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成人T細胞白血病に新薬

2020-06-15 10:27:46 | 
血液のガンである「成人T細胞白血病(ATL)」の進行を抑える抗ガン剤として利用が期待される新薬を、佐賀大学などの研究グループが開発しました。

病気が悪化するのに伴って遺伝子に「さび」が蓄積するような状態になることを発見し、薬でさび取りをする効果を動物実験で確認しました。副作用を抑える安全な飲み薬を目指しており、2021年前半期に臨床試験を開始する方針を示しています。

ATLは白血球の一種のT細胞がHTLV-1ウイルスに感染することで起き、感染者の2〜5%が発症します。国内の感染者は80〜110万人とされ、うち40万〜50万人が九州・沖縄に集中しています。

佐賀大学医学部などがATLの新しい治療法や予防法の研究を進めています。研究グループは、ATLの進行とともにDNAに「メチル基」という分子がくっつく「メチル化」が進み、蓄積される状態になることを解明しました。

メチル基が離れる「脱メチル化」の既存薬はありますが、連日の注射が必要になって患者の負担が大きいため、経口投与が可能な新薬の開発を進めました。

DNAのメチル化は、ほとんどが核酸塩基のシトシン部分で生じ、遺伝子発現を抑制します。特にCGという配列が集中して存在する領域の70%程度のシトシンがメチル化されるとされています。

遺伝子プロモーター領域では、最初はメチル化されていないことが多いのですが、発生や分化に伴ってメチル化を受け、遺伝子発現が抑制されます。ガン細胞では、がん抑制遺伝子の発現がこの領域の異常なメチル化によって抑制されています。

このメチル化を阻害する薬は、主に抗体を使っているため、経口投与ができず注射での投与が必要となっています。今回開発した薬剤の詳しいメカニズムなどは分かっていませんが、抗体というタンパク質を使わずに阻害する点で画期的なものと言えます。

マウスを用いた動物実験ではメチル化を阻害して腫瘍の増殖を抑えるなど、既存薬と同等の効果や副作用が弱いことを確認しました。現在は患者に投与する臨床試験の準備を進めています。

研究グループは、これまで治療の薬は副作用が強くて長期投与も難しかったが、新薬を通じて早い段階から長く、安全に使えることが期待できるとしています。

また特にガンを抑制する遺伝子のメチル化の「さび」を取ることで、再びガンを抑え込もうとしてくれるだろう、将来的には発症する前の予防を目指したいと述べています。

こういった体内で起きる特殊な酵素反応を阻害するというのが、現在の医薬開発の基本になっていますが、今回の薬剤もガン細胞と正常細胞の区別がどの程度できているのかが問題かもしれません。


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