第5章 民衆会議代議員の地位
(4)特別代議員
前回まで見た民衆会議代議員とは、民衆会議で審議・討議・議決を行なう中心的なメンバーである一般代議員を指していたが、民衆会議には別途、特別代議員が存在する。特別代議員とは、民衆会議にあって司法権を行使する代議員である。
民衆会議は総合的施政機関として、司法機能も保持するため、司法業務に従事する特別な代議員を擁するのである。民衆会議の司法機能は多岐に及ぶが、そのうち民衆会議が直担するのは憲章解釈と一般法令の解釈という広い意味での法解釈である。
前者の憲章解釈は、憲章を有する領域圏及び領域圏内の各圏域民衆会議で憲章問題を所管する憲章委員会が専有する権限である。そのため、憲章委員会の委員は一般代議員と憲章解釈を専門とする法律家から成る判事委員に分かれるが、後者の判事委員が特別代議員となる。
一方、一般法令解釈は領域圏及び領域圏内の各圏域民衆会議に設置される法理委員会が専有する権限である。法理委員会はまさに法令解釈だけに専従する専門的な常任委員会であるため、その委員は全員が法曹資格を有する判事委員たる特別代議員で占められる。
これらの特別代議員は、一般代議員とは異なり、抽選ではなく、公式の法曹団体が作成した推薦名簿の中から所属すべき民衆会議によって選任される。そのようなまさに特別な地位にある関係上、権限の点でも、一般代議員とは大きく異なる。
特別代議員は民衆会議における議決権は持たない。ただし、本会議に参加し、意見を述べることはできる。ことに、憲章委員会の特別代議員が憲章改正問題に関する委員会審議で意見を述べる権利は重視されなければならない。
また、特別代議員は司法機能を担う特殊性から、任務遂行に当たっては独立性を保障されなければならず、その罷免に関しては弾劾法廷の罷免判決を民衆会議が承認して初めて罷免の効力を発するという形で一般代議員よりも厚い身分保障がなされる。
なお、民衆会議の司法機能を担う公務員としては、他に衡平委員や真実委員、護民監等があるが、これらの者は民衆会議によって任命される特別公務員ではあっても、代議員ではないから、民衆会議の審議に参加する権利を持たない。