【いくつになってもアン気分】

 大好きなアンのように瑞々しい感性を持ち、心豊かな毎日を送れたら・・。
そんな願いを込めて日々の暮らしを綴ります。

奏でる日本語の調べ

2012-04-17 16:30:16 | 心の宝石箱





「君、あれは君の撮影かい?」
床の間の風景の写真の額をあごで指した。
「うん、そう ―― 大連の アカシア
並木なんだよ。6月頃白い花が咲くと、
いい匂いなんだよ。街中 ――」



沈丁花 ですね。
アカシアに似た匂いですよ ―― 
僕はこの沈丁花の匂いを嗅ぐと、
妙に高校の入学試験の頃の
憂鬱を思い出すね・・・」
前の方の言葉は品子に、
後の方の言葉は修三にらしかった。
「何言ってんだい。
いつまで君は中学生なんだ。
少ししっかりしろよ」                   
                 【吉屋信子作 「家庭日記」】


   今日は朝から雲一つない快晴となりました。
  早い時間には少々、冷たかったものですが、日中は本当に過ごし易い陽気に。

   そんな陽気に誘われ、
  チューリップと早春花のイメージの強いフリージアが開花。

   そして先日植えたばかりのリラの樹(紫)。
  それでも、かれこれ1ヶ月になるでしょうか・・。

   ウンともスンとも言わないで、ただそこに鎮座しているだけでしたが、
  やっと新芽を確認。ほっと胸を撫で下ろしています。

   そうそう、従来のリラの樹は・・柔らかい新芽をふさふさと付け、
  太陽の光を受けて溢れんばかりに輝いています。

   この色こそ、「さ緑」 と言うのでしょうね。
  後は花芽を付ける事を祈るのみなのですが・・。



【清水焼の花器に 「花韮」 と 「蔓日々草」 を】


   さて、吉屋信子作 「家庭日記」 読了。
  この小説の時代背景は、
  昭和12年から13年。

   前回の 「良人の貞操」 と、
  ほぼ同時期に書かれた
  ものなのですね。

   大連などの地名から、
  日本が既に満州に進出していた
  時期と重なります。

   しかしながらこの小説を読んでいて、
  ほとんど違和感のようなものは
  感じられません。

   寧ろ、現代より余程優雅にさえ
  思われ。

   大陸の話題はスケールの大きさを、
  そして、より国際的でもある事を
  窺わせます。

   優雅と言えば・・
  旦那様は勤めから帰ると和服に着換え、
  おもむろに夕食のテーブルに着く。

   おまけに借家住まいでも姐(ねえや)がいて。
  差し交わす会話は、まるで奏でる音楽のよう。

   日本語がこんなにも素敵だなんて。
  今日は、凛とした雰囲気を感じたくて和に模様替え。

   ところで題名が 「家庭日記」 とありますように、
  2組の対照的な夫婦を中心とした物語です。
  1組は、実家が医者で養子を迎えた、修三、品子夫婦。

   いずれは紀州の実家に帰らなければならないものの、
  夫の修三が博士号を取るまでは・・と、
  実家の援助を受けながら、東京に仮住まい中。品子はお嬢様風奥様。

   もう1組は修三の幼馴染で実家は品子と同じ医者ながら、
  医科を諦め、写真家になった一郎。

   女給(ホステス)上がりの卯女(うめ)と自由恋愛? の末、
  実家からは勘当同然の一郎、卯女夫婦。

   その一郎夫婦が大連から引き上げ、
  修三に貸家探しを依頼した事から物語は始まります。

   上記の引用文からも想像出来ますように、
  一郎はロマンティスト。一方、品子の夫修三は現実派。

   恋愛というものを知らずに結婚した品子と
  一郎の間に淡い恋心のようなものが芽生えるのも不思議ではありません。

   そんな2つの家庭と卯女の友人だった美容師姉妹、
  修三の親友久保らが脇として登場。
  多少のハプニングを含みながら、淡々と描かれています。

   「安宅家の人々」 から始まった吉屋信子の作品はこの作品で、
  いつの間にか9作品になりましたが、未だに飽きません。
  それどころか読み終わった段階から次は・・と心、はやる有様です。

   それにしても実家から全部持ち帰った筈の全集に、
  1番読みたかった 「花物語」 や 「暴風雨の薔薇」 が
  抜けているのはどうしてなのでしょう。

   元々なかったのか、どこかに失せてしまったのか・・。
  いずれにしても残念です。

   余談ながら、この 「家庭日記」 は 「良人の貞操」 と共に
  映画化されたとか。その映画の主題歌を以下に記して置きます。

  


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