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愛知県内の伝統野菜として生産されている35品種を、水彩画で描いた個展を名古屋市民ギャラリー栄で見てきました。
不透明の水彩画絵具4色を使って、畑から抜き取ったままの瑞々しい姿を鮮やかに描いています。9日(日)まで。
佐藤昌宏さん(64)。現在も会社勤めをしている佐藤さんが絵を始めたのはもう30年も前。図書館で「キミ子方式」の本に出会い、見よう見まねで描くうち「自分でもこんなに美しく描けるのだ」と自信ができ、通信講座を受けて講師の資格も取ったそうです。
キミ子方式とは、東京でアートスクールを開いている松本キミ子さんが指導する描き方。
●使う絵具は赤・青・黄の三原色と白だけ
●下書きや輪郭線は描かない
●描き始めの1点から、隣へと広げていく
などです。
あいちの伝統野菜を絵の題材に選んだのは、先輩講師の個展「大和伝統野菜」を見たことから。
調べると、愛知県も「あいち伝統野菜35品種」を選定しているのを知り、自分も挑戦しました。
それから4年。生産農家を1軒、1軒訪ね歩き、畑を案内してもらいました。
「絵に描いてもらうのだから」と野菜をきれいに洗って、枯れた葉や根も取って待っていてくれる農家もあり、恐縮しつつ趣旨を説明して畑にもう一度出かけてもらったこともあったそうです。
「作品を生産農家へ持参して見てもらったところ、『こんなのではなかったはず・・・』と言われことがありました」
「実は、この野菜をもらったあと、用事があって2~3日、置いてあったので萎れていたのです。改めて新しい野菜で書き直しましたが、生産農家の目の確かさ、生産物への責任感に驚きました」
35品種の中には、なかなか見つからなかった品種もいくつかありました。
最後まで分からなかったのは「初代渥美アールスメロン」。やむなく改良品種で乗り切ることも考え、メロン農園の社長から改良メロンを根っこのままもらって帰ろうとした時でした。やりとりを聞いていた農園のパートさんから「私の自宅で、少しですがお探しのメロンを栽培していますよ」との言葉。「飛びがるほどのうれしさでした」と佐藤さん。
キミ子方式では「描けるようになったら誰かに教えること」になっています。佐藤さんの場合は、絵とは無縁だった母に教えました。86歳の母は今や教える立場だそうです。
このあとの絵の題材は何ですか、の質問に帰ってきた佐藤さんの答えに驚きました。
「考えていません。それより、ここに飾ってある絵を生産農家さんに返して歩かねばなりません。僕は描かせてもらったら、その絵をお礼としてお渡ししています。だから、今回の個展もお借りして開くことができたものですから」
「水彩画キミ子方式なごや」の教室は、西区の幅下コミュニティーセンター、市政資料館、それに岐阜教室として武芸川生涯学習センターなどで開かれているそうです。
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