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統合失調症の新薬候補を発見

2021-05-09 10:25:56 | 
考えや気持ちがまとまらなくなるといわれている統合失調症の症状を改善する可能性がある物質を、東京大学や理化学研究所などのチームが発見したと発表しました。

この物質を含む薬剤はすでに遺伝性疾患であるホモシスチン尿症の治療に使用されています。統合失調症に対するこの薬剤の治療の有効性や安全性を調べる臨床研究を始めました。

統合失調症は、幻覚や妄想といった精神病症状や意欲・自発性の低下などの機能低下、認知機能低下などを主症状とする精神疾患です。主に思春期から青年期にかけて発症し、男女比はおおむね1:1とされていますが、男性の方が重症化しやすいことが指摘されています。

世界中のさまざまな地域で100人に1人ほどが発症すると考えられており、私が思っているよりもはるかに多い病気で、日本でもやはり1%ぐらいが発症するといわれています。

今回発見した候補物質は、植物や海産物に多く含まれているベタインという化合物です。過去の研究から患者のベタインの血中濃度は健康な人に比べ低いことが知られていましたが、統合失調症との関連はよくわかりませんでした。

やや専門的になりますが、ベタインというのは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷を持つ原子には解離できる水素が結合しておらず、分子全体としては電荷をもたない化合物の総称です。

元来はその代表であるトリメチルグリシンを指しましたが、現在はこれを含めて類似構造を持つアミノ酸のアミノ基に3個のメチル基が付加した化合物の総称となっています。

さて研究チームは、仲間との接触を敬遠するなど統合失調症に特徴的な症状を持つマウスを作製し、神経細胞の特徴を詳細に調べました。

その結果、神経細胞の形成に関与しているタンパク質「CRMP2」の運び役であるKIF3の働きが低下し、神経細胞の構造が変化していたほか、CRMP2はベタインと反応しやすいことを突きとめました。

そこで統合失調症マウスにベタインを与えると、通常のマウスと同じように仲間と接触するようになり、神経細胞構造もほぼ正常に戻りました。また亡くなった統合失調症患者の脳を調べると健常な人に比べてKIF3の働きも低下していました。

研究チームは、発症の原因や治療は他にもあると考えられるが、詳細な発症過程が見えた意義は大きいと話しています。

この研究結果からベタインが有力な治療薬となるかどうかは、今後の治験結果を待たないといけませんが、新たな治療薬候補が見つかったということは興味ある知見と言えます。特にベタインは通常摂取している自然食材に含まれていますので、安全性は問題なさそうな気がします。


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