goo blog サービス終了のお知らせ 

踊る小児科医のblog

青森県八戸市 くば小児科クリニック 感染症 予防接種 禁煙 核燃・原発

子宮頸がんHPVワクチン 高1の初回接種は4月以降(高2)も無料で

2011年03月07日 | 予防接種
肺炎球菌・ヒブワクチン接種見合わせだけでなく、子宮頸がんHPVワクチンは供給不足で新たな接種ができない状態になっていますが、現在高1の子には初回接種が4月以降になっても無料で接種できることになりました。

なお、当院に現在予約している方、1回目を接種した方への2回目までのワクチンは確保しております。それ以降についても、入荷次第順次接種するようにしますので、予約は引き続きお受けしております。当面、現在高1の子に優先されることになりますので、該当の方は早めにご連絡下さい。中学生の予約も受け付けております。実際に接種できる時期はこちらから連絡いたします。

(以下、国から県への通知)
-----------------------------
事 務 連 絡
平成23年3月7日

各都道府県 衛生主管部(局) 御中

               厚生労働省健康局結核感染症課
               厚生労働省医薬食品局血液対策課

 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の円滑な実施について

 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の実施については、平素より格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、今般、子宮頸がん予防ワクチン製造販売業者からの当該ワクチンの供給量が逼迫しているとの連絡を受けたところです。
 子宮頸がん予防ワクチンの供給については、市場流通に基づいており、製造販売業者によれば、当初は十分な供給量が確保されているとのことでしたが、急速な需要の増大に対応できず、供給不足となり、出荷の制限等を実施しているとのことです。
 このため、厚生労働省としては、早期に供給不足を解消するため、引き続き、製造販売企業に対し、安定供給の確保に努めるよう要請していくとともに、子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の円滑な実施を確保するため、「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の実施について」(平成 22 年 11 月 26 日健発 1126 第 10 号厚生労働省健康局長通知及び同日付け薬食発 1126 第3号医薬食品局長通知)を改正することも含め、以下のような方針で対応する予定ですので、管内市区町村等への周知方お願いいたします。

        記

1 今年度に事業を開始し高校1年生を事業の対象としている市町村においては、平成23年3月末までに1回目の接種をできなかった高校1年生が、平成23年4月以降に1回目の接種をした場合であっても、当分の間、事業の対象とできることとする。

2 ワクチンの供給状況を踏まえ、当分の間、初回の接種者への接種を差し控え、既に接種を開始した者への2回目・3回目の接種を優先するよう、市区町村及び関係機関にお願いする。

以上

「接種後死亡」4例の情報 「見合わせ」や「再開」の根拠は 肺炎球菌 ヒブ

2011年03月07日 | 予防接種
これまで書いたことと重複しますが、予防接種後の死亡4例について、厚労省や保健所の発表と報道を合わせた限られた情報の中で、再度まとめて解析してみます。(推測が混じっているので確かなことは何も言えませんが)
→4症例の情報PDF(厚労省)

1)宝塚市 2歳男児 ヒブ+肺炎球菌 基礎疾患あり(心室中隔欠損症、慢性肺疾患、気管支喘息、てんかん) 翌日死亡 「容態が急変」とだけ報道されていて直接の死因や経過は公表されていない

2)西宮市 1歳女児 三種混合+肺炎球菌 基礎疾患なし 翌日死亡 呼吸停止状態で発見
<経過>
 3月1日 小児用肺炎球菌ワクチンとDPTワクチンを接種
      夜中に39℃の発熱
 3月2日 午前9時過ぎ 接種医療機関を受診
      軽度の咽頭扁桃発赤のみで全身状態良好
      午後1時半頃家族が呼吸停止に気づく
      救急車到着時、心肺停止状態
      午後2時56分、死亡確認

3)川崎 6ヶ月未満 女児 三種混合+ヒブ+肺炎球菌 基礎疾患調査中(報道では基礎疾患なし) 接種後3日で死亡
<報道より抜粋>
 2月17日接種 3日後の20日午前8時ごろ呼吸停止状態で発見、救急搬送後死亡確認

4)京都 6ヶ月以上1歳未満 女児 三種混合+ヒブ+肺炎球菌 基礎疾患あり(右胸心・単心室・肺動脈閉鎖) 接種翌日死亡 

(以上のお子さんについて、ここでは症例●という表現をさせていただきます。)

 このうち川崎の症例3は、接種後の経過が明らかになっていないのでそれにより判断が違ってきますが、接種後3日経っているので直接の因果関係は考えにくく、いわゆる「紛れ込み事故」の可能性の方が高そうです。生後6ヶ月未満という月数と、基礎疾患のない乳児が突然死を起こしている経過からは乳幼児突然死症候群(SIDS)の可能性がありますが、SIDSの診断には剖検が必須とされているので断定的なことは言えません。すでに半月以上経っていることから、剖検の結果も明日の検討会で出てくるのではないか推測されます。(もし「紛れ込み事故」の可能性が高くても予防接種副反応の救済措置の対象とすべきだとは思いますが。)

 西宮の症例2は一番経過が明らかになっていますが、前にも書いたように接種当日の発熱についてワクチン接種との関連の可能性はあるものの、翌日朝の受診時に「全身状態良好」であったにも関わらず、その後数時間で突然死を起こしており、その数時間の間に前日接種したワクチンの影響によって急激に悪化して突然死するというのは医学的には考えにくいストーリーです。発熱などの経過があるのでSIDSとは言えないと思いますが、発熱後に突然死を起こすウイルス性心筋炎やインフルエンザ、ロタウイルスによる脳症などを示唆する剖検所見や検査結果がないかどうかもポイントになってくるかと思われます。

 宝塚(症例1)と京都(症例4)の子には比較的重い基礎疾患があり、それが影響していたことは確かだろうと思いますが、そこに接種が何らかの影響を及ぼして引き金(トリガー)になったということも当然考えられます。その両者のウェイトがどれくらいということは、数値的に表すことは不可能ですが、接種前の一般状態、基礎疾患の経過や程度などによって判断は異なってきます。

 基礎疾患のある子に対する予防接種は、接種すべきでないということではなく、むしろ感染すると悪化しやすいことが多いため、主治医の判断により、状態の安定している時期に主治医の元で注意深く行われるのが普通です。この2症例もそうだったものと推測されますが、不幸にして死亡という転帰を迎えたことについて、それを健康な子への接種にまで一般化して解釈することは難しいものと思われます。

 突然死の2症例については剖検やその他の検査結果が、基礎疾患のある2症例については主治医による総合的な判断が必要になってくるものと考えられますので、現時点での推測はここまでとしておきます。

 繰り返しになりますが、予防接種と副反応とされる事例との「因果関係を証明」することも、「因果関係を否定」することも一般には非常に困難であり、その間のグレーゾーンの中で、シロに近いグレーなのか、クロに近いグレーなのか、どの程度の濃さか判断できない場合なのかなどの判断がなされることになります。

 もし「シロ」であることが証明できないと再開できないとしたら、全ての予防接種ができなくなってしまいます。予防接種についてはあらゆる国で行われているように、リスクとベネフィットを勘案して、適切に判断がなされることを望みます。

 亡くなったお子さんの親御さんにとっては、確率という数字上の問題ではなく、ご自分のお子さんが亡くなったという100%の問題であり、予防接種によって亡くなったという受け止め方をするのは当然のことと思います。それに対して真摯に受け止めてできる限りの原因究明や救済措置がなされるべきと思います。

 ただし、今回のケースについて接種見合わせが続くにせよ再開されるにせよ、他のワクチンを含めて、今後も同じようなケースがゼロになるわけではないことも知っておく必要があるでしょう。

接種後24時間(48時間)まで 副反応の注意期間

2011年03月07日 | 予防接種
肺炎球菌、ヒブワクチン一時見合わせについて、接種済みの方でご心配の方がいらっしゃるようですが、不活性化ワクチンの場合、発熱などの反応がある可能性は接種後24時間、長く見ても48時間であり、すでに3月4日までに接種された方はその時期は過ぎております。アナフィラキシーなどの直接の重篤な反応は、接種当日(それも30分以内など)早くに現れるものです。

なお、国の検討会は明日(8日)開催されてそこで今後についても議論になりますが、発表になっている情報の範囲内でのコメントを再度別の記事に書いておきます。

一つ前に書いた、
「Q&A 肺炎球菌・ヒブワクチン一時的見合わせ」
もご覧下さい。