【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

ミス・マープル最後の事件

2011-05-08 16:18:36 | A・クリスティーの館






「この庭で出来るだけの事を
やろうとしておりますの。
ひどくほったらかしにされて。
例えばこの 蔓草 ですが、
それは厄介な代物ですよ。この根は」
「地中にどこまでも伸びて行ってます。
大変深くまで ―― 土の下にはびこるのです」
(中略)
「恐らくその前から」  ミス・マープルは言った。
「地中にはびこり・・・
恐ろしく有害なんですよ、警部さん、
成長しようとする花の命を奪うのです・・・」
           【A・クリスティー作 「スリーピング・マーダー」】 


   

   こちらは今日も晴れ。
  昨日より2、3度、気温は低いものの、それでも夏日です。

   そして、いつもの庭に嬉しい発見。
  去年以上に・・いいえ、去年の何倍もの蕾を付けた薔薇が、
  開花に向けて秒読み段階。嬉しい悲鳴を上げています。




                           【A・クリスティー作 「スリーピング・マーダー」】




   さて、久し振りの 「クリスティーの館」。
  やっと 『スリーピング・マーダー
  (Sleeping Murder)』 を読み終えました。

   今回もミス・マープルものですから、
  例に洩れずと言いますか、私は・・。

   謎解きよりもお茶シーンやガーデニング、
  はたまた家の佇まいやインテリア等の
  描写に興味津々(しんしん)。

   おまけに上記のような描写で、 
  物語は始まります。
  期待の程が分かりますね。

   その上 アン  は勿論、
  エミリージェーン とも
  共通点たっぷりですもの。

   とは言え、蔓性の植物を
  昔の殺人事件になぞらえるなど、
  クリスティーの面目躍如たる処でしょう。

   そうそう、今回も邸には名前が付いています。
  その名は 「ヒルサイド荘」。

   アンの 「炉辺荘」 もそうですが、イギリスなどでは
  邸に名前を付けるのが一般的のようですね。

   “この邸には 名前は付いておりません 。
  トムギャロン家にとって、エルムスとかチャスナットとか、
  クロフトなどというくだらぬ名前は用がないのです。”
 
                  
                            【「アンの幸福」 第3年目9.】

   ところで、「ヒルサイド荘」 は、
  冒頭の写真(置物)のような家でしょうか・・。

   ここはたっぷり 「想像の余地」 を働かせて、
  そんな家で私もお茶・・と致しましょう。

   そうそう、肝心の犯人。今回は当たりました。
  最も犯人らしからぬ人という事で。

   でも、ミス・マープルのように論理的な解明は出来ません。
  単なる勘。これでは駄目ですね。

格調高い美の矜持

2011-04-17 16:15:56 | A・クリスティーの館


「この部屋をすっかり模様変えされたんですね」
とリチャードが部屋の中を見廻して言った。
「素敵ですわね、奥様」
とドーリスが言った。
「こういう 摂政時代風 の装飾が
この節の流行でございましょう?
模様変えをなさる前はどんなでしたの?」
「昔風に 薔薇色 でまとめてありましたね?」
とリチャードはぼんやり言った。
炉の火 の柔らかい光を浴びて、
アンと2人古ぼけたソファに並んで座っていた日の
記憶が心をかすめたのであった。
今はそのソファも ナポレオン1世時代風
長椅子にとって代わられていた。
                 【A・クリスティー作 「娘は娘」】


   こちらは快晴の空が戻って来ました。
  それにしても昨夜から今朝の冷えたこと!
  
   そうそう心配していた桜、我家から見える限りでは、
  染井吉野はその色を失いつつありますが、山桜は健在。
  
   遅かれ早かれ、その花を散らす事になると思うのですが、
  今だけでもほっと安心です。



   さて、A・クリスティー作 「娘は娘」。
  読了したのはつい 【先日】 の桜の樹の下。
  
   この本、英国の中・上流社会のお茶シーンや格調高いインテリア等など・・
  詳細に記されているものですから、まだ読み終わってもいませんのに、
  こちらにも再三登場させたものです。
  今更の感もしますが、一応感想など書き留めて置く事に致しましょう。

   繰り返しになりますが、この本は彼女には珍しく、推理小説ではありません。
  従って謎解きがない分、私の大好きな(上記のような)描写が、
  ふんだんにあるのかも知れません。

   本の内容は、タイトルが示しますように美しい未亡人の母、アン
  一人娘の セアラ の、“アンの結婚話を契機に起こった、
  母娘の心の葛藤・・” とでも申しましょうか・・。

   仲の良い母娘に、良くある話・・と言えばそれまでですが、
  ここでもクリスティーの細やかな筆が冴え渡っています。

   ミス・マープル 物でも感じる事ですが、女性に対する洞察力はさすがです。
  又、アンの忠実なる女中、(この言葉は、今では死語ですが、
  ここではそのまま使わせて頂きます) イーディス の存在も際立っています。

   それにしても摂政時代風、ナポレオン1世時代風、ビクトリア時代風、ジョージ朝風・・
  枚挙に暇(いとま)がありません。そして、ここでも炉の火と蕾の薔薇が・・。
  そして次も又々、ミス・マープル物です。表紙の編物の挿絵がそれを物語っていますね。


春とお喋り

2011-04-06 15:10:10 | A・クリスティーの館


いつか、アンがマリラにこう言った事があった。
「結局、1番、幸福な日というのは、
素晴らしい事や、驚くような事、
胸の湧き立つような出来事が起こる日ではなくて、
真珠が一つずつ、そっと糸から滑り落ちるように、
単純な、小さな喜びを次々に持って来る
1日1日の事だと思うわ」
                  【「アンの青春」 第19章】 


   気持ちの良い快晴の天気が続きます。
  今日も昨日同様、日本全国がすっぽり高気圧に覆われているのですね。
  朝、冷えるのも同じなら、日中、ぐんぐんと上がる気温も同じ。

   ふと思ったのですが、これまでこの時期、この季節、
  こんなに良いお天気が続いた事があったかしら・・? と。

   あら、あら・・未だに深く心に澱(よど)んでいる震災や原発の事があるにせよ、
  良いお天気なのに、こんな事を言ってはいけませんね。
  上記の アン のように、この時を、この瞬間を精一杯楽しまなくては。



   さて、今日取り出した本は又々、A・クリスティー作 「娘は娘」。
  ポアロ物に比べ、ミス・マープル物は、
  お茶シーンや植物描写が多いと記したのはつい先日の事。

   ところでこの 「娘は娘」、彼女には珍しく推理小説ではありません。
  そのせいもあってか、大好きなお茶シーンや、格調高い部屋の描写などは、
  のっけから、よりふんだんに。それは表紙のイラストからも想像されますね。

   そう言えばこの本、まだ読了した訳でもありませんのに、
  待ち切れなくてこうして記しているのですものね。
  その上、クリスティーならではの、女心に対する洞察や思いやりは至る所に感じます。

   とは言え丁度今、美しい未亡人である主人公のアンが、
  電光石火の如く結婚を決めたばかり・・という佳境にさしかかっています。

   本来でしたら、その結婚相手は、ちょっと物騒だけれど殺人鬼・・となる筈ですが?
  (どうしてもそんな風に考えてしまいます)そうでもなさそうですし、
  これからの展開が楽しみです。

   最後に。これも美しいロンドンの春の描写を。

「ロンドンて、本当はとても美しい所なんですのね。
普段は気が付きませんけれど」
「そう、まるで啓示のようですね、
こういう事に気付くのは」
「(中略) 木々の若芽アーモンド の木。
そのうちに ライラック が咲く。
煉瓦れんがとモルタルのくすんだ壁を背景に
しているために、その美しさが
一層大きな意味を持つのだと。
田舎では全てが雑然と起こる。
それに周りがあまりにも広々としているから、
つい心して見る事がまれだ。
しかし、郊外の家の庭には
一夜にして春が来るって」
                【A・クリスティー作「娘は娘」】 

フルコースで召し上がれ

2011-04-03 16:16:28 | A・クリスティーの館



ルーシー・アイレスパロウは
小型の自家用車を運転して、
いかめしい大きな鉄門をくぐった。
今はすっかり打ちてられていたが、
元は 番小屋 と覚しい小屋があり・・(中略)

長い、曲がりくねった道が、
こんもりとして暗い 石楠花しゃくなげの繁み を縫って、
屋敷まで続いていた。
ウィンザー城 を小さくしたような館が見えた時、
ルーシーはあっと息を吞んで、微かにあえいだ。
         【A・クリスティー作「パディントン発4時50分」】  


   寒いとまでは行かないまでも、ヒンヤリとした朝を迎えました。
  加えて今日は真珠色の空。この処の春らしい陽気とは一変です。

   ただ、私の中では “火” がある事になぜか安心もして。
  石油ストーブの上にお湯が湧き、時には煩(うるさ)く思える、
  リズミカルな? その音も、妙に懐かしいような・・。

   そう言えば、ストーブの上って便利です。
  いつでもお湯が湧いていますから、お茶だってすぐに頂けます。

   又、さつま芋をアルミホイルに包んで置いて置けば、
  僅かな時間で焼芋と・・すっかり重宝しています。

   “ここ数日間の手持無沙汰の感は、これだったのだわ”
  ~なんて確認した次第です。


   さて、久し振りのアガサ・クリスティーは、「パディントン発4時50分」
  ちょっと前に読了していながら、今日までずれ込んでしまいました。

   擦(す)れ違う列車の中で殺人事件を目撃するという、
  まるでヒッチコックの 「裏窓」 を連想させる、ストーリー展開。

   タイトルからは 「オリエント急行殺人事件」 に代表されるような
  列車物と思われますが、最初だけ。

   その舞台背景も上記の描写のような、
  独特の雰囲気がありますから、嫌でも引き込まれてしまいますね。

   のみならず、「クリスマスプディングの冒険」 のように
  料理、お茶シーン等など・・満載ですから私なんて、もうお腹一杯。

   この小説は、ミス・マープル物ですが、やはり女性が主役だからでしょうか。
  料理、お茶、植物などの描写がポアロ物より多いような気がします。

   そうそう肝心の犯人。
  様々な登場人物の中で、“1番犯人らしくない者” を選んだつもりですが又々、外れ。
  ミス・マープルの冴え渡った推理力には脱帽です。

   最後に。ラザフォード邸 の本日の夕食メニューです。
  たっぷりどうぞ! 但し、自己責任でどうぞ。


   【注 : 「シラバブ」 → 牛乳、あるいはクリームに、
  葡萄酒、林檎酒などを混ぜ、砂糖と香料を加えて泡立てて固まらせたもの】 

ミス・マープルと過ごす午後時間

2011-03-05 16:32:56 | A・クリスティーの館



 「あたしは最後を悲しくしたいのよ。
 その方がずっと ロマンティック ですもの。(中略)
 ハミルトン教授がおっしゃっているのを聞いたけれど、
 悲しい結末は天才でなければ
 書こうとはしてはいけないんだって。
 ところがあたしは、天才どころじゃないんですもの」
                     【「アンの愛情」 第12章】


   先日来、暖かくなってからと
  いうもの、ついつい雨戸を
  閉めないで休んでいる昨今です。

   そんな今朝も・・
  カーテンの隙間からこぼれる
  1条の光で目が覚めました。

   昨日よりも少々、
  雲はあるものの、今日も快晴。
  思った以上に強烈な日射しです。

   尤も、この時間になりますと、
  その雲も全然見当たりません。一体、どこへ消えてしまったのでしょう。

   ともあれ、“雨戸より、思い切りカーテンを開ける瞬間が好きなのだわ・・”
  ~なんて思いながら、私の1日が今日も始まるという訳です。




   さて今日は、久し振りに A・クリスティーと過ごす時間となりました。
  三浦綾子に長い事、没頭していた私。

   そんな中、(ポワロではなく)このミス・マープルと過ごす時間は、
  私にとっては、アンの延長線上と言っても過言ではありません。従って凄く楽。

   と言いますのも、再三記していますように、
  ミス・マープルは(イギリス婦人らしく)お茶が好き、編物が好き、植物が好き。

   特にこの本ではとりわけ沢山登場しているような気がします。
  それに 【先日】 も記しましたように、久し振りのレース編みで私との共通点も多くて。

   勿論、ポアロ物でも編物以外は登場しますが、
  やはり同性のよしみと言った処でしょうか。親しみが湧きます。

   でも、その割には結構長い時間かかって、
  この 『鏡は横にひび割れて』、読了しましたけれど。

   ところで、ミス・マープルと言いますと、
  どうしてもロッキングチェアーを連想してしまいます。そんなこんなで・・。

   昨日と同じ場所でお茶を・・。丁度、お誂え向きに古びたそれがありますから。
  それにちょっと屋根裏部屋の雰囲気ではないかしら・・?

   アンは悲しい結末はロマンティックだと言っていますが、
  最近の私は、苦手になりつつあります。

   なのにミステリー・・? と思われがちですが、
  ミステリーは最初から割り切っているせいか? 
  あまり心の痛痒は感じません。矛盾した心理のようですけれど。

   さて、今回も1番犯人らしくない者が犯人でした。
  最初から分かっていても見逃してしまうのですね。やはり外れ。それも見事に。

   でも物騒な事件を扱うから・・だからこそ、こんな何気ないお茶のシーンに、
  ほっとさせられるのかも知れません。最後に、そのお茶のシーンの一駒を。



 「(中略)ジェーンおばさん、美味しいお茶と
 バタつきパンでもご馳走して、セント・メアリー・
 ミードの昔話でもして、僕を慰めて下さいよ」
 ミス・マープルは同情の思いを込めて
 舌を鳴らした。

 「そんな弱音を吐くのはおよし。
 それからね、紅茶にトーストなんてあなたの
 欲しがっているものではない筈よ。
 失望を味わされた時には、
 殿方はもっと強いものを欲しがるものだわ」
 いつものようにミス・マープルは、
 まるで異人種の事でも言うように、
 殿方とのがた という言葉を使った。

 「私なら、強いウイスキーに
 ソーダ水を勧めるわ」
         【A・クリスティー作 「鏡は横にひび割れて」 より
 

クリスティーと古風なクリスマス

2010-12-25 16:16:18 | A・クリスティーの館




   クリスマスの今日は、
  こんなにくっきり、
  ハッキリした空で明けました。

   凛とした空、空気。
  この “凛と・・” という言葉、
  好きな言葉の一つですが、
  今朝ほどこの “凛” を
  感じた事はありません。

   今年のクリスマスは、
  各地でホワイトクリスマスに
  なったようですね。(主に日本海側)
  こちらは相変わらずグリーン・クリスマスですが・・。

   この冬1番の寒さという事ですが、それでも起床時の気温は12度。
  とは言え、今日の最高気温は5度との事ですので、真冬並みの寒さですね。










   




   さて先日来からお伝えしています、
  アガサ・クリスティーの短編小説、「クリスマス・プディングの冒険」。

   これまで 「シャーベット」(24羽の黒つぐみ)、
  「選り抜きの添え物料理」(グリーンショウ氏の阿房宮) と召し上がって来ましたね。

   クリスマス当日の今日と致しましては、
  いよいよこの短編集のタイトルでもある、「メーンディッシュ」 の登場です。

   クリスティー自身、クリスマスの想い出は格別のものがあったようです。
  それは大層、愉しく素晴らしいものだった・・と、この本でも語っています。
  そうそう、その物語とは・・。

   ある外国の王子が由緒ある高価なルビーを女性に騙し取られます。
  それが王子の手許に戻らなければ、政治上の悲劇的な結果を招く可能性が・・。

   そこでポアロが、そのルビーを取り戻す事を依頼され、
  くだんの女性が隠れているらしい屋敷に客として潜り込む事になるのです。
  そこで待っていたものは・・。

   ~なんて。今日はクリスマスですから物騒な話はいいですね。
  その代わり、英国の昔ながらの古風なクリスマスに目を向けてみる事に致しましょう。

   その古風なクリスマス。
  ポアロが客として滞在する事になった、
  そのお屋敷に住むレイシー夫人の言葉を借りますと・・。








 「(略) 吊り下げた靴下だの、カキのスープや
 七面鳥 ―― 煮たのと焼いたのとの、
 2種類の七面鳥料理 ―― それから指輪だの、
 独身者用のボタンだのの、いろんな物を入れた、
 プラム・プディング
 近頃は6ペンス硬貨は入れなくなって
 いるんですよ。もう純銀ではありませんからね。
 
 でも、デザートは昔のままで、
 エルバス・プラムや、カールズバッド・プラム、
 アーモンド、レーズン、砂糖漬けの果実、生姜。
 おや、まあ、これではまるでフォートナム・
 アンド・メイスンのカタログみたいですわね」


   




   いかがですか? あのポアロでさえ、よだれが出そうと言っています。
  ところで私は・・と言いますと、今日もアロマタイム。
  ラベンダーの葉っぱや薔薇の花びら。このスタイルにハマっています。

   オイルもいいですが、目で見る事の出来る喜び。暖房もエアコンは苦手。
  勿論一番いいのは暖炉ですが、火と炎をこの目で見たいのです。

ミス・マープルのティータイム

2010-12-17 16:56:56 | A・クリスティーの館




     昨日は全国的に寒気に覆われたようですね。
    今朝は昨日より更に1度低い11度となりました。(居間の気温)

     ただ昨日と違うのは、空に1点の雲もない快晴だという事。
    太陽の光が、ふんだんにあるという事は、
    本当に有り難い事ですね。

     今朝の気温は今季一番の寒さとなりましたが、
    体感的には随分、暖かい気がします。

   




   「ああ、小父さん、素敵な朝ね。
  神様がご自分でただ楽しみのために描いた
  絵のような世界じゃないこと? 
   この木ったら、あたしのひと吹きで吹き飛びそうだわ――フッ! 
  あたし、白い霜ってものがある世界に住んでいて本当に嬉しいわ。
  そうじゃない?(略) 
                     
                                【「赤毛のアン」 第18章】

   





   そうそう昨日の紅葉、今朝もまだ散っていません。
  心なしかピンと張っていた葉は、少し縮んだよう。

   他の枯れた葉のように、このまま枝にくっついたまま最期を迎えるのか、
  それとも潔く地面に舞い降りるのか・・少々考えさせられます。







 
 

   




   さて、今日の話題。
  こちらのアガサ・クリスティー作 「クリスマス・プディングの冒険」 を
  取り上げるのは、今日で3回目ですね。

   短編集ですので既に読了していますが、
  前回も申しましたように、こちらの作品はクリスマスのご馳走本です。

   前回は、クリスティー自身が “シャーベット” と呼んでいる、
  「24羽の黒つぐみ」 を取り上げましたね。

   今日は、これも “選り抜きの添え物料理” の中から
  「グリーンショウ氏の阿房宮」 を。この本では唯一、ミス・マープルが主役です。

   ミス・マープルと言えば・・。
  揺り椅子と編み物、お茶・・が定番。お得意の推理力が冴えます。

   阿房宮とは建物の事であり、“阿呆” も連想されますね。
  それは美術的にも価値が高いお屋敷であり、老嬢が家政婦と庭師と共に住んでいます。

   老嬢は家政婦に全ての財産を譲るとの遺言書を作成。
  その矢先、老嬢が矢を放たれて殺される・・というストーリーです。
  今回は、料理は殺人事件に関係ありません。

   でも、ここでもクリスティーお得意の植物が謎解きのヒントになります。
  例えば、こんな風に。~ミス・マープルの言葉






なずな、雪の下、えにしだ、釣鐘草・・・・・
さあ、これで私に必要な証拠が、残らず揃ったという訳だわ。

昨日の朝、ここで草を摘んでいたのは、庭の事など、
分かる人ではなかったのよ。
雑草と一緒に、大事な草の方まで抜いてしまっているのですもの。

これで、私の意見の正しい事が証明出来たって訳なの。
お礼を言うわ、レイモンド。ここへ連れて来てくれた事によ。
私、この場所を自分の目で確かめてみたかったの」
A・クリスティー 『クリスマス・プディングの冒険』 より 「グリーンショウ氏の阿房宮」


   



   クリスティーと言いますと、今ではお目にかかる事の出来ない、
  古風で優雅な社会を描いているから好きなのです。

A・クリスティーの食卓

2010-12-07 15:58:58 | A・クリスティーの館


   昨日の暖かさの余韻でしょうか・・
  起床時の居間の気温は何と17度。

   昨日のニュースでは今日から
  寒くなるという事でしたので、
  覚悟していたのですが・・。

   ともあれ、暖かい分には
  何の問題もありません。

   ただ今日は朝から北風が吹き、
  ハラハラと紅葉が散っています。

   3分の1程度、残っていた紅葉も後僅か。“もののあはれ”を感じます。
  ところで、今日の空。昨日の午後にも見た、ス~ッと白い1本の筋雲が今朝も。
  同じものではないでしょうが、しばし見惚(と)れていたものです。      

   さて、久し振りの読書。
  今日取り出した本は、これもちょっと
  久し振りアガサ・クリスティー。
  
   12月ですから、クリスマス料理
  中心の本に致しましょう。

   こんな風に記しますと、
  “一体、何の事・・?” って
  思ってしまいますね。
  
   サスペンスも然る事ながら、
  ハーブや料理にも造詣が深いクリスティーならではの事。
  
   その代表的なものと言えば、
  『クリスマス・プディングの冒険』(橋本福夫・他訳)でしょう。
  
   題名からして今の季節にぴったりの短編集です。
  尤も、こちらに取り上げるのは2度目ですね。
  
   こちらの本は、何と言ってもクリスティー自身が、
  『料理長のお得意料理集』 とも呼んでいますように、
  クリスマス料理満載の本でもあるのです。

   その中で、メイン料理の 『クリスマス・プディングの冒険』 は、
  後にして今日は、シャーベットの 「24羽の黒つぐみ」 を。

   そうそう、ここで登場のレストランは、
  チェルシーのキングス・ロードにある、「ギャラント・エンディバ」。

   ここでの食事は、フランス風の凝った料理ではなく、
  吟味の行き届いた英国風の料理のようです。
  そして本日の料理長(シェフ)お勧め料理は、「七面鳥の栗の実漬め」。~なんて。

   ストーリーは・・。
  いつも同じ曜日(火、木)に来ていた客が初めて違う曜日(月)に来た。
  しかも料理も全く違うものを注文。

   たったそれだけの事ですが、
  ポアロの 灰色の脳細胞? は、異変をキャッチ・・するのです。

   私は・・と言えば。先日仕込んだ、【ローズマリーワイン】 を片手に。
  今日のワイングラスは一応銀製です。中身が安物ですので器だけでも優雅に。
  
   ここで事件のヒントとなる伏線を記して置きましょう。
  それにしてもこれ又、優雅な言葉遣いですこと! 

(中略) 「僕の好みをよく心得ているね、君は」 と彼は言った。
「あら、ちょくちょくおいで下さいますから。
お好みを存じ上げるぐらい当たり前です」

エルキュール・ポアロが言った。
「すると、人の好みはいつも同じなのかな! 
たまには変えたくはないものだろうか?」

「殿方はお変えになりませんです。
ご婦人方は、変わったものを召し上がりますが ――
殿方はいつも同じものを召し上がります」

「僕がさっき何と言った?」 ボニントンが不平がましく言った。
「女というものは本来が食い物には全くうといのさ!」
           「24羽の黒つぐみ」~『クリスマス・プディングの冒険』 A・クリスティー

秋はミステリアスな季節

2010-10-24 19:13:08 | A・クリスティーの館




   今日は1日中、
  真珠色の空になりました。

   お天気も、そろそろ下り坂。
  そんな空ながら時折、太陽も。

   こんな風ですから日中は何とか
  持ちましたが、夕方からポツポツ・・

   少々、遅くなりましたが、
  天気予報通りの雨です。弱い雨。
  これまでの暖かさも健在です。

   でも、もうそろそろ寒くなるかも知れませんね。
  後、1週間で11月ですものね。








   




   さて、今日は代理で告別式に出席。
  別に冷えた訳ではないのですが、温かい珈琲が無性に飲みたくなりました。

   帰り着くや否や、早速珈琲を入れてホッ。カップは 【先日】 のもの。
  これも少々見えにくいけれど、クッキーを載せているお皿も、やはり先日の 【漆器】

   お花もそうですが、この季節ですから持ちが良いですね。
  美しい磁器もいいけれど、こんな時、ざっくりした土物の器が気分を和らげます。

   気分が和らげば・・又々、ミステリーが読みたくなります。
  取り出したのは今日も、A・クリスティー作 『クリスマス・ブディングの冒険』。短編です。

   この処の私は新しい本を読み始めるものの、ついつい余所見(よそみ)。
  気分転換と称しては他の本に手を伸ばす始末。

   尤も、ほとんど A・クリスティーの短編ですが・・。
  短編は気軽に読めますものね。

   探偵役は、敢えてミス・マープルを。
  (尤もミス・マープル主役は、前回の 「火曜クラブ」。今日の本では1編だけ) 

   ポアロもいいけれど、私はミス・マープルが大好き。
  クリスティー自身も、お好きなようですね。

   そうそう、A・クリスティーと言えば、何と言っても植物ですね。
  こんな風に登場して来ます。何だかワクワク。
  そして、「エニシダ」 が 「金雀枝」 と漢字で書く事にも感激。






「なずな、雪の下、金雀枝えにしだ、釣鐘草・・・
さあ、これで私の必要な証拠が、残らず揃ったという訳だわ。
昨日の朝、ここで草を摘んでいたのは、
庭の事など、分かる人ではなかったのよ。
雑草と一緒に、大事な草の方まで
抜いてしまっているのですもの。
これで私の意見の正しい事が証明出来たって訳なの。(中略)」
            【A・クリスティー 「グリーンショウ氏の阿房宮」 より】

アン & クリスティーの贈り物

2010-09-20 15:25:35 | A・クリスティーの館




   今日も、薄紫色の優しい空で明けました。その後、男性的な鱗雲に。
  日中は昨日、今日と、ちょっぴり暑さがぶり返していますが、
  こんな空を眺めますと、否(いや)が応でも秋を感じます。

   そしてアンの娘、ナンではありませんが、
  『遥か彼方(かなた)』・・大海原に思いを馳(は)せる事になるのが常なのです。

   “・・・ 略 ・・・ 『遥か彼方』 という言葉は、
  今なおナンにとって魔法の言葉であった・・・
  風吹く丘を越えて微かに聴こえて来る音楽のように。”

                                       【「炉辺荘のアン」 第37章】


【「面高(オモダカ)」】




   さて、こちらは昨日撮ったもの。
  田圃の脇に白い 「オモダカ」 の花を見つけたと思いましたら、薄い黄色の花は道端に。
  かと思えば、夏の象徴でもある向日葵も、まだまだ堂々と。




   ところで、『赤毛のアン』(モンゴメリー)と同様に、
  アガサ・クリスティーも私は大好きです。
  
   昔から手当たり次第に買い求め、“乱読” プラス “積ん読”。
  ただ当時は興味と言えば、謎解きとスリルのみ。
  
   今、その本を改めて読み直しているのですが、
  (ほとんど忘れていますので、1から読むのと同じです)
  アンと共通している部分の多いこと!

   一つにはアンの舞台となっているP・エドワード島の住民が、
  スコットランドやアイルランドなどのイギリス系80%・・というのもあるでしょう。

   以前にも記しましたが、『赤毛のアン』 でもお馴染みの言葉、
  「崇拝者」 「頭のてっぺんから爪先まで」
  「ロマンティック」 「同類」 「分別」
等など・・。
  これらの言葉が至る所で登場して来ます。

   そうそう、館(やかた)に名前を付ける事も。
  アンが 「炉辺荘(イングルサイド)」(「炉辺荘のアン」) に代表されるなら、
  クリスティーが 「ホロー荘」(「ホロー荘の殺人」) や
  「スタイルズ荘」(「スタイルズ荘の怪事件」)、
  「から松荘」(『火曜クラブ』より「アシタルテの祠」) 等など・・。
  
   館には必ず名前が付いています。
  もっとロマンティックな名前もありましたが、失念。

   それに何と言っても、ハーブや植物の事が盛り沢山。
  視点を変えれば、違った楽しみ方が出来るのですものね。
  
   カテゴリーも増やした事ですし、(クリスティーのやかた
  これから少しずつそちらの面でも紹介出来れば・・と思っています。

「(中略)私はね、昔の水準から言えば、
かなり高い教育を受けたと思いますの。(中略)
大変センチメンタルな人で、花言葉 なんか、教えてくれましてね。
近頃ではすっかりないがしろにされてしまいますけれど、
あれもなかなか面白いものですわ。
 例えば 黄色のチューリップ は望みなき恋を表しますし、
えぞ菊 は “嫉妬に燃えて御身の足許に死す”
という意味なんですよ。
 (中略) ダリヤ の花言葉は何だったかしら? 
どうしても思い出せませんわ。近頃良く物忘れをしましてね」
       ~アガサクリスティー 『火曜クラブ』 より 「4人の容疑者」