万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日中首脳会談の危険性-予測されるマイナス効果

2014年11月06日 15時34分50秒 | アジア
日中首脳会談 実現は予断許さない状況(NHKニュース&スポーツ) - goo ニュース
 昨日開票されたアメリカの議会下院選挙では、共和党が歴史的な勝利を納め、民主党オバマ政権の行く先には暗雲が垂れ込めております。オバマ政権の求心力低下を察知してか、中国は、日本国に対して日中首脳会談の開催に前向きなシグナルを送ってきているようです。

 ケリー国務長官をはじめ、オバマ政権内部には親中派の政治家が顔を揃えており、近年、頓に顕著となった中国の横暴な行動も、アメリカの対中宥和外交が引き起こしたとも指摘されております。今後、反中派の多い共和党の影響力が増すとすれば、対中政策もまた強硬路線に転換される可能性も高く、中国が、日米両国による締め付けの強化とアジアにおける孤立化を怖れても不思議はありません。そこで、先手を打って、日中首脳会談を実現させることで、まずは対日関係を改善させ、アメリカを牽制しようとしたとも考えられます。しかしながら、現状を見ますと、日中首脳会談の開催は、日本国にとりましては、マイナス効果しかないのではないかと思うのです。第一に、確かに日中関係の改善は、オバマ政権の要望ではありましたが、アメリカの政治が不透明性を増す中で、急速に日中関係を改善させることは、安全保障分野において、方向性を誤る可能性があります(将来的な日米離反や中国包囲網の崩壊?)。第2に、専制国家化を強めている中国に対する迂闊な譲歩は、自らの首を絞めることになりかねません。経済分野であっても、日中関係の強化は、投資や技術の提供を通した中国のさらなる”凶暴化”の手助けともなります。第3に、香港における民主派デモの発生が示唆するように、中国は、周辺国の民主主義体制に対して否定的であり、内部的な破壊工作にも熱心です。今ここで、政府が音頭をとって日中関係を改善させますと、”日中友好”の名の下で、日本国内で”中国化”が進行する可能性があります(現に、NHKにこの傾向が顕著に見られる…)。さらに、現在、小笠原諸島近海では、200隻を越える中国のサンゴ密漁船団が出現しており、日本国政府は対策に苦慮しております。窃盗団を黙認するような国の首脳と儀礼的な会談を開催しながら、何らの要求もなさないとなりますと、国内のみならず国際社会からも、日本国政府は厳しい批判を受ける可能性があります。無法国家をのさばらせた国として…。

 本来、外交の目的の一つは、国家間の対立要因となっている諸問題について解決に向けて話し合うことにあり、首脳会談は、手段の一つに過ぎません。ところが、日中首脳会談を見ておりますと、手段であるべき首脳会談の開催そのものが目的化しているのです(条件付き首脳会談ももっての他…)。中国からの日中首脳会談のお誘いは、抗議の意味をも込めて、日本側から断って然るべきと思うのです。

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コメント (2)
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