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熊本熊的日常

日常生活についての雑記

死装束

2012年08月12日 | Weblog

芸大美術館で開催中の契丹展を観てきた。契丹というのは10世紀頃に起こった遊牧民主体の王朝だそうだが、謎が多いのだそうだ。ひとつには昔のことだという身も蓋もない理由があるだろうが、契丹文字の解明が進んでいないことと、王朝の寿命が200年程度と短かったことによるのだろう。今回の展示は支配階級に属する人の墓とみられる遺跡からの出土品が中心だ。印象深かったのは、死装束だ。王冠、金の面、銀糸で編んだ網状衣装、銀靴。なんとなく宇宙人のような風情(宇宙人に会ったことはないが)を感じる金属尽くしのものだ。美しいかどうかは主観の問題だが、素材と加工技術を見れば、それが貴重なものであるのは誰でも想像ができるだろう。そうしたものが婚礼道具のなかにあったというのである。現在とは比較にならないほど人間の寿命が短かったのは確かだろうし、遊牧民という生活スタイルとしてはできることはできるときにやってしまう、ということで早々と死の準備をしていたであろうことも理にかなっている。それにしても、婚礼と死が結びつくというのは、なにかそこに死生観や人生観の深さを感じる。