【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

旅に結ぶ夢

2012-09-08 17:51:17 | A・クリスティーの館






「列車って無情なものだと思うわ。
そうお思いにならない、ポアロさん?
乗客が死のうが、殺されようが、
平然と走り続けているんですもの」
(中略)
「ええ、分かりますよ。
人生も列車のようなものです、マドモアゼル。
何が起ころうと止まらずに続いて行くのです。
又それでいいのですよ」
「なぜ?」
「列車はついには 旅路の果て に達します。
お国のことわざにもありましょう、マドモアゼル?」
「“旅路の果てに恋が待つ?”」
レノックスが笑った。         
        【A・クリスティー作 「ブルートレイン殺人事件」】


   今日の天気は曇り、時々雨。
  雨こそ降ってはいないものの、少々、不安定な天気になっています。

   おまけにジト~ッと纏わりつくような蒸し暑さ。
  気温はそれ程高くないのですが・・。






   さて、つい2、3日前になりますが、
  A・クリスティー著 「ブルートレイン殺人事件」、読了。

   読み始めたのは、もう随分前になりますが、
  暫(しばら)く放ったらかし。

   その後、再び読み始めたのですが、もう夢中。
  それからは、一気に読み進めました。

   A・クリスティーですから勿論、ミステリー。(ポアロ物) 
  でも、何だかいつもと様相が違います。
  文中の会話や描写に思わず引き付けられ・・。

   もう一方の ミス・マープル物 では、さすがに女性の視点から
  編物、料理、植物(ハーブ)など、取り上げている事が多く、
  興味を持っていたものですが、ポアロ物にまでとは。兎にも角にも嬉しい誤算。

   ところで 「旅に結ぶ夢」 と言えば、やはり列車の旅でしょうか。
  その中でも 「ブルートレイン」 は、格別ですね。
  今では随分、少なくなりましたが・・。

   そして列車と言えば、何と言っても今日のA・クリスティーですね。
  「オリエント急行殺人事件」 「パディントン発4時50分」 など、
  多くの作品があります。

   この作品も、リヴィエラ行き豪華特急ブルートレインの中で
  殺人事件が起こります。ルビーの宝石も絡んで。

   相も変わらず意外な犯人。ようするに1番犯人らしくない人間。
  そういう意味で目星を付けていた人間が犯人でした。

   それにしてもこの作品ばかりは、殺人事件も然(さ)る事ながら、
  同時に 「恋愛講座」 も開設しているかのよう。
  上記を初めとしてポアロの含蓄(がんちく)ある言葉が響きます。

   紐解けば、この作品を書いた時のクリスティー自身が、
  人生の1番辛い時期であったとか。

   そんな事は微塵(みじん)も感じさせない軽快な文章ですが、
  この作品の至る所に散りばめられている言葉は、
  女史自身の心の声かも知れません。
  

「私はこれでも様々な経験をして来た男です。
人生については2つの事が言えます。
1つは良い男が良くない女に対する愛ゆえに
やはりたまさか身を滅ぼすという事」
キャサリンはハッとしたように顔を上げた。
(中略)
「彼らには、女心に訴える資質があるのです ――
無軌道さ、大胆さ、勇気」
(中略)
「泥棒を愛する事は出来るでしょう。
しかし殺人者を愛してはいけませんな」
          【A・クリスティー著 「ブルートレイン殺人事件」】
  

金色の午後はミステリー

2012-08-13 18:47:58 | A・クリスティーの館


【金色の百合】








ある眠気を誘うような午後、
ミス・コーネリアが小さな家に
しずしずと訪れた。
湾は暑い8月の海のさらしたような薄青い
色をしており、アンの庭木戸に咲いている
鬼百合は 金を溶かしたような
8月の日光を満たすべく
威厳のある花のさかずきを差し伸ばしていた。              
                【「アンの夢の家」 第37章】


   


   まるでバケツの底を
  ひっくり返したような雨と雷で目覚めた朝。

   エアコンの効いた室内から1歩廊下に出た途端に、
  ムッとした熱気。朝からこの不快さは一体、何なのでしょう。

   激しい雨は、どのくらい続いたでしょう。
  (あまり長い時間ではなかったように思いますが)
  その後、小康状態。お昼前には晴れ渡りました。
  ただ湿度が高く、蒸し風呂状態です。

   さて、17日間に渡って繰り広げられた、
  ロンドンオリンピックもいよいよ
  フィナーレを迎えましたね。熱戦の数々。

   改めて選手の皆様には 「感動を有り難う」
  と、お礼を言いたいです。














   



   ところで、オリンピック開催中は、
  どうしても夜更かしが続き、なぜか心も浮かれがち。

   当然の事ながら、じっくり落ち着いて
  本など読む気にはなれません。

   オリンピックも終わった事ですし・・
  と取り出したのは、これも久し振りアガサ・クリスティーの本。

   読みかけの松本清張著 「昭和史発掘」 は、
  ひとまず置いといて。

   それにしても、どこまでイギリスに浸ればいいのでしょう。
  でも、好きなものは仕方ありませんね。

   その題名は、「ブルートレイン殺人事件」。ポアロものです。
  リヴィエラ行き(イタリア北西部)の豪華特急、
  ブルートレイン内の密室殺人。
  まだ読み始めたばかりですが、ワクワクです。

   今日は朝が遅かったもので、お昼? 
  は簡単にエッグマフィンを。
  読書は勿論、食事が終わってから珈琲と共に。

   そうそう、今日の引用文ではありませんが、「金色の百合」。
  まるで、オリンピックの金メダルのように今日裏庭に咲きました。
  【去年】 より2日早く。金色になったのは、まさに太陽の魔法です。

時空列車に揺られて~晩餐会の13人

2012-02-29 16:16:36 | A・クリスティーの館











「モンタギューコーナー卿は、殺人の
あった夜、晩餐会でレイディ・エッジウェアと
交わした会話に触れる。
こんなのを受け答えるのは造作ない。
しかし、その後で、
応報天罰の女神ネメシース”が、彼女に襲いかかる。
『パリスの審判』 という言葉が言われた時、
無知な彼女は、そのパリスを、
自分の知っている唯一のパリスと取り違える。
―― ファッションと虚飾のパリと!
        【A・クリスティー著 「エッジウェア卿殺人事件」】


   




   予報通り昨晩遅くから降り出した雨。
  朝には上がるとの事でしたが、
  起床時には、まだ若干残っていました。
  それでも午前8時頃には完全に上がったようです。

   そう言えば昨夜、俄かに“暖かい・・”
  と感じたのは、雨が降り出す頃からだったでしょうか・・。

   これからは一雨、一雨・・春が近付くのは間違いないようです。
  明日からは3月ですものね。今では青空も戻り、暖かくなりました。 









   



   さて、一昨日の今日ですが、A・クリスティー作、
  「エッジウェア卿殺人事件」 読了。
  
   この物語は、エッジウェア卿夫人でもあり、美しい女優でもある、
  ジェーン・ウィルキンスンと、その彼女の物真似を得意とする、
  カーロッタ・アダムスの公演をポアロが観劇する場面から始まります。

   あろう事かその晩、物真似された当の本人、
  ジェーン・ウィルキンスンから離婚に応じない夫を
  説得してくれるよう依頼されたポアロ。

   そのエッジウェア卿が殺害され、
  当然妻のジェーン・ウィルキンスンに容疑がかかります。

   しかし彼女には晩餐会に出席したという鉄壁のアリバイが・・。
  しかもその出席者の人数は、13人。

   13という数字は、キリスト教国では
  忌み嫌われている数字ですものね。

   (13という数字には 「裏切り者のユダ」(注:1)
  の刻印が押されてしまったようです)

   ここでも、その不吉な13人目の出席者は、
  真っ先に退場して行きました。
  
   ここから例の如く犯人らしい人物が現れては消え・・。
  先日も記しましたが、ポアロの灰色の脳細胞も
  珍しく湿りがちだったものです。

   でも、今回ばかりは私は犯人をピタリと当てました。
  ただ単なる勘で、ポアロのように筋道立てて
  解明など出来ませんけれど。

   クリスティー物は、登場人物の多さに翻弄(ほんろう)されます。
  でも、ほんの少しですが、そのパターンが
  分かって来たような気がします。

   それにしても 『パリスの審判』。(注:2)
  結局、これが運命の分かれ道でしたね。
  彼女は、こんな風に答えてしまったのですから。








   



   さて、ゴトゴト揺られていましたが・・
  列車は漸(ようや)く目的地に着いたようです。

   長時間の列車。さすがに疲れて来ました。
  そろそろ網棚から荷物を下ろさなければなりません。 
  
   そうそう読書に使った、エリスの鼻眼鏡も、
  忘れずにしまわなくては・・。

   (勿論、私は使用しません。
  この鼻眼鏡、事件のキーポイントにもなりました)

   そう言えば、この丸い鼻眼鏡、
  ジェムシーナ小母さん も、 ミス・マープル も似合いますこと!


 
 

   注:1  キリストの最後の晩餐会の12人の使徒と、
       師を裏切って敵方に売るために、1番先に席を
       立って出て行ったのが、「イスカリオテのユダ」。

   注:2  ギリシャ神話。
       争いの女神が最上の美女に与えると言って
       投げたリンゴを3女神が争い、その審判役を
       トロイの王子パリスが務め、アフロディテに与え、
       その報復にギリシャからヘレネを連れ帰る。
       これがトロイ戦争の発端となる。

時空列車に揺られて

2012-02-27 15:45:15 | A・クリスティーの館



【アンティークな銅のポット】
 


空には一点の雲もなく、
石を投げれば石の当たる、
際どい音が響いて来そうな硬い青空である。
       【三島由紀夫著 「暁の寺」~「豊饒の海」 第3巻】


   一旦、日の出を見たものの、
  今日は時折、風花の舞う
  寒い朝となりました。

   ただ如露の水の凍結も
  ありませんし、一時の
  あの寒さではありません。
  そんな時・・。
  
   南側の窓から見る空は、
  今日も真珠色・・
  
   うんざりしたものですが、
  ふと明り取りの窓から見た空は真っ青。
  
   慌てて庭に出てみましたら・・。
  西と北の空は雲が抜けて一面の青空。そう、その青空。

   吉屋信子が “陶器の青み” なら、今日の三島由紀夫は、
  “石の当たる際どい音が響いて・・” とあります。
  期せずして2人の著名な作家が青空は、硬質なものだと。
  
   季節にもよるかと思いますが、冷たく凛とした冬の青空は、
  鋭くて、私も同様な事を感じたものです。作家の感性を思います。

   真珠色だった南の空も、お昼過ぎには青空に。
  あの雲は一体、どこに行ったのでしょう。




   さて、今日は革のトランクを
  取り出しました。
  いつか映画で観たワンシーンを真似て。

   今日のトランクは、新しい物ですが、
  年代物の古いトランクも大好きなのです。

   ポーターに2、3個重ねたトランクを
  列車に運び込ませ、私は後からゆっくり
  長いスカートの裾をつまみ上げ、
  優雅に客車に乗り込みます。
  ~なんて。

   でも、A・クリスティーの世界なら、
  きっとこんな世界。

   それと言うのも今、読んでいる
  「エッジウェア卿殺人事件」。

   あら・・「オリエント急行殺人事件」
  の方が良かったですね。

   後もう少しで終わるのですが、
  今回ばかりはポアロの
  「灰色の脳細胞」 も珍しく湿りがち。

   いつもの事ながら・・犯人らしい人物は現れては消え・・。   
  勿論、今目を付けている人物はいます。でも単なる憶測では駄目ですね。
  きちんと解明出来ませんと。さて、さて・・?

途中下車は短編で

2012-01-08 17:01:01 | A・クリスティーの館






それは綺麗に艶出しした
マホガニーの 丸テーブル で、
真ん中には花瓶に入れた薔薇が飾ってあり、
真っ白な レース の花瓶敷きがピカピカした
テーブルの表面にしっとりとした感じで載っている。
(中略)
飲み残しの 珈琲カップ が3つ ――
ミルクなしが2つで、1つはミルクを入れてある。
3人の者は皆 葡萄酒 を飲んだらしく、
半分ほど入った瓶が、
真ん中の盛り皿の前に置いてある。(中略)
葉巻とシガレットの入ったべっ甲に銀の金具を
付けた箱が、開いたままテーブルに載っている。
            【A.クリスティー 「イタリア貴族殺害事件」】


   今日は雲1つない快晴の朝を迎えました。
  こんな空では、いつものように “刹那の空” に
  一喜一憂する事はありません。反面、一抹の淋しさも。

   でも心配する事はありませんね。冬の空ですもの。
  午前9時半頃には雲も。本当に降って湧いたような雲です。

   と言っても目の前の空だけ。
  振り返った西や北の空には、相変わらず何もありません。
  ~なんて。やはり相当、空に振り回されていますね。



【別角度から】


   さて、「A.クリスティーの館」 も久し振りになってしまいました。
  長編に飽きた時など、ちょっとした気分転換に短編はいいですね。
  
   特に推理小説のそれは私にとって欠かせません。
  そこには、短い中にもハッとするようなトリックが、
  あちこちに、それこそ宝石のように散りばめられていて。

   加えて、スピード感。
  そんな所が、途中下車してしまう理由かも知れません。

   尤も最近は、ほとんどと言っていいほど短編でお茶を濁している私ですが・・。
  そんなこんなで。今日の短編も相変わらず 「ポアロ登場」 より 「イタリア貴族殺害事件」 を。

   今回もポアロの “灰色の脳細胞” も冴え渡りますが、
  ここでも下記のような料理が事件の伏線に。
  
   そして上記の・・丸テーブルやレースといった、
  さり気ない部屋の描写にも推理小説の枠を越えて惹かれます。
  物騒な殺人事件ですが、視点を変えれば又楽し・・という事かも知れません。

   それにしてもこの小説は勿論、ポアロミス・マープル も飲むのは
  珈琲ばかり。どうやらイギリス人は紅茶だけ飲んでいるのではなさそうですね。
  
   そうそう今回の食事、 【前回】 と違い、毒の心配はありません。  
  どうぞ、安心してお召し上がり下さい。


【注 : 「ジュリエンヌ・スープ」 → 細かく刻んだ人参、葱等の澄ましスープ】 

太陽を追いかけて

2011-11-16 17:05:05 | A・クリスティーの館
 
【伸びた 「藜(アカザ)」 と 「紅葉(モミジ)」 のドッキング】


【すっかり葉を落とした 「藜」】





土曜の夕方、私達はグランド・メトロポリタンの
群れ集う浮き々した人々に混じって
食事をしていた。
猫も杓子しゃくしブライトン に集まって
いるような気がした。
衣裳は素晴らしいし、宝石も ――
これは趣味の良さよりは、
見栄みえで付ける事が良くあるものだが ――
なかなか豪華なものだった。
 【A・クリスティー 「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」 より】


   


   起床時の空は、雲の隙間から顔を出すというもの。
  鋭角的なその空は、冬が間近に迫っている事を思わせます。

   居間の気温も16.5度。今季、1番の寒さになっています。
  それでも家の中よりも日溜りは何倍も暖かく・・。
  そんなこんなで、今日のティータイムは戸外でという事に。







【英国の普段使いの皿 「ROIYAL TUDOR WARE」】


   さて、久し振りのA・クリスティーの館。
  今日は、イングランド南東部、イギリス海峡を望む町、
  ブライトンへお連れ致しましょう。

   そこがどんな所かは上記の文章からも想像出来ますね。
  今日も 『ポアロ登場』、クリスティー短編集から。
  戸外でのお茶の時は必ずと言っていい程、短編集がお供です。

   題名の通り、今回は殺人事件ではなく、宝石盗難事件です。
  これだって十分物騒ですけれど。でも何となく優雅?






   
   その宝石大好きなオパルセン夫人の大切な真珠の首飾りが盗まれます。
  しかもホテル部屋付きのメイドと小間使いが2人共、部屋にいますのに。

   となりますと、ポアロでなくても犯人は2人のうちのどちらか・・。
  程なく、警部がその首飾りを見つけて来て。
  事件はスピード解決。ポアロの面目は・・?

   まさか、そんな事はありませんね。
  ポアロの 「灰色の脳細胞」 が大活躍するのは、これから。
  案の定と言いますか・・いつものどんでん返しです。

   しかも事件解決のカギは、メイドとボーイが
  “掃除を怠けた事” と言いますから驚きます。
  神経質で清潔好きなポアロならではですね。

   最後に。今日のティータイムは、
  イギリスの大衆的な器です。(皿、珈琲カップ共)
  皿の絵柄は、イギリスらしい柄でよく見ますね。

   そうそう昨日も登場した塔のある絵皿は、「ナルミ製」 です。
  「h・Ogawa」 とサインが。小川博史でしょうか・・。

揺れる木洩れ日の中で・・

2011-09-11 16:53:16 | A・クリスティーの館














しかし、秋も美しかった。
暗青色の湾から吹く風や素晴らしい
仲秋名月 を楽しむ事が出来た。
窪地には抒情味豊かな 紫苑 が咲き、
りんごが鈴なりの果樹園からは
子供達の笑い声が響いて来た。
上グレンの山の牧場の夕べは澄み渡り、
銀色のいわし雲の空を黒い鳥が渡って行った。
日が短くになるにつれ、小さな灰色の霧が
砂丘を静かに越えて港に上って来た。
                【「炉辺荘のアン」 第11章】


   






   夏が戻って来て3日目。快晴。
  さすがに一昨日、昨日とエアコンのお世話に。勿論、今日も。

   とは言っても、あのまま秋に向かう筈もなく、
  そんな事は当然分かっていながら一旦、
  秋を体験した身体は、我慢を忘れてしまったようです。

   ところで昨夜のお月様の美しかったこと!
  明日(12日)が満月(十五夜)ですから、
  ほぼ真丸のお月様が輝いていました。
  
   しかも左手にお月様を見ながら眠りにつけるというおまけ付き。
  それも 「仲秋の名月」 を。明日も晴れて欲しいものです。




   さて、折に触れ
  お届けしている
  「藜(アカザ)」。

   ここに来て又々、
  その背丈を伸ばしたようです。

   テーブルの模様の隙間を縫って、
  伸びたものですが、それが丁度
  いい具合に支えになり、安心して
  成長して行ったのでしょう。

   どこまで伸びるか試してみたくて
  切らなかったのですが・・。

   しかしながら、
  これが思わぬ目隠し効果にも。

   いつの間にか鉢置き台と化して
  しまっていた、本来のテーブル。

   折しも台風のため、どけた鉢。
  土を雨が綺麗に洗ってくれたようで、
  ほとんど汚れもありません。

   そんなこんなで。今日は久し振りにこちらでお茶を。
  紅茶に昨日の藜や庭のハーブを混ぜました。
  そうそう生姜も。これならイケます。
  
   野村紅葉と藜の葉っぱが影絵模様となって、
  ゆらゆら揺れています。
  風もありますから思ったほど暑くありません。

   こんな時は、気楽に読めるクリスティーの短編がいいですね。
  その中の 「ヴェールをかけた女」、1編読了。
  
   日本ではあまり馴染みのない、顔にヴェールを掛けた美しい依頼人。
  それは、こんな風に始まります。








「そこの通りを、小説なんかに出て来る  
“深くヴェールを掛けた女”ってやつが歩いているぜ。
おや、段を上がって来る。(中略)  
面白い事が起こりそうだぞ。  
女もあんなに若くて綺麗な頃は、大事件でもない限り、  
顔にヴェールを掛けたりしないからな」
      【A・クリスティー 「ヴェールをかけた女」~「ポアロ登場」より】 


   



   事件解決のヒントは
  これは日本でもよく言われていましたが、最近はどうなのでしょう。








                            【A・クリスティー 「ヴェールをかけた女」】

困っている淑女

2011-07-27 15:55:55 | A・クリスティーの館



2人ともマナーが良く育ちの良さを思わせ、
優雅であった。
ミス・マープルが若い頃には、
今でこそすたれた言葉になっている “レディ” と
言われるような2人であった。
そして又、“落ちぶれたレディ” という
言葉もあった事を思い出した。
父親が彼女にこう言っていた ――
「いいかねジェーン、落ちぶれたんじゃない んだ。
困っている淑女 と言うんだよ」
               【A・クリスティー 「復讐の女神」】


   久し振りに真珠色の空で明けました。
  従って気温もそれ程上がらず、一時の猛暑状態からは抜け出しています。

   そう言えば、こんな気候、台風以来ずっとですものね。
  でも随分、助かっています。


   さて今日は再び 『A・クリスティーの館』 です。
  【先日】 の続き、「復讐の女神」 です。
  
   この 「復讐の女神」 は、ミス・マープルものとしては最後で、
  いつにも増して推理以外の(例えば植物、インテリア、お茶風景など)
  描写にも興味を引かれる事が多い・・とは、先日も触れた通りです。

   その事も然(さ)る事ながら、(キーポイントは「三姉妹」ですが)
  肝心の推理でも重要な部分が抜け落ちておりました。
  
   これこそ、クリスティーの真骨頂ですね。
  ある植物から死体の隠し場所を推理するのですから。

   その植物も馴染みの 「ポリゴナム」、別名 「姫蔓蕎麦(ヒメツルソバ)」
  ですから何をか言わんと言った処でしょう。

   尤も、私の知っているのはピンクだけですが、白もあるのですね。
  それは美しく香りも良いのだそうです。
  でも、あの可憐な花が、こんな曰(いわ)くのある花だったなんて。

芝生の小道の本道の外れに、
小さな丘がありました。
元温室だったのが崩れ落ちて出来た
小さな丘でした。
(中略)
その上にある種の蔦葛つたかずらが植えてありました。
これは良く知られている葛で、
庭にある汚ない小屋などにわせ絡ませて、
隠すために使われるものなのです。
ポリゴナム という名の葛です。
灌木かんぼくの中でも最も育ちの早いものの一つで、
これが茂りはびこると、何でも飲み込み、
殺し、枯らしてどかしてくれます。
どんなものの上にも茂ります。
ある意味で、怖い植物と言えましょう。
綺麗な白い花を付けて、なかなか見事です。
まだ咲き始めておりませんでしたが、
もうすぐ咲きそうでした。
            【A・クリスティー「復讐の女神」】


   そうそう今日の引用文。  
  「淑女の薔薇」 とは、我家の薔薇のネーミングですが、こんな 「淑女」 もあるのですね。
  今日のタイトル、面白いので何の意味もありませんが、そのまま頂いてしまいました。

   前回の “趣味” 云々もそうですが、
  こんな風に、この小説にはそこかしこに言葉の妙味が溢れています。

   そして取り出したのは又々、クリスティー。
  でも短編です。三島由紀夫も今度こそ、読まなければね。

夏の黄色い午後はミステリー!

2011-07-23 15:08:38 | A・クリスティーの館



「うんと歩かされて立ちんぼをさせられましたよ。
足がすっかり疲れてしまいますね。
こんな旅行には出るんじゃないとも
思いましたけれどね、でも 美しい建物立派な
部屋
家具 など見るのが魅力なものですから。
その他何でも。
そして勿論 素晴らしい絵 なんかもですね」
「それに、お庭 もでしょう」  アンシアが言った。
「お庭もお好きなんでしょう?」
「ええ、もう」  とミス・マープルが言った。
              【A・クリスティー作「復讐の女神」】


   太陽は顔を出しているものの、灼熱の太陽と言った感じではありません。
  それでも昨日などは、ほんの申し訳程度にしか
  啼いていたに過ぎない蝉が、今日はひとしきり。

   啼けば啼いたで少々、うるさくも感じますが、
  啼かなければ啼かないで妙に気になる・・。人間とは何とも勝手なものです。




  さて暑い夏の午後は、古代詩よりも
  背筋の凍りつく? ミステリーですね。
  
   (写真は昨日のプリン。 
  見えにくかったので、もう1度)
  
   久し振りの 「A・クリスティーの館」。
  もう何度か引用文にも
  登場していますね。
  
   その本のタイトルは 「復讐の女神」。
  それにしても・・。

   暫くクリスティーものが続きましたので、
  休止していた三島由紀夫の 「豊饒の海」 を・・
  と言ったのは、つい先日の事。
  
   しかしながら難解な三島文学には気分が乗らず、
  ついつい慣れた? クリスティーを手にする始末です。
  
   黄色い夏、特に暑い夏の午後はミステリーが殊の外似合う・・。
  ~なんて、勝手な理由をつけて逃れています。

   そんなこんなで又々、ミス・マープルものですが、
  どうやら本書(1971年作)が、マープルものとしては最後のようです。

   ミステリーですから謎解きは勿論ですが、そのせいかどうか? 
  私のもう一つの興味である、編物、お茶、庭(植物)の描写の多かったこと!

   それに今回は、ミス・マープルに莫大な遺産の贈与がありましたから、
  上記のように彼女の大好きな事が出来ますものね。

   話が逸れました。今回も犯人は五里霧中。怪しい者が浮かんでは消え・・。
  でも犯人は1番、犯人らしくない人間(の筈・・)。
  途中、頭の中をチラと掠(かす)めたものですが・・。
  
   “まさか・・” と。でも、そのまさかが盲点だったのですね。
  うっかりしていました。従って今回は外れ。
  この処、犯人当て、連勝していたのに残念です。

   事件の重要な鍵となるのは 「三姉妹」。
  思えば、その事については結構述べていましたから、
  迂闊(うかつ)と言えば、そうでした。それは、こんな風に。

三人姉妹 。これが、私があの<旧領主邸>へ
入って行った時に私が感じた事、思った事、
独り言を言った事でした。(中略)
何か、この・・・・・三人姉妹・・・・・という言葉は、
頭の中に不吉なものを芽生えさせますね。
ロシヤ文学 の中の三人姉妹を連想させ、
マクベス の中のヒースの荒野の三魔女と
結びつきます。私の感じでは、
ここには悲しみの雰囲気がありました。
不幸の深刻な感じ、又恐怖の雰囲気も
ありました。それに、様々の雰囲気が
ごちゃごちゃにせめぎ合っていて、
何と言いますか、常態の雰囲気と言うより
言いようがない雰囲気もありました」
              【A・クリスティー作「復讐の女神」】

そのケーキの名前は “甘美なる死”

2011-06-18 17:57:37 | A・クリスティーの館



ミス・ジェーン・マープル は、
クラドックの想像とたいして違ってはいなかった。
まあ、違っている点と言えば、
ずうっとおとなしそうな婦人だった事と、
年が思っていたよりも老けていた事だ。
実際、高齢と言ってもいいくらいだった。
雪のような白い髪と、しわの寄った桃色の顔、
それに柔和な清浄な瞳、そして、
毛糸を幾重にも身体に絡ませていた。
その毛糸は、まるでケープをまとっているように、
マープルの肩を取り巻いていて、彼女は、それを
子供用のショールを仕立てるために編んでいるのだ。
                 【A・クリスティー作 「予告殺人」】


   「ホ~~ッ、ホケキョッ!」
  今朝の早朝の目覚めは、何と鶯(うぐいす)の啼き声から。
  思わず、枕元の時計に目を遣りましたら・・まだ午前5時前。

   これが、「グー、グー、グー!」 とお世辞にも美しいとは言えない声で啼く
  小鳥ならいざ知らず、美しい鶯の声ですから、やがて2度目の眠りへ・・。



   さて、久し振りとなりました。
  「アガサ・クリスティーの館」 にようこそ! 今日のタイトルは 『予告殺人』
  この処、レース編みの方に時間を取られてしまって、少々、疎かになっていました。
  
   例に洩れず、こちらの本も少しだけ残して、長い事そのままに。
  やっと読み終えたという訳です。と言っても、引用文として始終登場していますけれど。

   再三申していますが、『アンの世界』『クリスティーの世界』
  あまりにも共通点が多くて。私の中では既に一つの世界となっています。

   ところで、この小説、又々、ミス・マープル物です。ミス・マープル、大好き。
  特に最近は、ミス・マープル、オンリーと言っても過言ではありません。

   ミス・マープルの人となりは、上記の描写によく表れていますね。
  愛すべき典型的なイギリスの老嬢のようです。
  アラ・・!? この 「老嬢」 も実に古風な言葉ですね。でも素敵!

   話が逸れました。物語は、新聞に殺人予告が載った事から始まります。
  「殺人、お知らせ申し上げます」  
  こんな広告が新聞の紙面を飾りましたら、誰だって、びっくりしますね。

   そして、今回も大どんでん返し。
  しかも私は、犯人の名前をまたもや当ててしまいました。これで2連勝。

   ミス・マープルのように、その謎を上手く解明出来ませんが、
  勘だけは養われて来たようです。相変わらずのトリックの巧みさ。脱帽です。


【A・クリスティー作 「予告殺人」 】


   ところでA・クリスティーと言えば、言わずと知れた料理&お茶。
  今回も事件の重要な伏線となります。そんなこんなで・・。
  私も紅茶とサンドウィッチを用意。(冒頭の写真)

   でも、美味しいスペシャルケーキの名前が、
  「甘美なる死」 というものでしたら・・お召し上がりになりますか・・?