美術館のギャラリーでは、芸術系の学部・学科のある大学や高校の「卒業記念展」が真っ盛りです。若さと持てる力をぶっつけ、今後の可能性を秘めた学びの成果。こちらが年をとったせいもあるでしょうが、彼らのこれからに素直に声援を送りたくなります。
鑑賞に出かけた名古屋の愛知県美術館での「第21回名古屋造形大学卒展」(2月18日~23日)で、そんな思いをした作品のひとつを紹介します。
「ぜひ、こちらも見てください」。展示コーナーを渡り歩く途中で、ひとりの男子学生、鈴木優作さん(22)から声が掛かりました。
展示コーナーとは少し離れてある大きな窓ガラスに仕切られたスペースを見ると、瓶(かめ)というべきか壺というべきか、大小24個の作品が並んでいました。作品は色付けされ、絵や模様が描かれています。
――何でできているのですか?
「触ってみてください」の言葉に、触ると同時に指で弾いてみました。高い音が響きます。
――金属製ですか?
「いえ、陶製です。土器を素焼きした後、銅とマンガンの釉薬をかけて、陶器用の絵の具で色を付け、絵や模様を描いて焼きました」
――たくさんありますね。時間がかかったでしょう。
「4ヶ月ぐらいです。作品はもっとありますが、このスペースを何度も見に来て、ガラスの向こうから見てもらうには、このくらいの数と並べ方がいいだろうと」
――作品に味のある絵を描いていますね
「あの人間の絵は、電車の中などでいろんな人を見ていたら、あのようになってしまいました。絵も描きまくっています」
――他の作品を見ることもしますか?
「いえ、他の人の作品は見ません。僕は自分の作品をつくりたいから」
――なるほど。でも僕が以前、超売れっ子になっていた作家に同じ質問をしたら、彼は『見ています。何故なら世の中にはすごい能力のある人がいっぱいる。その人が僕と同じようなことを考えていたら、自分は時代遅れになってしまうから』と答えましたよ。
僕は絵もそうですが、陶芸となると「ど」のつく素人。そんな僕が、このようなやりとりを続けていて驚いたのは、次の質問をした時でした。
――これからは「あいちトリエンナーレ」のような高いレベルの作品展も目指されるわけですか?
「いや、僕が目指しているのは世界です。世界で認めてもらえなければ、陶芸を手がけた意味がないと思っています」
「もちろん、死にものぐるいでやります。これまでも創作がしんどい、なんて思ったことはありません。夢中で楽しいです」
「卒業後は、多治見の陶芸工房でアシスタントとして仕事ができるようになりました。時給制です。一生懸命働いて、勉強します」
「海外? いずれ勉強に出てみたいですね。世界が目標ですから」
目を輝かせ、学校に泊まり込みで創作に打ち込んだ日々を振り返るとともに、これからの大きな夢を語りながら、名刺大の用紙に自分の名前と顔を描いてくれた鈴木さん。頑張ってください。こちらも楽しくなりました。