ごっとさんのブログ

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膵臓ガン治療は進歩しているか

2019-01-27 10:32:39 | 健康・医療
ガンの「標準療法」とは、科学的根拠に基づき専門家の間で最善であると合意を得られている治療法で、最も多くの患者を救えると考えられています。

しかし膵臓ガンは、かなり進行してから見つかることが多いため、標準治療でも生存期間を延ばすことが難しくなっています。そのためある程度の科学的根拠が認められる治療法については、臨床研究(治療法などの有効性や安全性をヒトで確かめ検討する)として、病院の裁量で行っている治療法が多くあるようです。

横浜市立大学医学部付属病院では、術前補助療法として、抗ガン剤と放射線を組み合わせた治療を行っています。

術前に放射線をやった方がいいかどうかという結論は出ていないのですが、放射線を当てるとガンが放射線で死ぬときに、ガン抗原(免疫反応を引き起こす物質)のような因子を出すという研究があり、それを期待して行っています。

つまり放射線によって出たガン抗原とリンパ球が出会って戦うべき相手だと覚えると、全身に広がった目に見えないガン細胞をやっつけてくれるのではないか、という仮説が考えられています。

横浜市立大学附属病院では、手術前に2か月抗ガン剤治療を行った後に、放射線を2週間(週5日)照射するという治療法を行っています。ほかの病院では、抗ガン剤と放射線を同時に数週間行うという方法を採用しているところもあります。

こういった膵臓ガンの臨床試験は数多く、実施病院も少なくないようです。こういった術前に抗ガン剤と放射線を行い、手術が思うようにできれば、ガンが進行して血管に浸潤した切除可能境界の人でも30%のヒトの命が助かり、最初の診断で切除不能だった人でも20%が切除可能になります。

こういった切除可能になる人の割合が少ないような気もしますが、末期の膵臓ガンではやむを得ないのかもしれません。

化学療法、抗ガン剤も近年かなり進化し、数種類の抗ガン剤を使う多剤併用が主流となっています。2013年に保険認可された「フォルフィリノックス療法」は、3種類の抗ガン剤に増強剤(効果を高める製剤)を投与する方法です。

その他、ジェムサール(一般名ゲムシタビン)は、副作用が比較的少ないので高齢者や体力のない人に向いているし、TS-1は飲み薬なので、毎回通院する必要はないなど、患者の事情に合わせて選べるようになってきています。

なおノーベル賞で話題のオプジーボや免疫療法は、研究が進められていますが、まだ膵臓ガンに対する効果は認められていません。このように難治性の膵臓ガンについてもいろいろ臨床試験が行われていますが、まだまだ難しい課題も残っているようです。