万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

大統領令による移民改革は反感を買うのでは?

2014年11月22日 15時29分48秒 | アメリカ
オバマ氏強権発動へ 大統領令で移民改革踏み切ると声明(産経新聞) - goo ニュース
 先の下院議会選挙において、共和党が圧倒的な勝利を納めた要因として、アンチ移民政策が指摘されております。民主党が掲げてきた移民改革法案も成立の見込みが薄くなったのですが、この窮地を脱するべく、オバマ大統領は、大統領令によって移民改革を実現する方向に舵を切ったようです。

 しかしながら、移民の是非は、先の記事でも指摘しましたたように、国民統合や社会統合の問題領域にあることを考えますと、大統領令による改革という方法は、国民から反感を買いやすいのではないかと思うのです。何故ならば、国や社会に新しいメンバーを迎えることは、移民する側の個人的、かつ、一方的な権利の行使ではなく、受け入れ側の国民全員の問題であり、後者の合意こそ最も尊重すべきであるからです。移民問題が社会問題として深刻化した理由も、一部の人々、政党、特定の利益団体、並びに、移民事業者…の都合のみで移民を受け入れてきたことにあり(あるいは、一方的な押し寄せ…)、全体としてのコンセンサスを欠いてきたことに求めることができます。況してや、救済の対象が密入国者となりますと、正式な手続きを経て制定された移民法に違反しているのですから、国民の反発も一層強くなります。国民のコンセンサスを欠きますと、国家や社会の崩壊を怖れる”危機感”と身勝手な移民に対する”迷惑感”だけが募ることになるのではないでしょうか。

 アメリカの政治制度には、国民投票の制度は設けられていないのですが、移民政策の決定方法として最も相応しいのは、受け入れ側のメンバー全員に是非を問う方法です。先の議会選挙が国民の民主党移民政策に対するNOの意思表示であるならば、やはり、大統領が命令一つで移民の制度改革を図る方法は避けるべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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