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コロナ変異株の立体構造を解析

2021-05-10 10:29:13 | 化学
現在大阪東京などは緊急事態宣言が発令されていますが、新規感染者数は増加または高止まりが続いています。

この原因を感染力が強い変異株の出現としていますが、国民がコロナ慣れまたは宣言慣れしたためと考えています。

この感染力が強い変異株の「N501Y」について、ヒトの細胞の表面にある受容体タンパク質に結合する部分の立体構造を解明したとカナダのブリティッシュコロンビア大学の研究チームが発表しました。

変異前に比べて結合しやすくなる化学的性質が確認されましたが、感染を防ぐ抗体の働きには大きな影響がないとみられることが分かりました。

変異のパターンは他にもありますが、立体構造の解明はワクチンの有効性を判断したり、治療薬を開発したりするのに役立つと期待されています。

新型コロナウイルスは突起状のスパイクタンパク質が、ヒトの細胞の表面にある受容体タンパク質「ACE2」に結合して侵入感染するとされています。変異株の「N501Y」はスパイクタンパク質を構成するアミノ酸のうち、501番目のアスパラギン(N)がチロシン(Y)に置き換わったものです。

日本で急拡大中の英国型の他、南アフリカ型やブラジル型の変異株にも含まれます。研究チームは、N501Yの変異があるスパイクタンパク質を人のACE2に結合させたうえで、凍結して解像度を高める「クライオ電子顕微鏡法」で観察しました。

その結果N501YのチロシンがACE2側のアミノ酸のチロシンとリジンの間に入り込んで結合することが分かりました。チロシンにはベンゼン環があり、ベンゼン環同士が引き合って変異前(アスパラギン)より結合する力が強まっていました。

一般にタンパク質同士は疎水結合という静電作用で引き合いますが、芳香環(ベンゼン環)の相互作用はこれよりも強いとされています。

少し前まではこういった結合タンパク質の立体構造を解析するためには、結晶化しX線回析が必要でしたが、「クライオ電子顕微鏡法」ははるかに簡単な操作で解析できるようになったようです。

感染やワクチン接種により生じる中和抗体のうち、2種類についてN501Y変異があるスパイクタンパク質に取り付く様子を観察したところ、変異前に比べて1種類は変わらず、もう1種類は少し影響を受ける程度でした。

このようにタンパク質の立体構造を解析することによって、なぜ感染力が上がったのかの裏付けを取ることはできますが、これを感染防止に役立てることは難しいと思われます。

それでも次々に現われるであろう変異株のこういった化学的特徴が分かれば、より有効なワクチンへの展開が可能となるのかもしれません。


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