二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

二胡は日本に定着したのだろうか?

2013-01-09 09:31:31 | ■工房便り 総合 
先日ほぉさんが以下のような文章を書いていました。

かなりきつい発言でもあり、また皆さん口に出しては言わないですが、なんとなく分かっていることではあるかもしれません。

いわずもがなとも思いますが、これからわたしが書こうとしている「二胡は日本に定着したのだろうか」という文章の突破口にもなるかとも思い、この文章を載せますが、私が言いたいのはこの文章のようにマイナス面だけを取り上げるという事ではありませんので、こういうことも有るのかと、今までに楽器でのトラブルにご縁の無かった方にも知っておいて欲しいというくらいな気持ちです。

以下ほぉ記

昨年の話ですが、とても残念な出来事がありました。
前回『二胡界の哀しい現状』を書くきっかけにもなった出来事の、後日談です。

ある、光舜堂で皮を張り替えたばかりのお客様が、同じ先生に習うお友達をご紹介くださいました。
そのお友達の二胡は、楽器として全く鳴っていませんでした。
先生から買ったという その全く鳴らない二胡は、お値段を伺うと結構な金額でしたが、
その使ってある材の価格からしたら耳を疑う安さでした。
「なんでこんな良い材がこの値段?」
理由はすぐわかりました。

趣味としての習い事の二胡、
そのお客様達のお住まいの近くの先生は、おそらく楽器の専門知識は全く無く、
元々教えることにも専門では無い人でした。
そして、楽器販売のやり取りが、どういういきさつか、
どういう教室のシステムかはわかりません。
その先生が生徒に売る楽器でいつも暴利を貪っているのか、たまたまなのかも、わかりません。

ですが、その楽器は、本当に酷い物でした。

まず、胴が割れていました。
音を出せばすぐわかる割れから来る雑音、、、その先生は割れていることに気付いたはずです。
だからこそ、その材の二胡には通常考えられない金額まで安くしたのでしょう。
とは言え、こんな酷い不良品に付けるにはありえない、高額過ぎる価格です。

持ち主さんが可哀想なので、その楽器がどれほど悪い物かは直接伝えませんでしたが、
その時店主は、あまりの状態の酷さに、売りつけた人間への怒りがこみ上げていました。
お預りして修理、という話になった時、
その楽器は、もはや皮の所まで割れが入っていましたので張替えるしか術はありませんでした。

そしていざ修理。
工房へ持ち帰った楽器を解体して、店主は更に唖然とします。

これは、もはや楽器ではない物。

蛇皮が張ってある筒が有って、棹が刺さって、糸巻きが2つ付いた物に弦が張ってあります。
遠目で見る外見上は、皆さんが持っている物と全く同じです。
でも、皆さんのお使いの楽器は、内側が様々なカーブを描き、
高音が鳴る仕組み、低音が響く仕組み、、、と、楽器としての様々な構造に作られています。
楽器ですから。

しかし、今この作業台の上にある物は、ただの板の張り合わせでした。

「こんなクズみたいな物にあんな高い値段をつけて売るなんて、とんでもない野郎だ!!」

それでも、ものつくりの性として、楽器製作者のプライドとして、また、二胡医の愛情として、
他人の作であろうと、形つくられた“物”を投げ出しはしませんでした。
むしろ、高額で買わされた持ち主さんを気の毒がって、
なんとかしてこの物体を楽器に変えよう、と、依頼された修理内容以上に手をかけて内部を削り、
きちんとした楽器としての音がするように作り変えました。
もちろん、その分の御代など頂く気も無く。

と、ここまでが前回のブログまでの話。
今回の話は ここからです。

約1ヶ月の入院を経て、いよいよお約束のお渡し日が1週間を切ったある日、
持ち主さんから1通のメールが入りました。

「ある事情が出来たので修理を中止して欲しい」  と。

お渡し日まであと数日、という時に中止と言われても、他のご依頼の場合でも修理は完了しているのが常です。
何事かと急ぎ連絡を取ると、

その方を紹介した、皮を張り替えた方の音が高くなってしまったと生徒間で噂になり、
それを聞いて不安になった依頼主さんが先生に相談をしたら、
「そんな、やたらな所で皮なんて張替えるものではない」と言われたのだそう。

「。。。」


すみません、その方には申し訳ありませんが、店主は激怒しております。

あんな、いいかげんな物を高額で売っておきながら、偉そうに「やたらな所」と言う人間に。
すぐ皮が緩む粗悪な二胡を生徒に高額で売りつけ、
粗悪品の音色しか知らず、良い音色とはどういうものかわからない生徒を作り出している指導者に。

そもそも、張替えた皮が音が高くなるなんてありえず、です。
皮は、新しく換えれば、きちんと弾き込んで時間が経たなければ、張りたては硬い音になります。
「かたいおと」が、噂のうちに「たかいおと」と聞き間違えたのかもしれませんが、
ありえない話です。
楽器屋と依頼者は信頼関係があってこそですから、
依頼者の方が光舜堂ではなく先生側を信じていたことにもショックを受けた店主。
このお客様は始めのうちは信頼して下さったのだとは思いますが、
グループの生徒さん間の噂に不安になってしまわれたのでしょう。
しかし店主は、
「こんなことがあるようでは、
紹介でいらしても、依頼者ご本人が信頼して預けて下さっていないならトラブルの元。
ウチが信頼出来ないなら、先生でも、他の楽器屋さんでも、自分自身が信頼する場所へ行くべきだ!」
と、すっかり脱力した様子。

結局、その時のご依頼者の方とはご来店時にじっくりお話しし、ご納得いただけたのですが、
そんな事がありましたので、
今後の修理依頼は、今までのようには、なんでもかんでもお引き受けはしないことにしました。
信頼いただけていないな、とお話しした時に感じた方には、
たとえ直せるものでも「直せません」と、お引き取りいただくことが増えると思います。
今までは、どんな物でも誠意をもって心を込めて直してきましたが、
誠意も好意も伝わらず後味悪い結果になった事例はこれまでにも数度ありました。
でも、ご紹介での依頼ケースはむげにもお断り出来なかったのです。
ですが、ご好意でお友達にも私共にも良かれ、とご紹介下さった、
光舜堂を信頼して下さっている方にまでご迷惑をかけ嫌な気持ちにさせてしまうなら、
受付の段階で判断するしかトラブルを防ぐ方法はありません。
なにしろ中国製ですから、粗悪品はまだまだ出てくるでしょう。
こうして二胡屋をしていても、100%健全な中国製の楽器にはほとんどお目にかかれません。

でも、もう、今年からは、信頼関係の無いところからのトラブルは防ぎます。
光舜堂を信頼し、ご愛顧下さるお客様の方が大事ですから、
その方達まで嫌な思いをさせるわけにはいきません!

ただ、
皆様方が信頼し、指導を受けている先生の中には、、、
暴利を貪る人間が二胡界には少なくなく存在することも、ひとつ覚えておいて欲しい現状です。

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4 Comments

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私は常に光舜堂を信頼しています (Kピー)
2013-01-09 12:37:23
久々にコメントします。私は、先生がなんと言おうと光舜堂への信頼はぶれません。
返信する
Kぴーさん (nishino)
2013-01-09 13:06:05
ただただ、ありがとうございます。

かなり強烈な文章だとは思います。

ましてやほぉさんが、ひたすらみんなと仲良くしていこうと自分の心まで痛めてしまいやすいほぉさんが、このような強い思いを持っていたのかと思うと、考えることが多いのです。

私自身は、ひたすらちゃんとした二胡の知識を皆さんに何があっても伝え続けようとは考えていますが、このような事があると、私なんかでも多少はは挫けることがあるのですよ。

Kピーさんのようにこうやってコメントしていただけるのは
わたしにもほぉさんにも大変ありがたいことです。

ありがとうございます。
返信する
友人に聞いてみたことがあります。 (杜若 凛)
2013-01-09 17:26:21
(1時間程前に投稿に失敗しているので、被ってしまっていたらごめんなさい)

前に、中学校で少し触れたというコメントをしてから、友人に「二胡って知ってる?」と聞いてみました。
「何それ、二胡ってナニ?」というような答えがほとんどでしたね。
まあ仕方のないことだとは思っています。
最近の子で自分たちで音楽をやるとしたら、大抵邦ロックあるいはブラスバンドかピアノなどの習い事に落ち着いていますから。
なので、私のちっぽけな世界での二胡認知度はほぼゼロに等しいでしょう。


近くに教室があっても、多分私はずっと二胡難民だと思います。(学業やお金等、理由はいろいろありますが……)
そんな時に、生でアドバイスをしてくださるのは光舜堂さんだけです。
というより、頼るところがないのです。
私は光舜堂さんを信じています。
もし、私がお力になれることがあったら、何でも手伝います♪
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凛さん (nishino)
2013-01-10 09:13:43
春になったらですね。

早く春が来ないかな、というのが、爺の楽しみです。

二胡はまだまだマイナーですよ、誰か大スターが出てこないとダメでしょうね。

凛さん、狙いましょう。大スター。
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