万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

民間金融機関が郵貯になる日

2009年02月11日 14時29分14秒 | 日本政治
 郵政民営化を支持する根拠として、しばしば指摘されてきたのは、国民の郵便局への預金が、長きにわたって財政投融資制度などを通して国に流れ、国家の放漫財政を支えてきたということでした。しかしながら、今日心配されているのは、むしろ、民間金融機関が郵貯化することではないか、と思うのです。

 バブル崩壊以降、邦銀が、大量の国債を購入してきたことはよく知られており、国民の預金の大半は、既に国債と化しているのです。このことは、民間への資金の流れが減少することに加えて、金融機関の役割の自己否定をも意味しています。何故ならば、銀行は、国民から預かった預金で国債を買い、政府へ資金を供給するだけの役割しか果たさないことになるからです(収益は国債の利払い?)。これでは、郵貯の役割と同じです(なお、最近の新聞によりますと、ゆうちょ銀行の方が、民間貸し出しを検討し始めたようです・・・)。現在、国家レベルで800兆円以上の赤字国債を発行していることを考えますと、国民の貯蓄率の高さは、民間の経済活動を必ずしも支えていない可能性があるのです。

 金融危機対策として、大規模な財政出動を求める声が聞こえますが、国債発行額の増加は、民間の金融機関さえも郵貯化してしまうかもしれません。一方、民間の金融機関が国債入札を停止しますと、今度は、政府の側で財政危機が発生してしましうのですから、定額給付金を実施する余裕などないのではないか、とも思うのです。

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