皆さんは自分の描いた絵に不満があり、描き直したことがありませんか。僕はたびたびあります。でも、そのほとんどは気になった部分は直っても、前作よりも勢いがなく迫力の乏しい作品になってしまうのです。
何故でしょう。
いろいろあるでしょうが、僕はモチベーションの変化が一番大きいと思います。最初の作品を手がけた時の「これを描きたい。難しそうだけど描いてやろう」といった動機が、描き直しの時になると失せているのです。「描きたい」よりも「失敗作だから描き直さねば」といった動機になっているのです。
だから、初めの作品で気になった部分の形や色を描き直すことに傾注する一方で、気にならなかったところは軽く仕上げてしまいがちなのです。
1本の木でも、最初は現物の木肌の形、色、陰などを思い出したり、写真を克明に見てデッサンしたり彩色したのに、2作目となると直す部分以外は前作を模写するように進めている自分に気づくことがあります。
その結果、作品は安定したように見えても、面白さがなくなるのでしょう。
だから僕は、公募展用に40号~50号の作品を描くために、8号~10号で下絵を描く場合でも、できるだけ構図や色などの注意点をメモ的に描くだけにしています。
ここに掲載したのは最近、描き直しを試みた絵です。㊤が描き直した絵、㊦が最初の絵です。
昨年秋のスケッチ会で宿泊した奥三河の湯谷温泉のホテルで見て描いた絵(昨年11月16日更新のブログ「トビの乱舞」)を描き直してみました。
失敗を避けるため、大きさを前作が10号だったのを20号にしました。構図ではトビを2羽増やしました。描いている間も、ホテルの対岸から空中のエサを目掛け100羽近いトビの群れが飛んできて、目前でバサッ、バサッと激しい羽音をたてながら争う迫力に、思わず頭に手をやってしゃがみ込みそうになった光景を思い起こしながら筆を進めました。
前作にとらわれないように、前作を見ないで描くようにもしてみました。
題名も「肉片をめぐるトンビの争い」と変えました。トビをトンビとしたのは、子供のころから歌などで親しみのある呼び名だからです。争いから逃げるように飛ぶ右下のトンビの口には、奪い取った肉片を咥えさせました。逃げているのではない、というわけです。
描き直しが成功したかどうか。一部の羽が、最初の作品の方が伸びのびしているところもあるようです。でも、全体的に迫力は衰えていない、と自画自賛し、今度の教室展に出す予定です。
※教室展「第15回風景水彩画KAZEの会作品展」は、2月4日(火)から9日(日)まで、名古屋・栄の中区役所7階にある名古屋市民ギャラリー第2展示室で開きます。ご高覧、お待ちしています。