[期日不明 時刻不明 天候:嵐 クイーン・アッツァー号(船底機関部) 稲生勇太&マリアンナ・スカーレット]
船員ロッカールームにある、1番から6番の番号が振られた不思議なロッカー。
ここに佇む船員の幽霊によれば、電気室のロックコードが書かれたメモが4番ロッカーの中にあるものの、開け方が分からないらしい。
しかし、マリアは分かったみたいだ。
「今まで3番ロッカーも開かなかったのに、今は開いてるだろう?」
「ええ」
「それは1番と2番のロッカーを開けたからだ」
「どういう意味ですか?」
するとマリアは3番ロッカーを閉めて、2番ロッカーも閉めた。
「これで、3番ロッカーは開かない」
「……本当だ」
すると、それまで開いていた3番ロッカーに鍵が掛かってしまった。
「答えは『足し算』だと思う。1と2を開けたら3が開いたわけだから」
「それじゃ、4番を開けるには……」
もう1度マリアは2番と3番を開け、2番だけを閉めた。
これで、1+3となったわけである。
すると……。
ガチャ。
「開いた!」
マリアの読み通り、4番ロッカーが開いた。
「! 開いたのかい?」
船員が驚いたようにやってくると、4番ロッカーの中を覗き込んだ。
「ロックコードは『1689』か。よし、これで……!」
船員は番号を読み上げると、ロッカールームを出て行った。
因みに幽霊であるにも関わらず、ドアを擦り抜けようとせず、ちゃんとドアを開けて出て行く所が何とも……。
これは恐らく機関長が言う通り、船員達に死亡の自覚が無いからだろう。
稲生達もそのロッカーを見たが、そこには葉書サイズの紙に大きく手書きで『1689』と書かれているだけだった。
「ユウタ、5番と6番も開けてみよう」
「あっ、そうですね」
この調子で5番と6番も開けてみた。
すると5番ロッカーには、ノートが入っていた。
キャンパスノートと呼ばれる、A4サイズの大きさである。
「日本語……」
開いてみると、日本語が書かれていた。
『“魔の者”の正体についての考察
魔道師達を襲う“魔の者”だが、彼らは昔から存在していたわけではない。いや、“魔の者”を操る悪魔は別に存在し、それは前からいるのだろう。だが、現時点ではそこまでの調査が明らかではないので、“魔の者”についての考察だけを述べたいと思う。“魔の者”が悪魔の類でありながら、何ゆえ人間を対象としないのかが疑問視されていた。その点に着目し、そもそも“魔の者”が取り沙汰されるようになった時期を考えると、1つの仮説が成り立って来る。“魔の者”がマリアンナ師をまず襲ったわけだが、その後で襲われたクレア師やジェシカ師においても、共通すべき点は人間時代に「女性として」不遇の時代を送った経験がある。これが何を意味するのかは定かではないが……』
「ユウタ、何て書いてあるんだ?」
「えっ?」
「私は、日本語を読むのがあまり得意じゃないんだ」
(あ、そうか……)
稲生とは普段、英語で喋っているのだった。
「“魔の者”についての考察文のようです。誰が書いたかは分かりませんが……」
「何でそんなものがここにある?」
マリアは眉を潜めた。
「えっと……何ででしょうね?」
6番ロッカーには青い宝石のようなものが入っていた。
「待てよ、これは……」
稲生はそれを拾い上げて、サンモンドからもらった星型のブローチにはめてみた。
果たして、それは無くなっていたもう半分の宝石だった。
「これは……退魔の効果のある魔法具だな」
マリアは覗き込むようにしてそのブローチを見た。
「そうなんですか?」
「これで“魔の者”を倒す、何かの道具になるんだろう」
「ますますこっちが有利になるわけですね。ありがたいです」
「……だといいんだけどな」
ロッカールームを出たが、全く停電が復旧する見込みが無い。
「何をやってるんだ、あの船員は……」
マリアが文句を言うと、稲生は、
「きっと、電気室では直せない状態なのかもしれませんね」
「いや、そんなことは無いんじゃないのかな」
「えっ?」
「だって、あの船員、あそこにいるぞ?」
「えっ!?」
確かにロッカールームを飛び出した船員が、電気室の前に佇んでいた。
「どうしたんですか?早くロックの解除を……」
「それが……できないんだ……」
「は?」
「さっきから1689と打ち込んでるのに……開かないんだ……。これは一体……どういうことなんだ……?」
ドアの横にはテンキーがあって、それを打ち込む仕組みのようである。
もう1度船員が1689と打ち込んだのに、確かに開かなかった。
「えー?まさか壊れてるのか?」
「そんな……」
稲生は4番ロッカーから持ち出したメモをポケットから取り出した。
「68……あ、逆だ。1689……だな」
一瞬、稲生はメモを逆さまに出してしまった。
「いや、ちょっと待って!」
マリアが稲生からメモを取った。
「あっ」
「これ……」
マリアはメモ書きをひっくり返した。
すると手書きの数字は、『6891』となる。
「正しいのはこっちなんじゃないか?」
「あ……」
稲生はその数字をテンキーに打ち込んだ。
すると……。
ピーン♪……カチャ。
「あっ、開いた」
電気室のドアロックが解除された。
中に入る稲生達。
「これだ……。このブレーカーが……落ちていたんだ……」
船員はOFFの位置にあるブレーカーをONの位置にガチャンと下げた。
すると、電気室内の照明が点灯した。
「おっ、明るくなった」
「よし。これで、あとは……」
船員は再び電気室の外に出て行った。
もしや、機関室のドアを開けてくれるのだろうか。
停電が復旧し、明るくなった廊下。
しかし、電力を復旧させた船員は機関室に行かず、何故か廊下の奥へと行ってしまった。
「まあ、いいや。ということは……」
「やった……。やっと……電気が復旧した……。これで、もう……安心……」
先ほどの新人通信士がホッとした様子になり、“成仏”していった。
これでまたソウルピースが手に入る。
「あとは……まだいるのかな?」
「さっきの船員はどこに行ったんだ?」
「行ってみましょう」
稲生達は明るくなった廊下の奥へ向かった。
廊下の奥にはドアがあり、そのドアには『通信室』と書かれていた。
さっきの船員もまた通信士だったのだろうか。
とにかく、そこへ行ってみることにした。
が、
「!!!」
廊下の照明が次々と爆発した。
せっかく明るくなった廊下がまた暗くなり、そこには、
「どォコォへ行くのォォォォォ……!?マァマァ……!」
“魔の者”がポルターガイストを起こし、実力行使に出たらしい。
「しばらく戦いは見合わせてやろうと思ったけど、向こうが宣戦布告してきたんじゃ、しょうがないよね?」
「そ、そのようです」
マリアは魔道師の杖を出した。
「少しは痛い目を見ないと、分からないようだな」
マリアは臨戦態勢に入ったが、稲生は、
(今の……『マァマァ』って何だろう……?)
と、“魔の者”の台詞が気になっていた。
船員ロッカールームにある、1番から6番の番号が振られた不思議なロッカー。
ここに佇む船員の幽霊によれば、電気室のロックコードが書かれたメモが4番ロッカーの中にあるものの、開け方が分からないらしい。
しかし、マリアは分かったみたいだ。
「今まで3番ロッカーも開かなかったのに、今は開いてるだろう?」
「ええ」
「それは1番と2番のロッカーを開けたからだ」
「どういう意味ですか?」
するとマリアは3番ロッカーを閉めて、2番ロッカーも閉めた。
「これで、3番ロッカーは開かない」
「……本当だ」
すると、それまで開いていた3番ロッカーに鍵が掛かってしまった。
「答えは『足し算』だと思う。1と2を開けたら3が開いたわけだから」
「それじゃ、4番を開けるには……」
もう1度マリアは2番と3番を開け、2番だけを閉めた。
これで、1+3となったわけである。
すると……。
ガチャ。
「開いた!」
マリアの読み通り、4番ロッカーが開いた。
「! 開いたのかい?」
船員が驚いたようにやってくると、4番ロッカーの中を覗き込んだ。
「ロックコードは『1689』か。よし、これで……!」
船員は番号を読み上げると、ロッカールームを出て行った。
因みに幽霊であるにも関わらず、ドアを擦り抜けようとせず、ちゃんとドアを開けて出て行く所が何とも……。
これは恐らく機関長が言う通り、船員達に死亡の自覚が無いからだろう。
稲生達もそのロッカーを見たが、そこには葉書サイズの紙に大きく手書きで『1689』と書かれているだけだった。
「ユウタ、5番と6番も開けてみよう」
「あっ、そうですね」
この調子で5番と6番も開けてみた。
すると5番ロッカーには、ノートが入っていた。
キャンパスノートと呼ばれる、A4サイズの大きさである。
「日本語……」
開いてみると、日本語が書かれていた。
『“魔の者”の正体についての考察
魔道師達を襲う“魔の者”だが、彼らは昔から存在していたわけではない。いや、“魔の者”を操る悪魔は別に存在し、それは前からいるのだろう。だが、現時点ではそこまでの調査が明らかではないので、“魔の者”についての考察だけを述べたいと思う。“魔の者”が悪魔の類でありながら、何ゆえ人間を対象としないのかが疑問視されていた。その点に着目し、そもそも“魔の者”が取り沙汰されるようになった時期を考えると、1つの仮説が成り立って来る。“魔の者”がマリアンナ師をまず襲ったわけだが、その後で襲われたクレア師やジェシカ師においても、共通すべき点は人間時代に「女性として」不遇の時代を送った経験がある。これが何を意味するのかは定かではないが……』
「ユウタ、何て書いてあるんだ?」
「えっ?」
「私は、日本語を読むのがあまり得意じゃないんだ」
(あ、そうか……)
稲生とは普段、英語で喋っているのだった。
「“魔の者”についての考察文のようです。誰が書いたかは分かりませんが……」
「何でそんなものがここにある?」
マリアは眉を潜めた。
「えっと……何ででしょうね?」
6番ロッカーには青い宝石のようなものが入っていた。
「待てよ、これは……」
稲生はそれを拾い上げて、サンモンドからもらった星型のブローチにはめてみた。
果たして、それは無くなっていたもう半分の宝石だった。
「これは……退魔の効果のある魔法具だな」
マリアは覗き込むようにしてそのブローチを見た。
「そうなんですか?」
「これで“魔の者”を倒す、何かの道具になるんだろう」
「ますますこっちが有利になるわけですね。ありがたいです」
「……だといいんだけどな」
ロッカールームを出たが、全く停電が復旧する見込みが無い。
「何をやってるんだ、あの船員は……」
マリアが文句を言うと、稲生は、
「きっと、電気室では直せない状態なのかもしれませんね」
「いや、そんなことは無いんじゃないのかな」
「えっ?」
「だって、あの船員、あそこにいるぞ?」
「えっ!?」
確かにロッカールームを飛び出した船員が、電気室の前に佇んでいた。
「どうしたんですか?早くロックの解除を……」
「それが……できないんだ……」
「は?」
「さっきから1689と打ち込んでるのに……開かないんだ……。これは一体……どういうことなんだ……?」
ドアの横にはテンキーがあって、それを打ち込む仕組みのようである。
もう1度船員が1689と打ち込んだのに、確かに開かなかった。
「えー?まさか壊れてるのか?」
「そんな……」
稲生は4番ロッカーから持ち出したメモをポケットから取り出した。
「68……あ、逆だ。1689……だな」
一瞬、稲生はメモを逆さまに出してしまった。
「いや、ちょっと待って!」
マリアが稲生からメモを取った。
「あっ」
「これ……」
マリアはメモ書きをひっくり返した。
すると手書きの数字は、『6891』となる。
「正しいのはこっちなんじゃないか?」
「あ……」
稲生はその数字をテンキーに打ち込んだ。
すると……。
ピーン♪……カチャ。
「あっ、開いた」
電気室のドアロックが解除された。
中に入る稲生達。
「これだ……。このブレーカーが……落ちていたんだ……」
船員はOFFの位置にあるブレーカーをONの位置にガチャンと下げた。
すると、電気室内の照明が点灯した。
「おっ、明るくなった」
「よし。これで、あとは……」
船員は再び電気室の外に出て行った。
もしや、機関室のドアを開けてくれるのだろうか。
停電が復旧し、明るくなった廊下。
しかし、電力を復旧させた船員は機関室に行かず、何故か廊下の奥へと行ってしまった。
「まあ、いいや。ということは……」
「やった……。やっと……電気が復旧した……。これで、もう……安心……」
先ほどの新人通信士がホッとした様子になり、“成仏”していった。
これでまたソウルピースが手に入る。
「あとは……まだいるのかな?」
「さっきの船員はどこに行ったんだ?」
「行ってみましょう」
稲生達は明るくなった廊下の奥へ向かった。
廊下の奥にはドアがあり、そのドアには『通信室』と書かれていた。
さっきの船員もまた通信士だったのだろうか。
とにかく、そこへ行ってみることにした。
が、
「!!!」
廊下の照明が次々と爆発した。
せっかく明るくなった廊下がまた暗くなり、そこには、
「どォコォへ行くのォォォォォ……!?マァマァ……!」
“魔の者”がポルターガイストを起こし、実力行使に出たらしい。
「しばらく戦いは見合わせてやろうと思ったけど、向こうが宣戦布告してきたんじゃ、しょうがないよね?」
「そ、そのようです」
マリアは魔道師の杖を出した。
「少しは痛い目を見ないと、分からないようだな」
マリアは臨戦態勢に入ったが、稲生は、
(今の……『マァマァ』って何だろう……?)
と、“魔の者”の台詞が気になっていた。