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「詩人の恋」というタイトルの美しいバラードが収録されている。
僕は最初、このタイトルを目にしたとき、
シューマンがハイネの詩に曲をつけた連作歌曲を思い浮かべた。
けれど、実際に聴いてみると、
ジョン・レノンの「Grow Old with Me」が脳裏をかすめた。
ジョンの「Grow Old with Me」は、ふたりの未来について歌われている。
それに比べて「詩人の恋」は、曲調はどことなく似ているものの、遙かに切ない。
もしかしたら「詩人の恋」は、失った、
あるいは亡くなった恋人へのラヴソングなんじゃないだろうか?
だからか?「私たちはずっと供にいる」というラインが切なく胸に突き刺さる。
佐野さんは、以前、実体験を生のまま曲に反映させることはしないと語っていた。
ソングライティングの衝動は社会や身の回りに起こった事象が動機になるが、
リリックの内容はあくまでもフィクションだと強調していた。
けれど「詩人の恋」は、数少ない例外のひとつのような気がしてならない。
私事だが、僕は20代のころに恋人を病気で亡くした。
このバラードを聴く度に彼女のことが切なく胸をよぎる。
この楽曲の、佐野さんの、もの悲しくもどこか意志の力にあふれたヴォーカル。
この歌声に心が激しくシェイクさせられるのは、
そうとでも理屈づけないととても説明がつかない。
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