前回は、偶然に中学生のころに好きだった女性を見かけて
その頃読んだ小説を読み返したということを書いた
その後、ひと月ほど経ってとんでもないことがあった
たまたま社内の用事で総務部というところに呼び出された
印鑑を持ってこいというので、他人に頼むこともできずに
自らあまり行ったことのないフロアに出向いたときのこと
入口にはいると名乗ってもいないのに担当の女性と思しき
方が立ち上がって用意をしている
印鑑はどこに押すの?と訊いたら、「ここです」との返答
ここまでは普通の会話なのだが、その一瞬あとに
「父、わからない?***ですけど・・・」
「えっ?」と固まっていたが、小学校からの同級生だった
彼女曰く、父の会社と合併したときから父がいるのは知っていたという
確かに父は変わった名前なので、すぐに気づくのだろうが
もうかれこれ10年になるのに、一度くらい声でもかけてくれればよかった
に・・・とは勝手な話なのだろう
「あれ、じゃあ四月に俺が大阪に転勤になったのも知ってたんだよね」
「うん、だからいつか遭うかなって・・・」
世の中、まだまだ油断できないものだ
それ以来、彼女の記憶を引き出そうとしてモンモンとするのだが
たまたま明石で昼食をともにしたその頃からの親友に聞いても
名前程度の印象しかないという
父の記憶の中からは
・小学校低学年のころからメガネをかけていた
・気さくな女の子で、話やすかった
・中学2年生のころ、メガネをはずした彼女がなかなか
かわいい女性であることに気付いた
・かわいさに気付いたので、 友人たちとともにちょっかい
を出して叱られた
などという勝手なものばかり浮かんできた
都合の良い記憶ばかり並ぶのだが、彼女にとっては恐らく
あまり印象のよくない同級生だったので、これまで声を
かけてこなかったのだろうとかんがえるのが正論
そう思うと、この後もそっとしておいてあげるのが
せめてもの罪滅ぼしというものだろう
それにしても、大阪に来てわずか3か月ほど
こんなにいろんなハプニングがあっていいのだろうかと考えてしまう
世の中は狭い!
さて、ではあのとき東京に転勤していなければ・・・違う人生もあったかも知れない
・・・が、転勤したから今の奥さんと姫さまと王子に会えたとすれば、ここまで歩いて
来た道が最良の道だとあらためて幸せに思った
そして、ここで偶然出会った同級生二人がともに今でもきれいな女性だったということで
あのころの父の目に狂いはなかったんだなと、一人ごちている週末だ