これから本格的にプラモデル作りを始めようと考えていらっしゃる方のためのお話の第6弾です。
今回はプラモデルの組み立ての基本的な手順についてのお話です。
今回も素組みを前提にお話を進めます。
1.インストとパーツの確認
プラモデルを買ってきて、箱を開けて最初にやるべきことがこれです。 必要なものが全てちゃんと入っていて、パーツに不良がないかどうかの点検です。
・まず、インストを見て、何が入っていなければならないかを確認し、それらが揃っているかどうかを確認します。
・次にデカールの印刷不良、パーツの破損や整形不良などがないかどうかを確認します。
この段階で不足や不良を発見した場合はの対処方法
・輸入キットの場合
購入したショップへ相談するか、国内の代理店(例えばイタレリならタミヤ)へ掛け合います。良心的なショップで在庫があれば交換などの対応をしてくれる場合もありますが、代理店の対応共々あまり期待はできません。 英語の達者な方であれば直接メーカーへ交換や追加送付を請求することも可能かとは思いますが、安いキットであれば再購入した方が手っ取り早いでしょう。
・国産キットの場合
これは直接メーカーへ交換や追加を請求するのが一番です。 インストにこういう場合の連絡先などが書いてある場合もあるので、確認してみて下さい。 電話、インターネット、郵送のいずれかでの連絡になります。 1週間から1ケ月程度掛かってしまいますが、大抵は解決すると思います。(私は2度経験がありますが2度とも問題なく解決しました)
2.インストをよく見て、製作計画を立てる
ポイントは次の2点です。
・何を作るかを決める
大抵のキットが何種類かのデカールが付いていますし、何種類かの「型」を選べる「コンバーチブルキット」もあります。
デカール(国や部隊、航空会社、時代)や型によって使用するパーツが異なったり、製作手順が異なったりすることがあるので、最初に決めておくのが良いです。
・製作ストーリーを考える
インストとパーツを見比べながら製作手順や手を加えるべきところを考えます。 つまりキットを事前にできるだけ理解するということです。
これをやることによって後々の製作がスムーズにいきますし、難しそうな部分や「ここはちょっと手を加えた方が良さそうだな」という部分も見当がつきます。
また、大抵のキットはインスト通りに進めていけば良いのですが、中にはインスト通りの手順では非常に難しいことになってしまうような場合もあるので、そういうところに事前に気付くということもあります。
・必要な塗料を確保する
インストに書いてある塗装指示と自分の塗料の在庫をチェックして足りない塗料があれば購入しておきます。
3.実物の資料を集める
素組みが前提なので、この工程は必要ないかも知れません。
細かいディテールを調べるとか、考証をするというよりも、実物の雰囲気や汚れ具合、痛み具合、色の感じなどを確認する意味合いが大きいので、ネット上に出ている写真で十分だと思います。
資料本は高いですからね。
4.パーツの切り離し、整形、分別
インストを見ながら、各パーツをランナーから切り離すか、又はランナーにつけたまま個別に分離して、塗装する色別に分別します。
パーツをランナーから切り離すか、又はランナーにつけたまま個別に分離するかの判断は、
・どちらが塗装しやすいか
・ランナーから切り離してもパーツ番号が判らくなって困ることがないかどうか
によって決めます。
私の場合、具体的には以下の判断です。
小物パーツの場合、ランナーとパーツを結ぶゲートが塗装面にある場合は切り離し、接着面にある場合は切り離さない
似たようなパーツで左右、上下で微妙な違いがある場合は、パーツ自体にパーツ番号を書き込める場合だけ油性マジックで書き込んだ上で切り離します。
切り離し、分離が終わったパーツはバリ取り、ゲート処理、パーティングライン取りなどの整形を済ませます。
5.仮組と事前組み立て
パーツの整形、分別が完了したら、もう一度インストをよく見て、主要パーツの仮組みを行います。
例えば、飛行機であれば、機体を構成する主要パーツの合いを確認するために仮組みを行います。
これは後々の工程をスムーズに進めるための「必須の工程」です。
というのは、「胴体と主翼の合い」などの重要な部分に大きな「合いの悪さ」(パーツの狂い)がある場合、組み立て開始前に対策を考えて準備しておかないと、ある程度組み立てが進んでから気付いても手遅れや大変な苦労をする結果になるからです。
ハセガワ1/48の二式水戦の例で、少し詳しくお話します。
仮組みの結果、ハセガワにしては珍しく、主翼と胴体の合わせ目に1mm程度の巨大な隙間ができることが判りました。
原因は単純で、胴体パーツの幅と、主翼側の胴体用の幅が合っていないからです。
この隙間を後でパテ等で埋めるのは大変な作業になります。
また、主翼とエンジンカウルの間の段差の補正も厄介な作業になります。
ここは是非とも組み立て前に対策を講じておく必要があります。
この場合の対策は2案考えられます。
第1案
左右一体の主翼下面のパーツを真ん中で切り離して、1mm程度幅を詰めて再結合するという方法です。
この方法を採った場合、メインフロートとの接合部分が合わなくなるという大きな問題が生じます。
第2案
胴体パーツの左右接合の際に下側部分に1mm厚のプラ板を挟んで、主翼との接合部分の幅を広げるという方法です。
この方法を試してみた所、写真の通りほぼピッタリと合うようになります。
エンジンカウルとの合いが悪くなる心配がありましたが、これは大丈夫そうです。
従って、この場合は第2案を採用するということです。
※勿論、実機の寸法と比べてどうかとか、第2案を採用することで実機のシルエットと乖離しないかなどの検証が必要なのでしょうけれど、「キットを完成させる」ことを第一目的とする私としては安全確実で、大きくシルエットを損なわないであろう方法を採用することにします。
・塗装前に組み立てた方が良いパーツは組み立てて(接着して)しまう
プラスチックのパーツは塗装した後で接着するためには、接着面の塗装を剥がさなければなりませんし、塗装した後のパーツを綺麗に、頑丈に接着するのは結構難しいのです。
従って、後々の塗装工程(塗り分けやマスキング、吹付け届くかどうかなど)を考えて、先に組み立てても支障がないと判断できれば、できるだけ組み立ててしまった方がよいです。
例えば、エンジンブロックの前後、左右の貼り合わせ、エア物の機体内部の隔壁と床の接合などです。
・主なパーツの仮組
これをやることで、インスト通りの手順で支障なく組み立てや塗装ができるかということと、パーツの合いの悪いところ=調整が必要な個所とその方法が事前に確認できます。
6.パーツの洗浄
ここまでの工程でヤスリの削りカス、手垢、手脂などでパーツはかなり汚れています。
またプラモデルはメーカーの製造工程で金型からプラスチックを取り出しやすくするために「離型剤」という油脂のようなものを使っており、キットのプラパーツの表面に、この離型剤が残っていることが多いのです。 この離型剤を残したままにしておくと、最悪の場合、塗料が弾かれて上手く塗装できなくなることがあります。 特に輸入キットは要注意です。
そこで、プラパーツ全てを洗浄します。 使用するのはごく普通の中性洗剤でOKです。
大物パーツは洗面器でジャブジャブ、小物パーツは「道具編」でご紹介した「茶こし」に入れてジャブジャブと洗い、最後に水ですすいで、タオルの上に広げて乾燥させます。(天気がいいからと言って屋外で乾かすのは危険です。「風」で飛ばされることがありますからね)
7.パーツの塗装
塗装色毎のパーツ分別は終わっているので、ドンドン塗装していきます。(詳しくは塗装編を参照)
塗装、乾燥の終わったパーツは、今度は場所(コックピット、主脚、エンジン回り・・・など)毎に分別します。
8.組み立て
インストをよく見て、組立て手順やブロック割りを考えながら組み立てに掛かります。
・仮組みと調整の大切さ
ここでもいきなり接着剤を付けるのではなく、必ず仮組みをして、パーツの合いを調整してから接着します。
隙間や段差は必ず原因がありますから、原因を見つけて、どこをどう調整すれば上手くいくかを考えます。
調整の方法は削る、何か(プラ板など)を挟んで持ち上げる、ずらす又は、埋める、などです。
削る時はいきなりガシガシ削らずに様子を見ながら、仮組→削りを繰り返して調整します。
・調整しきれない場合
それでもどうしても修正しきれない場合はパテの御厄介になります。(パテの使い方は「道具 組み立て編」に書いていますので、そちらを見て下さい)
また、パテを使う場所はできるだけ目立たない場所にします。 例えば主翼の付け根の合いが悪い場合、上面の付け根よりも下面の方が目立たないので、上面で合わせて、下面で泣くという妥協もありです。
・補強
プラが薄いとか、柔らかい、荷重が掛かる割に接着面が狭いというような場合には要所に補強を入れる場合があります。
下の写真は1/72のB-17で主翼の強度に不安を感じたので、ランナーのかなり太いもので主翼内部に補強を入れた例です。 これで捻れや経年変化による主翼の垂れ下がりの心配がなくなります。
この他にも飛行機の胴体の左右の貼り合わせ部分や大型機の主翼の付け根、艦船モデルの船体(ハル)の補強 などが代表例です。
・接着
パーツの調整などが完了したらいよいよ「接着」です。
接着面が広くて、強度が必要なところはスチロール系の粘度が高い接着剤を丁寧に塗り拡げてしっかりと接着します。 ある程度乾きかけたところで溶剤系(流し込みタイプ)の接着剤を流し込む方法もあります。 飛行機の主翼や尾翼の付け根などは大抵この方法で接着します。
飛行機の胴体の左右の貼り合わせのように、接着面が狭くて長いような場合は、まず接着剤なしで貼り合わせて、カッターの刃などの薄いものを間に挟み、ほんの少し隙間を開けた状態で流し込み接着剤を点付けします。 そうすると毛管現象で接着剤が前後に拡がっていくので、その瞬間に挟んであったものを抜いてピタっと貼り合わせます。 そうすると接着剤がほんの少しはみ出して帯状に盛り上がると思いますが、これには絶対に触らずに乾燥させます。 乾燥後にこの僅かな盛り上がりをカッターで削り落とせば、継ぎ目が綺麗に埋まっています。
この貼り合わせの瞬間でもうひとつ大事なことは段差を作らないことです。
方法は2つあります。
一つ目は補強もかねて、予め裏から短冊状の細い糊代=段差防止板を当てておくことです。
もうひとつは接着した瞬間に段差が無いように微調整し、マスキングテープを巻いて面一にすることです。
どちらの方法を取るかはキットの状況(プラの厚さ、堅さ、パーツの大きさなど)や好みによって決めていただければ良いと思います。
接着が済んだところは全て接着部分が動いたり、狂ったりしないよう、乾燥するまで固定しておくことが重要です。
マスキングテープ、クランプ、洗濯バサミなどを駆使して、場合によっては専用の治具を自作して固定します。
下の2枚の写真は1/72のB-17の主翼周りを固定している様子です。 この状態で1~2時間放置します。
飛行機の胴体などを貼り合わせる時に注意しなければならないことが2つあります。
ひとつは胴体の中に組み込むパーツに漏れが無いかどうかの点検。
もうひとつは胴体内部にほこりやゴミを残さないことです。(マスキングの剥がし忘れにも要注意!)
どちらも、後で気付いても手遅れですから入念にチェックしてください。
私の失敗例としては、胴体内部に残っていた埃(ケズリかす?)が完成後にコックピットのキャノピーのクリアパーツの内側に張り付いてしまったことがあります。
アンテナ支柱や機銃、ピトー管、脚、プロペラなど破損しやすいパーツは無理に取り付けず、塗装が終わった後(トップコートを吹く前あたり)で取り付けても良いです。
9.接着部分の仕上げ
接着部分が全て乾燥したら、接着の弱い個所がないかどうか点検した上で、接着面の仕上げを行います。
・残念ながら接着部分にできてしまった段差や隙間の補修
小さなか隙間なら溶きパテを塗りこめばOKです。
大きな隙間はプラ材を埋め込むか、粘度の高いパテを充填するしかありません。
大きな段差は残念ながら削るか、パテで盛り上げるしかありません。
・接着剤のはみ出しの除去
これはカッターの刃を立ててカンナのように削り落せば綺麗になります。
したの写真の黒っぽく見えるところが接着のはみ出しを削った跡です。
・接着によって消えてしまった筋彫りやリベットの復活
接着剤のはみ出しなどによって部分的に筋彫りやリベットが消えてしまう場合があるので、そういう所がないかどうかを点検し、あればカルコ等で復活しておきます。
ここまでで組み立ては殆ど完了です。
この後は「塗装とマーキング編」で続けますので、そちらをご覧ください。