これから本格的にプラモデル作りを始めようと考えていらっしゃる方のためのお話の第5弾です。
本格的にプラモデル作りを始めるにためには、どの程度の道具を用意する必要があるか?についての2回目ということで、今回は「塗装編」です。
全開の組み立て編と同様に「素組み」を前提として、尚且つ、私が「吹付派」なので、エアブラシを使った「吹付け塗装」を前提にします。
1.エアコンプレッサー
市販のエア缶を使う方法もありますが、エア圧が安定しないことと、プラモデル作りを継続していくとなると不経済なので、初期投資としては多少負担になりますがエアコンプレッサーの購入をお勧めします。
エアを圧縮する方式や、性能によって色々な機種が出ていますが、大凡1万円台~3万円程度で購入できます。
ちょっと規模の大きなホビーショップや画材店で選ばれると良いかと思います。
タミヤやクレオス、エアウェーブ、エアテックスなどから発売されていますので、メーカーHPも参考にされると良いかと思います。
私はエアテックス社製のレギュレータ付のコンプレッサーを使っています。
パワーは十分過ぎるくらいにありますし、エア圧の調整が細かくでき、エアの湿気を取り除く機能もあって良いです。 また、エアブラシを吹いた時だけ作動する機能も付いているので加熱の心配が無く、余計な電気代も掛かりません。
音と振動は若干ありますが、家族の迷惑になる程ではありませんし、夜でも十分に使えるレベルです。
2.エアブラシ
艦船モデルの船体などの広い範囲を塗るだけなら缶スプレーでもOKですが、それ以外は仕上がりの綺麗さ、使いやすさなどの点で、エアブラシをお勧めします。 これも結構な出費になりますが、それだけの価値はあります。
エアブラシには、
塗料の供給方式の違い(吸上げ式/ドロップ式)、操作方法の違い(シングルアクション/ダブルアクション)、口径の違い(0.2mm~0.5mm)などで様々なモデルが出ています。
入門用としては吸上げ式、シングルアクション、0.3mm径のものが5~6千円で売られていますが、多分、直ぐに不満になってくると思います。
ズバリお勧めは、ドロップ式(塗料カッブ直付け)、ダブルアクション、0.3mm径です。
これひとつあれば、ほとんどの場面に対応できます。
ドロップ式:洗浄、メンテナンスが簡単でやり易い
ダブルアクション:エアと塗料の吹き出しが指一本で微妙に操作できる
0.3mm径:広い範囲のベタ吹きから結構細かい線吹き、点吹きまで幅広くこなせる
エア量自体をエアブラシ側で調節できる機能が付いたものが尚、便利です。
値段は1万円~15000円程度です。
因みに、私が使っているのは写真の4種類です。
一番上は最初に買った「入門用」でエア缶とセットで6000円くらいでしたが、直ぐに不満になり、真ん中のダブルアクション0.3mmを購入しました。 カップの真下についてるツマミでエア量を調整できるのがもの凄く便利です。 今でもこれが一番メインです。 一番下は真ん中のものの0.2mm版で、細かい線吹き、点吹きにだけ使います。 一番上の入門用は今では「サフ吹き」専用になっています。
一番下は、一番新しく購入したもので、0.3mmのトリガータイプです。
広い範囲に同じ色を吹く場合に、疲れなくて良いです。
エアブラシは使用後の洗浄作業が非常に大切になりますが(洗浄がきちんとできていないと直ぐに不調をきたします)、方法は「うがい」と「吐き出し」です。 その時に必需品になるのが、それを受ける容器ですが、クレオスから発売されている写真の容器がお勧めです。(製品名は忘れました)
3.塗装ブース
吹付塗装の場合、塗料の飛散やシンナーガスの対策が必須です。 以前は屋外でやっていましたが、天候に左右されることと、真冬、真夏は厳しいため、塗装ブースを購入しました。 必需品と言っても良いと思います。 要するに換気扇で、塗料の飛沫やガスを吸い取って、ホースを通して屋外に排出してくれる訳です。 お蔭で部屋を汚す心配なく、屋内での塗装作業ができます。
お値段はメーカー、機種によって様々ですが大凡1万円台の半ばくらいです。 高い買い物になりますが、それだけの価値はあります。
4.筆
吹付け派とは言っても100%吹付けという訳にはいきませんので、筆も必要です。 但し、細かいパーツの塗り分けや、部分的なタッチアップ、墨入れに使うだけなので、写真のような面相筆と平筆くらいで十分です。
写真の下の2本はドライブラシ専用で、使い古した筆を短く切ったものです。 パーツの立体感や使用感を出すためのドライブラシだけに使います。
5.マスキング材料
まずはマスキングテープです。 筆塗りの場合でもこれは間違いなく必需品です。
特に難しいことはありません。 幅の違うものを何種類か用意しておくだけです。1個100円~100数十円です。
マスキングテープで上手くマスクできないような三次局面などは補助的にマスキングゾルも使います。
下の写真はマスキングテープを細切りにしたものとマスキングゾルの組み合わせでコックピット部分をマスキングしている例です。
必需品に近いものとして、円切り(コンパス)カッターがあります。 写真のものはウメモトデザインというメーカーのパンチコンパスという製品ですが、直径1.5mm~10cmまでの円が切り出せる優れもので、もの凄く重宝しています。 画材店などで600円ほどで売っています。
車輪のホイールや国籍マークのマスキングなどに大活躍しています。
http://item.rakuten.co.jp/central-gazai/10001402/
これも必需品に近いものとして「喫水線マーカー」があります。 木製の艦船模型などを扱っているホビーショップであれば大抵手に入ると思います。 3000円くらいだったと思います。
用途は船の喫水線を水平に引くために使いますが、船だけでなく、飛行機の胴体の上下の塗り分け線を水平に引くときなどにも使えます。
対象物自体を水平に固定する治具と組み合わせて使います。
実際の使用例(DC-6の胴体の塗装の境界線引き)
6.塗料
塗料にはエナメル系、ラッカー系、アクリル系の3種類がありますが、私の場合はラッカー系主体で、墨入れだけエナメル系、ツヤを整えるトップコートだけアクリル系にしています。
エナメル系は筆塗りには適していますが、吹付には適していません。
ラッカー系は塗膜の強さ(ラッカー系の上にはエナメル系、アクリル系なんでも塗れます)と、乾燥の速さがメリットで、デメリットは臭いと有害なガスです。
アクリル系は水性なのでラッカー系の欠点はありませんが、塗膜はラッカー系より弱いです。
また、アクリル系塗料の上からラッカー系塗料は塗れません。
塗装の手法とご自分の制作環境で選ばれると良いと思います。
プラモデル製作専用に近いような部屋があって、塗装ブースなどで換気が確保できればラッカー系をお勧めします。 そうでなければアクリル系が無難でしょう。
下の写真が私が普段使用している塗料です。
一番左はアルクラッド製の塗料でメタリック系ではお勧めです。 特に107番のクロームはまるでメッキのような輝きになり、しかも非常に強い塗膜になります。 欠点はお値段が高いことと、売っている店が少ないことです。
左から二番目は一番メインで使っているミスターカラーです。 90%はこれです。 デカールの乗りを良くしたいので、できるだけ艶ありの原色塗料を調合して使うようにしています。(調合が難しい色は当然調合済のものを購入します)
全体の艶は塗装とデカール貼り、墨入れが全部終わった後でアクリル系のつや消し(又は半艶)クリアを吹付けて整えます。 こうすると全体の艶が均一になり、デカールの保護にもなります。 右から二番目はカーモデルやエアライン物に使用しているフィニッシャーズカラーです。特徴は調合の難しい特殊なカラーが揃っていることと、発色が良く、隠ぺい力も強いことです。
一番右は、原色塗料から自分で調合した色です。 良く使う色はある程度の量を作っておき、このように空き瓶に入れてラベルを貼っておきます。
木目を描く必要がなければ、要らない道具ですが、私のように筆で上手く木目表現できる自信が無い場合は、油性の色鉛筆が重宝します。 画材屋さんで売っています。
例えば第一次大戦機のプロペラなら、最初にウッドブラウンでプロペラ全体を塗装しておいてから、写真のような色の油性色鉛筆2色位を使って適当に濃淡をつけながら木目を描きます。 その後で水性クリアで上塗りするとニスを塗った木製プロペラの出来上がりです。
写真は1/72のフォッカーEⅢのコックピット床、シート、プロペラの例です。木目が見えますでしょうか?
7.塗料の調合や薄め作業
塗料の調合用のパレット、小さなスプーン、スポイドと攪拌用の棒(アイスクリームの棒)です。
シンナーを適量注ぐための容器です。 ホームセンターの塗装道具コーナーで売っています。
写真は省略しますが、塗料を調合する際の容器また、調合済塗料の保管用に空き瓶を取っておくことも必要です。 私の場合、使い終わった塗料の瓶を綺麗に洗って使っています。
8.塗装対象物を保持する
まずは、塗装するときにキット本体を安定させておくための台です。 作るキットの大きさや種類によって形や大きさは様々ですので、ベニヤ板、角材や丈夫なダンボールなどを使って自作します。 写真は飛行機や艦船模型用の台です。
こういう台があると塗装の時だけでなく、小物パーツの取り付けや張り線張りなどの作業の時にも重宝します。 ポイントはキットをしっかりと安定させられることです。
下の写真は実際に使用しているところです。
これを写真の後ろの方に写っている塗装ブース付属の回転台に乗せて使うととても便利ですよ。
次に、小さなパーツを摘まんで保持する道具です。 組み立て編のパーツ固定の道具と同じです。
プロペラやホイールなどのように穴の開いたパーツは下の写真のように竹串に刺して、小さなパーツをランナーから切り離した状態で塗装する時はアイスクリームの棒に両面テープで鳥餅のようにくっつけて、下の写真のような台に刺して乾燥させます。
半分はダンボールで、半分は発砲スチロールで、外側はティッシュの空き箱です。 材料さえ揃えば簡単に自作できます。
下の写真は実際の使用状況です。(これはサフ吹きの段階です)
9.ウェザリング
ウェザリング・・・つまり「汚し」の道具です。
ドライブラシは既に出てきましたから、省略します。
下の写真が主な道具です。
後ろがエナメル塗料の黒、グレー、茶を凄く薄めたもので、主に「墨入れ」に使いますが、茶色は錆の表現にも使います。
手前はタミヤのウェザリングマスターという化粧品のような固形パウダーで、何種類かの色があります。 これを筆や付属のスポンジでキットにこすり付けて排気ガスの汚れや錆、水垢などの表現に使います。
下の写真はエナメルの黒を筋彫りに流し込んで墨入れした例です。(国籍マークは塗装です)
下のB-17の主翼のオイル汚れはウェザリングマスターの黒と赤ザビをこすり付けて表現したものです。
10.パーツの分別と保管
塗装だけでなく、組み立てにも共通しますが、細かいパーツを場所や塗装色毎に分別してケースに入れておくと作業が捗りますし、パーツの紛失も防げます。
私の場合は写真のように100円ショップで売っているポリの小物ケースを使っています。
パーツをランナーから切り離してバリやゲート処理をしながら塗装色別にケースに分別します。
次に塗装が終わったパーツは、組み立てに備えて場所別に分別し直します。
11.綿棒
エアブラシの掃除や墨入れのふき取りなど色々な用途に使用します。
丸、とんがり、細身の3種類くらい用意しておけば十分です。
随分と長くなってしまいましたが、塗装道具については以上のような感じです。