熊本熊的日常

日常生活についての雑記

あうる

2010年05月10日 | Weblog
近所に福祉作業所を母体としたベーカリーがあるのを知った。ちょうど明日の朝に食べるパンを買わなければならなかったので、「あうる」というその店でパンを3つ買った。早速、そのなかのひとつを食べてみた。「ツイストココナツ」という名のデーニッシュで、とてもおいしかった。場所がわかりにくいのと、駅から少し離れた場所にあるので、事業としては容易ではないかもしれないが、繁華街に出店しても十分に集客できるパンだと思う。

昔の勤務先の近くに日本財団のビルがあり、その1階に「スワン」というベーカーリー・カフェがあった。こちらも障害者の自立を目的に作られた事業だ。ヤマト運輸の社長・会長を歴任された故小倉昌男氏が私財の過半を投じてヤマト福祉財団を設立、ここが音頭を取り、「アンデルセン」や「リトルマーメード」を展開するタカキベーカリーが協力して事業化したのだそうだ。

障害者だからどうこう、というのではなく、縁あってこの世で生活を共にしているからには、互いが気持ちよく生活できるよう自分なりに考え実践するというのは生活者としての当然のマナーだと思う。障害があろうとなかろうと、生活しているからには自分の生活を支える社会に対する貢献がなくては、生きていているということに関わる負担と恩恵のバランスが感じられないだろうし、そうなればなんとなく生きていて居心地が悪いのではないだろうか。

人も社会も利で動く、と以前にこのブログのなかで何度も書いている。利を得るには、その主体が存在しなければならない。人が人として存在するのは、社会という関係性のなかに組み込まれていればこそである。ロビンソン・クルーソーのような人もいないわけではないだろうが、自分というものは他人の存在と表裏一体だ。他人がいるから、そこに利というものも生まれるのである。自分の内実を豊かにするのは、他人との多様な関係性の在りようだ。銭金ばかりでしか物事を認識できないという人は、その人を取り巻く関係性が貧弱であるということだ。関係性の貧富と経済力の貧富は必ずしも一致しないのである。

私の場合は関係性も経済力も共に極貧だが、この先なにか間違いがあって、自分が起業する機会に恵まれるならば、その事業に関わる人の自負心を刺激して、生きることが楽しいと思えるようなことをやってみたい。自分の在りように自信を持つことができれば、世間に振り回されることもないだろうし、何があっても静かに受け容れる姿勢のようなものが身につくと思う。類は友を呼ぶ、というが、そういう姿勢で生きていれば、それに見合った関係性を構築できるのではないだろうか。

ところで「あうる」だが、場所は巣鴨と駒込の中間あたりである。

Bakeryあうる
東京都豊島区駒込4-7-1
営業時間 11:00~17:00 (但し水曜は16時30分閉店)
定休日 土日祝