熊本熊的日常

日常生活についての雑記

POTTERS AT WORK

2010年06月28日 | Weblog
昨日、日本民藝館で「POTTERS AT WORK」というDVDを買った。陶器製作を生業とするふたつの家族の仕事の様子を撮影したドキュメンタリーだ。1976年の作品で監督はカナダ人のMarty Gross。ナレーションなどは一切なく、ただ陶工一家の日常が撮影されている。本編30分だが、それ以上の内容を感じるのは自分が陶芸をやっていて、写っている人たちの一挙手一投足に並々ならぬ関心を持っている所為だけだろうか。

栃木県立美術館の濱田庄司展では、NHKアーカイブスの「あの人に会いたい」での濱田の回が会場内に設置された大型テレビで繰り返し再生されていた。番組の性質上、スタジオでのインタビューが多いのだが、益子での作陶の風景も盛り込まれており、その様子が大変参考になった。国立新美術館でのルーシー・リー展でもBBCの番組「Omnibus」で彼女を取り上げた1982年2月14日放送のVTR約20分が繰り返し流されていた。これも私にとっては貴重な映像だ。

こうした作陶の映像に惹きつけられる経験が過去2ヶ月程の間に2回もあったので、その余韻も冷めやらぬ昨日、日本民藝館を訪れた折に売店でこの「POTTERS AT WORK」というDVDを見つけ、買うことを即決した。

レジでクレジットカードの処理をしながら、民藝館のスタッフが思いもよらぬ言葉を発した。
「なんか、今日はこのDVDがよく売れるんですよね」
こんなものを買う奴がいるのかと驚いてしまった。
「え! そうなんですか?」
私は動揺を隠せない。しかし、考えてみれば、休日にわざわざこんなところに古道具を眺めに来る奴は変わり者である確率が高いのである。売店の担当者もそれを十分承知しているからこそ、こんなDVDを棚にまとめて並べておくのだろう。
「このDVD観ると驚きますよ。すごいんですから」
と民藝館の人は追い討ちをかける。
「すごいんですか?」
「陶芸家と陶工って、全然違うんだなぁ、って思いますよ」
「あぁ、そうでしょうねぇ」
「前に、ここに陶工の方を呼んで実演して頂いたことがあったんですけど、すごかったですねぇ」
「へぇ、そんなことがあったんですかぁ」
楽しい会話だ。

30分の映像なので、作陶場面を観たいと思っていた身には、かえってフラストレーションを感じてしまう面もないわけではないのだが、思わず繰り返して再生してしまうほど面白かった。