踊る小児科医のblog

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当たり前にものごとを判断できる大人になろう~タバコは人を殺す

2006年03月27日 | 禁煙・防煙
「タバコが体に悪いと言われてるが、90代でも愛煙家でガンにもかからず健康なおじいさんがいる一方で、健康おたくと言われありとあらゆる健康食品を愛用しても、ガンであっさり亡くなった人も知っている」などといった言説をよく耳にします。

しかし、少しでも物事を「当たり前に」考えられる人なら、こういったたとえ話がいかに意味のないものかすぐにわかるはずです。(←言葉を換えればば「科学的に」あるいは「論理的に」考えられる人ならなのですが、それ以前の問題として当たり前という言葉を使っておきます)

このグラフをご覧ください。これが最初に公表されたのは1960年代で、調査の対象となった英国人医師は、自分たち自身によって示された結果の重大さをみて、真っ先に禁煙しただけでなく、政府や社会に働きかけて禁煙推進政策を遂行してきました。

このグラフは、喫煙者と非喫煙者が100人ずついたときに、何歳で何人生き残っているかを示したものです。小中学校で喫煙予防教育をするときに、必ずみせるグラフの最新版(原図)です。

冒頭の発言に沿ってみてみると、90歳で4人の喫煙者が生き残っていますが、残りの96人は既に亡くなっています。非喫煙者は24人も生き残っている。一方で、非喫煙者でも50歳で亡くなっている人は3人いて、喫煙者の6人と比べて差はまだわずかですが、50代60代にかけてその差は広がっていく一方となります。

そして、全体で平均10歳の差がつく。もちろん、平均ですからそれよりも長いこともあるし短いこともある。そんなことは小学生の算数を習った人なら誰でもわかることです。たまたま(あるいは喫煙以外の何らかの原因で)早死にした非喫煙者と長生きした喫煙者がいるからといって、それは何ら不思議なことではありません。それを「人生は不思議なもの」などとわかったようなことを言って比較してみる。

こういった言説は典型的な詭弁、もっとはっきり言えば、人々を騙すウソにほかなりません。
しかも、○○の一つ覚えのように、みんな同じことを言うんですね。

同じような非論理的なめちゃくちゃな論理で禁煙運動をファシズムにたとえて批判し、英国医師の研究から40年を経た今なお喫煙し続けている自分を正当化しようとしている医学者(元東大教授)がいます。「バカの壁」の養老氏です。同氏には別に「バカなおとなにならない脳」という著作もあるようですが、どうぞ皆さんは氏の「タイトルだけ」を参考にして、氏のような○○な大人にならないように、きちんとものごとを正しい知識と情報をもとに自分の頭で判断して行動できる大人になりましょう。

なにが○○かって? たとえばこんな文章をご覧ください。(↓)

「最近、禁煙運動とかいって喫煙者に対して、目を三角にしているけどバカじゃないかね。タバコを吸うかどうかなんて適当でいいんだよ。なにも規制するような問題じゃない。・・・タバコを吸うかどうかは個人の好み。そういう個人的嗜好は公の規則とは相容れないものなんです。禁煙運動がなければ僕だって、あえてこんなに吸いませんよ。全体として統制する、外れるのは許さないという傾向、ここにも「バカの壁」がある。へたをすると世界中がそのまま違う形の北朝鮮状態になりますよ」(養老孟司氏「週刊現代」15.11.29日号)