万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

クルーグマン博士の説は政府紙幣の根拠になる?

2009年02月19日 15時43分47秒 | 国際経済
ニュースを斬る 禁断のマネー増発、挑む価値あり GDPマイナス12%はこれで克服する(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 政府発行紙幣という奇策は、大変に魅力があるらしく、消えては浮かびを繰り返しているように見えます。ところで、この案を支持する根拠として、ノーベル賞受賞者であるクルーグマン博士の「ベビーシッター協同組合」の説が引き合いに出されているようです。

 クルーグマン博士は、ベビーシッター協同組合の危機と克服を、以下のように説明しています。

”ベビーシッター協同組合では、最初に、全会員に対して同じ枚数のクーポンを配られました。この組合の基本的な仕組みは、会員が、他の会員にサービスを行った時にはクーポンを受取り、自分がサービスを受ける時には、クーポンを払うというものです。ところが、時間が経つにつれてクーポンが不足するようになり、会員は外出を控えるようになってしまいました。そこで組合は、この危機を乗り越えるためにクーポンを増刷し、各会員に配ったることにしました。”

 ”クーポンの増刷で危機を乗り越えた”という結末が、政府紙幣の根拠となります。しかしながら、この説明には、一つ、大きな見落としがあるように思えるのです。博士は、クーポンが足りなくなった理由を詳しく述べていないそうなのですが、おそらく、各会員がクーポン券を自宅にため込んでしまったことが原因と推測できます。そうして、このことから、このお話には、何故にか、金融機能が抜け落ちていることに気付かされるのです。つまり、もし会員が、クーポンを自宅にため込むのではなく、”クーポン銀行”を設立し、そこに預けていれば、クーポンの不足は起きなかった可能性があるのです。

 このように考えますと、政府紙幣の発行は、やはり禁じ手のように思えるのです。

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