Billy Mitchell / A Little Juicy ( 米 Smash BL 7666 )
ビリー・ミッチェルのテナーの音は私の好みなので彼が入っている演奏を聴くのは好きなのだが、如何せんレコードの数が少ない。 ビッグバンドでの
活動がメインだったせいもあったのだろうけど、リーダー作の少なさは致命傷で、まとまってその演奏が聴ける作品が少ないのだから評価しようがない。
他人名義のアルバムの中で彼の演奏が出てくるとその良さに驚かされて彼の作品を探すことになるわけだけど、リーダー作がほとんど残っていないことが
わかってガッカリする。
そんな中でMercuryの傍系であるスマッシュ・レーベルに残された貴重なリーダー作の1枚がこれになるわけだが、サド・ジョーンズを迎えて彼の自作曲
ばかりを演奏しているから、ミッチェルのリーダー作という感じがしない。 演奏パートもサドの方が多いから、なおさらそう感じてしまう。
一方、サド・ジョーンズ自身もトランペット奏者としては地味な感じだから、このアルバムの地味さはなおさら拍車がかかる。
それでもリチャード・ワイアンドやケニー・バレルらバックの演奏がしっかりしているおかげで、演奏全体はとても聴き応えがある。 両面通して聴くと、
いい演奏だったなという印象が残るから不思議だ。 ユニークな作風のサド・ジョーンズの楽曲の影響もあって、ありふれたセッションという退屈さとも
無縁だ。 聴けば聴くほど、いい演奏じゃないかという印象は確かなものになっていく。 特に、アルバム最後に置かれた "Kids Are Pretty People" の
慈愛に満ちたおだやかな表情は素晴らしい。
ビリー・ミッチェルの演奏を聴くという意味では喰い足りない感はあるけれど、それでも音楽としての満足感は十分残る。 マーキュリー傍系なので
プレス品質も良く音質も良好だ。 手持ちの盤はモノラルだが、録音時期を考えるとステレオ録音だったはずだから、ステレオプレスも聴いてみたい。
おそらくそちらのほうが音質はさらにいいだろうと思う。