万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

財政出動を否定すると大恐慌になる?

2009年02月26日 15時54分01秒 | 国際経済
民主党で大恐慌?:若田部昌澄(早稲田大学教授)(Voice) - goo ニュース
 1931年のマクドナルド内閣による金本位制の停止は、イギリスを大恐慌から救ったのでしょうか。確かに、金為替本位体制にあっては、政府の金融政策や対外通貨政策の手足は縛られていますので、柔軟、かつ、機動的な政策を繰り出すことはできません。しかしながら、本当のところは、金本位制からの離脱による自由度のアップは、自由貿易の旗手であったイギリスを、ブロック経済にむかわせてしまったと思うのです。

 管理通貨制度に移行しますと、自国通貨の切り下げは簡単に行うことができるようになります。つまり、政府は、輸出に有利なように自国通貨の相場を為替操作する手段を手にしたのです。また、翌年、カナダのオタワで開催された連邦経済会議では、英連邦諸国間における特恵関税制度の導入が決定され、経済ブロック化の路線が選択されました。こうして、広大な英連邦を背景に、イギリスは、保護主義による景気回復に突き進んでいったのです。もちろん、当時の世界情勢を考えますと、ブロック経済化の原因はイギリスの政策転換のみにあるわけではなく、ドイツでは既に管理通貨制度に移っていたという現実があります。

 現在の政府ははるかに多様な政策手段を持ちますし、ブロック経済の枠組みとなる植民地体制は既に崩壊しています。このことを考慮しますと、30年代の状況から現在の政策選択を判断することには、いささか無理がありそうです。また、戦後に経験したケインズ主義政策による長期の経済後退は、財政出動政策の有効性に疑問符を付けています。はたして、財政出動の否定=大恐慌となるのか、冷静に考えてみる必要があるように思うのです。

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コメント (6)
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