長かった
単行本5冊が各100円で売っているのを見つけて即購入したのが3月の震災直後
1 | 立志編 | 383 |
2 | 風雲編 | 346 |
3 | 狂瀾編 | 361 |
4 | 怒涛編 | 373 |
5 | 回天編 | 456 |
1919 |
都合、約1900ページを1ヶ月あまりで読了した感じだ
実は、この小説自体は父が生まれたころに書かれたものであり
既に発表から約50年経過していることを考えれば古典の部類なのだ
今回、廉価に出回っていたのは、恐らくNHKの「竜馬伝」にあわせて
購入した人が手放したものだろう
司馬遼太郎は、小説の初稿から脱稿まで竜馬のことを歴史が必要とした人物
であり、それ故に歴史に名を残す傑物であるものとしている
混乱の世において、彼を含めた数名のみが「日本」を見ていたのだといい、彼らの中で
彼のみが、形骸化した制度の隙間を行き来しできた
そして、その旧態を叩き壊せたのだといっている
さて、父は学生時代から数十年、坂本竜馬に関する小説は避けてきた
その理由は、あまりにも坂本竜馬が魅力的に位置づけられすぎていることだ
どの小説もフィクションではあるものの、一種の海賊である彼を美化し続けて英雄にしてしまう
そして、その源は恐らく昭和38年頃から書き始められたこの小説によって、
あるいはこの小説に感化された様々な作品によって、数多くの凡人たちが天命を大きく
甚だしく勘違したことを思うためだ
この作品自体は、その考証や検証において一級の歴史小説であるかと思われ傑作ではあるが
その反面、描かれた竜馬の人物が魅力的すぎて人心を惑わせたのも事実ではなかろうか
父はこの小説を読了したその翌日に、子どもたちと釣りに出かけた
家族で、いわしを20匹ほど釣り上げた幸福感にひたっていた
「あぁ、やっぱり俺は歴史なんぞ変えるような、たいそうな人物でなくてよかったなぁ」と感じた
少々頭髪が薄くなっても、平和で大過なく過ごせる世の中が一番だ
姫さまも王子も、歴史に名を残したりせんでええからな