熊本熊的日常

日常生活についての雑記

会話の妙

2010年05月25日 | Weblog
普段は夕方に出社するのだが、今日は会議があったので、陶芸教室の後、すぐに帰宅して着替えて出社した。会議が終わってから昼食を食べることになったので、午後3時をまわってしまい、営業をしている数少ない店のなかから選ぶことになった。

蕎麦が食べたかったので、小松庵で「本日のおすすめ」となっていた冷やし鴨南蛮をいただいた。この時間帯は空いていて、私のほかには2組の客しかいない。ここの蕎麦は、やや高めの価格設定なのだが、なんとなく上品な作りで、たまにこういう蕎麦もよいと思う。勘定を払う段になって、レジのところに「本日の蕎麦は福井産…」というPOPが目に入った。「本日の」ということは、毎日蕎麦粉が変るのか、と店の人に尋ねてみた。さすがに毎日は変らないそうだが、月単位というような決まったものでもないらしい。ここでは国内に7つほど仕入先があり、現在使っているのが福井県のものだが、その前は北海道産で、この後も北海道産になる予定だという。比較的、北海道産のものを使うことが多いのだが、国産ということにこだわっているとのことだった。ただ、昨年は凶作で、現在は蕎麦粉の確保に苦心しているという。「凶作で品薄ということは、それだけ価格が上がるわけだから、店で出すおそばの値段もあがるってことですよね」と尋ねてみる。値上げについては直接的に肯定も否定もしなかったが、「価格に見合う中身を目指します」という実質的な値上げ宣言が返ってきた。ほかにも蕎麦粉のことや蕎麦のことをいろいろ尋ねてみたのだが、たいへん気持ちよい応対で、気分良く店を後にした。

その後、勤め先が入っているビルに戻り、商店街のなかの雑貨屋を回って鍋を見て歩いた。使っている鍋の内側の皮膜が剥がれてきたので、そろそろ買い替えを考えるようになっている。昨年、帰国して住む場所が決まり、家財道具を揃える時に、鉄瓶を買うのにさんざん見て歩いたので、鉄器については詳しくなった。そういう眼で眺めると、今日のところは、これはというものに出会うことができなかった。ただ、ある店で調理に使える陶器というのがあり、面白いと思いながら眺めていると、店員が近づいてきて、いろいろ説明してくれた。この店で扱っているのは三重と出雲の窯のもので、出雲のほうは出西だった。ここはバーナード・リーチが訪れて指導した場所のひとつで、商品のなかにもリーチ直伝のものがいくつかある。エッグベーカーは日本人には、まず思いつかないものだろう。自分で買ったり作ったりして使おうとは思わないが、プレゼントにすると、面白がってもらえるかもしれない。今日のところは買う気が無いので店の人には申し訳なかったのだが、説明を聞いたり商品を見たりして思い浮かんだ疑問はすぐに質問していたら、ひとつひとつ丁寧に答えて頂いた。昨今は商品知識が無い店員を置いている小売業者が多いなかで、きちんとした商品知識を持って客と向かい合う店員がいるというだけで、この店に対する印象がたいへん良くなった。

職場に戻る前にコーヒーでも飲もうと思い、ビルのラウンジの中にあるillyでエスプレッソと小さいケーキを注文した。ちょうどプリペイド式のハウスカードの販促期間とのことで、勧められるままにカードも作った。普段は500円の発行手数料が300円なのだという。いつもはそんなことはないのに、今日は店の人が「コーヒーはお好きですか」などと尋ねてくる。カードを作ったからそんなことを聞いてきたのかもしれない。「ええ、豆を買って自分で挽いて淹れてるんですよ」と答えたら、驚かれてしまった。コーヒーのことは、話を振られてしまうと黙っていられないので、エスプレッソの抽出を待つわずかの時間だったが、思いの外、会話が弾んだ。

偶然とはいえ、行く先々で、ちょっとした楽しい時間を過ごすことができた。何でもないことなのだが、こういうことがあるだけで、今日一日が輝いて見える。