万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国人トップで国際機関が被るリスク予測

2010年12月12日 15時44分58秒 | 国際政治
中国、日本人トップ選出に反対 国際機関人事で(共同通信) - goo ニュース
 ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏が政治犯として投獄された理由は、氏が起草した「08憲章」に、立憲主義や権力分立といった、近代以降に一般化した統治機構の原則が含まれていたからです。これらの原則を真っ向から否定した中国出身の人物が、国際機関のトップに付くとなりますと、権力の濫用と組織腐敗のリスクを懸念せざるを得ません。

 報道によりますと、ASEAN+3を枠組として経済監視機関を設ける構想があり、中国は、そのトップに日本人が就任することに反対しているそうです。「AMRO」と呼ばれるこの機関は、おそらく、各国の自由化措置が条約に定められた通りに進展しているのか、定期的にチェックする機関なのでしょう。しかしながら、そもそも、条約に誠実に従って約束事を実行することも、権力を外部からチェックする機能、すなわち、権力分立によるチェック・アンド・バランスも理解していない中国の人々に、この中立・公平性が重んじられる職務が務まるとは思えません。中国の国益のためにこの権限が政治的に利用されるかもしれませんし、あるいは、賄賂次第では、いくらでも検査を甘くするかもしれません。

 加盟国間の政治的な価値観の違いは、国際機関の設計にも、また、その運営にも影響を与えます。中国が主導権を握る国際機関は、中国の特異な政治文化によって侵食されるリスクを抱え込んでいると思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする