踊る小児科医のblog

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4月から禁煙治療が保険適用になります(院内報より)

2006年03月30日 | 禁煙・防煙
 これまで、禁煙治療には健康保険が使えず診察代も薬代も全額自費になっていましたが、すでに報道でも伝えられているように、4月から「一部で」保険が適用されることになりました。
 しかし、肝心のポイントがきちんと報道されていないので、これまでの3割の負担で、どこの医療機関でも受診できると誤解されている方がいらっしゃるかもしれません。

 一番大きいのは、禁煙治療の負担で主な部分を占める薬代(ニコチンパッチ代)には保険が適用されなかったため、これまで通り全額自費になってしまうことです。(この点については引き続き保険適用になるよう強く働きかけているところで、近いうちに進展があるかもしれません)

 また、診察料として通常の初診料・再診料に加えて新たに「ニコチン依存症管理料」が設けられることになります。当院ではこれまで、禁煙に踏み切りやすいように自由診療の診察料を低く設定してきたこともあり、保険適用によって自己負担が下がるというメリットはほとんどありません。
 そのため、「管理料」を加算しない一般診療で「ニコチン依存症」の治療を行うことも検討しましたが、これは認められないことになり、熟慮を重ねた結果、次のような理由から新たに決められた方式に従って禁煙治療を行うことにしました。

・国内に三千万人以上いる喫煙者の大半は「ニコチン依存症」という病気であり、自力で禁煙することは容易ではなく、医学的な治療と支援が必要であると医学界だけでなく国も初めて認めたこと。(諸外国ではすでに常識となっていることですが)
・ただし、今回の保険適用には「喫煙者に禁煙してほしくない」タバコ業界から猛烈な圧力がかかり、その実現が最終段階まで危惧されたこと。
・そのため、治療の対象者や治療方法の手順、医療施設の基準などに厳しい制限がかかり、始められる医療機関は県内でも少ないのではないかと予想されること。
・当院では、これまでの禁煙治療の経験などもあり、呼気一酸化炭素測定器を新たに導入すれば、治療を開始することが可能なこと。
・今回の保険適用化にあたり、全国の医療機関から禁煙の成功率などを報告して集計することになっており、その実績が認められれば、更に次回・2年後の改定でより多くの人に少ない負担で治療を提供できるようになること。
・そのためには、青森県内でも高い禁煙成功率の実績をつくっていくことが必要であり、県内の禁煙活動の旗振り役の一人として社会への働きかけを続けてきた当院にもその責務があると考えられること。

 保険による治療の対象となる「ニコチン依存症」の条件は次の4つ。
 1)直ちに禁煙しようと考えていること
 2)ニコチン依存症スクリーニングテストで基準以上の点数
 3)1日の喫煙本数×喫煙年数≧200
 4)禁煙治療を受けることに文書で同意していること

 もちろん、これに該当しない人は禁煙しなくてもいいということではなく、ニコチン依存度の強弱にかかわらず全ての喫煙者は禁煙に踏み切ってほしいし、自力で禁煙できない方には、少し費用はかかりますが自由診療で標準的治療に準じた治療を行うこともできます。むしろ、ニコチン依存度が低く、吸い始めて間もない段階で治療して禁煙することにより、自分だけでなく家族の健康被害も最小限に食い止められ、将来の保険財政上のメリットも大きくなるので、本来この制限はナンセンスなのです。

 禁煙治療の詳細はここで触れられませんが、約8週間の投薬と、12週間まで全5回の受診スケジュールとなります。日程など若干の調節は可能ですが、全国共通の標準的治療に準拠したかたちになります。

 なお、禁煙外来の案内(ホームページおよびパンフレット)は全面的に改定する予定ですが、4月以降にずれ込むことになり、それまで混乱される方がいらっしゃるかもしれません。この文面と、お問い合わせの時や診察時の説明で対応させていただきますので、少々お待ちください。