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近未来日本2050年(連載第8回)

2015-06-27 | 〆近未来日本黒書

二 国防治安国家体制Ⅰ(続き)

集団的安全保障体制
 2015年現在は国論を二分する重大問題となっている集団的安保法制であるが、2050年になると、こうした集団的安保は国是として確立されているだろう。すなわち、防衛軍は「永遠の同盟」である日米同盟に基づき、日米共同防衛の要として機能している。
 この点で、戦前の帝国主義時代との相違がある。戦前の軍国ファッショ体制は軍部を中心に単独行動主義的に大陸侵略を推進したが、議会制ファシズムの時代には侵略より防衛が基軸である。その意味でも、前回述べた「敵からの防御」という理念がより強く出てくる。
 ここで、第二次大戦以来表向きは反ファシズムを掲げる米国が日本の議会制ファシズム体制と同盟を続けるかという疑問も浮かぶが、米国は忠実な同盟国の政治体制には基本的に干渉しない傾向を持つので、日本の議会制ファシズムも民主的な最低基準を満たす選挙によって成立している限り、黙認するだろう。
 ところで、2015年時点での安保法制は、まだ憲法9条の枠内という論理でつじつまを合わせていたため、言葉だけとはいえ、要件や方法に制約が付けられていたが、2050年の集団的安保体制にあっては、すでに9条も削除されており、憲法そのものに集団的安保の原則規定が存在しているため、すべての制約が取り払われている。
 そのため、日本の安全保障に直接影響しない事態に対しても、日米同盟に基づき、防衛軍を派遣でき、なおかつ戦闘参加も合憲的である。実際、防衛軍部隊は米軍とともに紛争地域での戦闘にも参加しており、戦死者も出しているだろう。
 これに対し、政府は戦死者を「愛国殉職者」として顕彰し、靖国神社へ合祀する愛国者法を制定して、反戦ムードの高まりを抑えている。なお、その法的位置づけに議論のあった靖国神社は愛国者法に基づき、内閣府の外郭団体として定着している。

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