く、手術に伴う犠牲や負担が大きいため、「すぐに治療を始めない」という選択肢が出てくるわけです。

手術以外にも放射線療法、内分泌療法、化学療法があり、ガン細胞の悪性度や腫瘍マーカーであるＰＳＡの値などからリスク分類を参考にして決めていくわけです。ガンが前立腺内に留まっていて、リスク分類でも低リスクと判断された場合には、監視療法を選択することができます。

監視療法は前立腺ガンの動向をしっかりと監視して、ＰＳＡ値が上昇したり腫瘍の増大が認められたら、手術などの積極的治療に進むか改めて検討する方法です。

私の友人にも何人か前立腺ガンの手術をしていますが、やはり後遺症に悩まされているようです。こういったことを考えると、私は毎年ＰＳＡ値の測定をしていますが、あまり気にすることのない疾患のような気もしています。