棹がきれいに曲がっていますね。
(これ、正常でしたら、棹はこのように浮いて見えずに、本当は下にピッタリと沿ってつくはずなのです)
以前から言っていますように、紫檀系、特に小葉紫檀あるいはインド紫檀と言われるものは、
材の質によってはかなり柔らかく、
二胡の棹に仕立てた場合、木軸を緩めずにおくと、
曲がります。
二胡の棹が曲がるということは、きちんとしたコンデションで弾けないことになります。
棹の曲がりが進行すれば、その二胡は楽器として機能しなくなります。
ですから、使わない時に木軸を少し緩め、弦の張力を緩める事が大事なのです。
また、木軸を緩めずにおくと、駒のところだけ皮がへこんでしまったりもします。
特にこの梅雨の時期、皮は冬場の乾燥機に比べて、水分を含みます。
すると皮は伸びます。
その時に木軸を緩めずにおくと駒のところに弦の荷重がずーと、かかりっぱなしになりますので
より 皮は伸びやすくなります。
それを防ぐために皮の保護棒なども発売されています。
これを弦と胴の間に挟めば、もう安心、と考えている方も多いのです。
確かに、皮の保護棒は、駒が皮にかける過重の負担を軽減はするでしょう。
しかし、弦を引っ張る力は今度はもろに棹にかかり、結果、上の画像のような棹の曲がりとなって現れる場合もあります。
もちろん保護棒なしでも、樹種によっては竿は曲がるくらいな荷重を受けています。
中国ではこうなるともう、新しい楽器に買い替えるのだそうです。
現実、楽器の買い替えを勧められた数名の方からの相談ももありました。
<書籍『二胡の救急箱』81pより>
しかし、曲がった木は元に戻せます。
戻した後、丁寧に、演奏後に木軸を緩める癖をつけると、
比較的曲がりにくくなります。
また曲がってきても直すことはでき、直し方によっては、そして木の質によっては、あまり曲がらなくもなります。
しかしそれなりに費用は掛かりますね。
ちなみに曲がりやすい樹種を書いておきますと、
インド紫檀、小葉紫檀、血紫檀 あるいは血檀、薔薇檀と呼ばれるものが多いです。
これらの樹種すべてが曲がるわけではありません。比較的、木の周辺部の部材は曲がりやすく木の芯に近いところは曲がりにくいです。
また曲がりにくい木もあります。
カリマンタンエボニーやインドネシアの黒檀、
紫檀では、チンチャン。ホンジュラスローズウド、ブラジリアンローズウッド、アフリカ紫檀(パーロッサ)などです。
しかし、これらは見分けがつきにくいですね。
この文章を読んだ、楽器屋さんは、内の二胡の棹は木の芯のところを使っているから、質もよいし高いのだというかもしれません。
木軸を演奏後に緩める癖をつけさえしたら、これらの木でも問題は出にくいです。
木軸を緩めるといっても、ほんの1音くらいですかね。(4分の1回転くらい)
いずれにせよ、皆さんは演奏始める前に調弦のために木軸をまわします。
皮の保護棒をさしこんであって、木軸も緩めなかったとしても、
次の演奏時には必ず調弦はしなければならなくなります。
昨日の演奏のまま置いておいたとして、もあくる日には必ず調弦はしなければなりません。
ということは毎回木軸を動かすのです。
それなら演奏後多少木軸を緩めるくらい、大きな問題ではないでしょう。
ところが、その木軸がきっちり作られているものが少ないおかげで、木軸を回すのを嫌がる方も多いです。
いくら楽器屋さんへ行って調整してもらっても、木軸の削り直しまでやってくれるところはほとんど無いようです。
木軸の削り直しは二胡の調整で必須なのです。
その必須がなされていないで販売されている楽器も本当に多いのです。
木軸が回りやすくなりさえすれば、皮の負担もなくなり、棹も曲がらずに済むのではないでしょうか。