報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「戦いの後の療養」

2015-12-15 19:41:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月13日18:00.魔界アルカディア王国・王都アルカディアシティ魔王軍病院 稲生勇太]

 傷痍軍人の治療に当たる病院だが、稲生達のように軍隊によって災害から救助された者も収容されるらしい。
 日本の自衛隊にも災害派遣という任務があるように、こちらの政府軍にも似たような任務がある。
 稲生達の救助にあっては、軍隊による、船舶事故からの生存者救出活動の一環であったようだ。
 アルカディア王国には、日本の海上保安庁に相当する組織が無く、海の安全に関しても軍で行っているという。
 稲生が収容された病室は個室で、これはどうもイリーナらの働きによるものっぽい。
 当然、マリアとは別室だ。
 で、そこでイリーナとだいぶ話し込んだ。
 サンモンドは新弟子である稲生の戦闘能力のデータを取る為に、つかず離れずの距離を取った協力体制を取ったのだろうという話もあった。
 マリアの精神的ショックは大きく、それは肉体的なダメージよりも大きいので、しばらくの間は入院が必要とのこと。
 稲生にあっては、本当に明日退院できるくらいダメージも軽かったとのこと。
 クレアとジェシカの追悼式は既に終了し、イリーナが出席したこと。
 マリアの再登用儀式にあっては、マリアの退院後に行うこと……。
「ヘタすりゃ、年越しちゃうかもねー」
 だそうだ。

 稲生は夕食が終わった後、窓の外を見ていた。
 常春の国アルカディア、霧の都アルカディアシティ。
 夜でも霧に包まれた町であるが、たまに霧が薄くなる日や時間帯がある。
 今夜は比較的、霧が薄いらしい。
 その理由は分からないが、町の郊外に高くそびえる大火山、正式名称は忘れたが、日本人移住者は『魔界富士』と呼んでいるという話を聞いた。
 形が富士山に似ているからである。
 その魔界富士の火口部分が溶岩で赤く光る時、霧が晴れるという言い伝えがあるそうだ。
 で、実際その部分が夜空を焦がしていた。
 病院の外は大通になっていて、馬車や魔界高速電鉄の路面電車が行き交っている。
 もともと何も無い荒野に王都を作った大魔王バァルは、何も無いことをいいことに、札幌や京都、東京の銀座の町のように碁盤の目に城下町を作ったとされる。
 電力は火山活動を利用した地熱発電や、国内にある大河と豊富な地下水脈からの水力発電で賄っているという。
「……よし!」
 稲生は何を思い立ったのか、部屋を飛び出すと、マリアの部屋に向かった。
 病院の入院病棟は南館と北館に分かれており、主に女性を南館、男性を北館に収容することが多かった。
 魔界政府軍においては、まるで昔の共産主義国の軍隊の如く基本的に男女平等である。
 これは魔族にあっては、基本的に男女共にそんなに体力差が無いことを意味する。
「マリアさん!」
 稲生が急いでマリアが収容されている南館に入り、彼女の病室に飛び込んだ。
「明日……ああっ!?」
「!!!」
 病室に入ると、マリアは上半身裸だった。
 びっくりして、両手で胸を隠すマリア。
「すすす、すいませんでしたーっ!」
 慌てて出て行く稲生であった。
 マリアは入浴できる状態ではなかったので、看護師に体を拭いてもらっており、イリーナが立ち会っていたのだった。
「別にそんなに慌てなくても、ユウタ君なら別にいいのに……ねぇ?マリア?」
「い、いえ、その……」
「何も、今さらそんなに恥ずかしがらなくても……」
「いや……逆に、ああいう反応されると、むしろ恥ずかしいです……」
「あー……そういうもんか」

 再び北館に戻る稲生。
「あー、ビックリした……!」
「ん?どうした、ユタ?もう退院できたのかい?」
「そ、その声は……」
 振り向くと、そこにいたのは……。
「あれ?……ああ!威吹じゃないか!」
「……一瞬、ボクのこと忘れただろ?」
 妖狐の威吹であった。
 大魔王バァル戦で功績を上げ、大水晶に閉じ込められていた、恋仲で巫女のさくらと今は一緒に暮らしている。
 それまでは稲生の家で寝食を共にしていたわけだが、さくらとの結婚を機に腰まであった髪を後ろで束ねていたのを肩の所で切っている。
 形態も変わり、人間界にいた頃は両耳を尖らせた状態(いわゆる、『エルフ耳』)だったのが、今では頭から狐耳が出て、両目も少し狐目のように細くなった印象だ。
「いや、だいぶ印象が変わったからさ……」
「ここに入院したと聞いて見舞いに来たんだが、元気そうだな」
「おかげさまで。明日には退院だよ」
「そうなのか」
 病室に戻る稲生。
「果物、ここに置かせてもらうよ。一部は社(やしろ)の畑で取れたものだ」
「あー、ありがとう」
 威吹は果物の入ったカゴを稲生の横に起き、
「自分が食うのかい!」
 そこに入っていたバナナを食べ始めた。
 バァル戦での働きを認められた威吹は、新政府からアルカディアシティ内での市民権と神社を建ててもらう約束を取り付けた。
 地下鉄の終点駅まで行った、長閑な場所に住んでいると聞く。
 稲生との獲物盟約は、さくらとの旧盟約が再起した為、白紙となった。
 妖狐の世界では、二重盟約は認められないからである。
 盟約は解消されたが、盟友としての付き合いは続いており、今でも手紙のやり取りはしている。
 何より、『ボク達、結婚しました!』の葉書は絶対誰かの入れ知恵であると確信している。誰かの!
「魔道師になって、かなり大変な目に遭ってるみたいだな。ボクで良かったら、いつでも力を貸すよ」
「ありがとう」
「ここなら、むしろ安全だからな」
「安全?」
「ああ。こう言っては何だが、悪い悪魔……まあ、悪魔に善いも悪いも無いが、こちらに敵対する悪魔……と言えばいいか。それに関しては、王都内ではすぐに取り締まられるので、“魔の者”とやらであっても、悪さはできないと思うよ」
「そうなのか?」
「キミ達がいるにも関わらず、新兵器を放つくらいの迅速さだからね。要は件の船が、この町に近づき過ぎたことが、“魔の者”の敗因の1つってわけだ」
「よく知ってるなぁ……」
「新聞で報道されていたからね」
 威吹は着物の懐からアルカディア・タイムス日本語版を取り出した。
「ここのマスコミも、ツイッター並みに情報が早いなぁ……」
 ユタは呆れた。

 威吹とさくらの新婚生活も、そろそろ落ち着きを取り戻したらしい。
 威吹は自分の子供が欲しいと思っているが、何しろそこは異類婚姻譚のようなもの。
 受精率は同類同士と比べ、低い傾向にある。
「キノとどっちが早いかな?」
「! オレが勝つ!」
 稲生はあえて、同じく(正式にではないが)栗原江蓮を嫁にした鬼族の蓬莱山鬼之助の名前を出してみた。
 江連の方が折れて、『高校を卒業してから一緒に暮らす』と約束したらしい。
 威吹のライバル心に、一瞬火が付いた。
 どちらも人間の女性と結婚しているだけに、そこはアレなのだろう。
「まあ、キノはあんまり子供が好きそうには見えないしね」
「賽の河原で、だいぶ稼いだらしいからな」
「まだ行ってたの、あそこ!?閻魔庁の本庁勤務でしょ!?獄卒の中ではエリート官僚の……」
「ところがその仕事が退屈だってんで、『現場回り』と称して入り浸っているらしいんだ。あいつらしいよ」
「はははっ、なるほど……」
 稲生と威吹は笑った。
「明日には退院か。もう1人の魔道師はどうなんだ?」
「もう少し治療が必要らしいから、しばらく入院するみたいだよ」
「そうなのか。もし泊まる所が無いんなら、ボクんちに来なよ」
「いいのかい?せっかく、さくらさんと一緒にいるのに……」
「いや、いいよいいよ。たまには来客があった方がいい」
(来客が無いのか?)
「あ、でも、ユタの宗教的な理由で神社はダメか」
「いや、別にそこの神像を拝むわけじゃないしさ」
「積もる話もあるから、待ってるよ」

 懐かしい盟友との話は、消灯時間になって看護師から追い出されるまで続いたという。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小説の途中ですが、ここで日記を掲載します。

2015-12-15 12:54:52 | 日記
 ものに狂った沖修羅河童厳虎独白に出入りしている学会員の沖浦爺さんではないが、功徳を書いてみよう。

 今日、施設警備検定2級の合格発表があり、私の番号の所にマルがしてあった。
 これは言うまでもなく、合格を意味する。
 これで私は交通誘導警備検定2級、雑踏警備検定2級と続いて3つ目の資格試験に合格したことになる。
 車の運転免許と同じで、合格したからイコール資格保有者というわけではない。
 合格者に与えられる証明書をもらい、その他もろもろの書類を揃えて、地元の公安委員会に提出する。
 その窓口は、警察署の生活安全課が担当している。
 国家公安委員会が各都道府県公安委員会に管理・運営を委託しているだけであって、大元は国家公安委員会であるところも車の運転免許と同じか。
 つまり、国家資格である。
 アンチは否定するだろうが、私なりに足しげく大石寺に通った結果であると信じたい。
 確かに、顕正会には無かった功徳であろう。
 あいにくと御礼参りは来年になってしまうが、資格証を引っ提げて登山参詣できれば良いのかなと思っている。
 実は書類を揃えて警察署に出したところで、車の運転免許と違い、資格証ができるまで概ね1ヶ月ほど掛かるのが実情だ。

 社会の底辺業ではあるが、少なくともこの業界では一生食って行く保証は手にしたわけである。
 業界では貴族扱いされる地位に達するのも、夢ではなくなった。
 元々が底辺業だから、そこで貴族扱いとされたところで、あまり自慢ではない。
 しかし、この業界に入った時、まず私が取れることはないだろうと最初から諦めていた資格を、図らずも手にしてしまったことは何とも不思議な現証である。

 思えば現在の職場で、
「もうすぐこの現場も解散するし、今のうちにどんどん資格を取ろう!」
 と、上長達が鼓舞し、率先して取りに行く姿を見ていたが、
「俺は別だろうな」
 と思っていたところ、
「お前もいい社歴なんだし、そろそろ何か取れ」
 と、上長達に背中を押され、よろよろと前に出たのがきっかけである。
 それでまず交通誘導検定2級を取り、
「それじゃ次は雑踏だ!」
 と、また背中を押されて前に出され、それでまた勉強したつもりになり、一緒に取りに行った上長をして、
「難しい試験だったな!」
 と言っていたところ、それも何とか合格できて、ホッと一息ついていたところ、
「ユタ!喜べ!今度は施設2級の枠が回ってきたぞ!お前の宗教で言うところの、功徳ってヤツだな?ああっ!?」
 と、隊長に背中を押されたのが今回である。
 さすがに、
「いやいやいや!あんな難しいの、ムリっス!」
 と固辞した。
 何故って?
 覚える文言が明らかに先の2つの試験と比べて多いし、警戒杖の操法とか、運動が苦手な私には無理そうな実技科目も入っていたからである。
 それでも、
「いいから行けっ!」
 と、特攻命令が下され、突撃していったのが今回。

 で、何とか旗印を挙げることができましたよ〜というわけだ。

 もっとも、来年からの職場においても、相変わらずヒラのままでありますが。
 新しい現場の隊長さん方は私を歓迎して下さったが、支社の課長・副部長とかは、前の現場が無くなるのを機にもっと左遷的な所に飛ばしたかったらしい。
 まあ、私は猫型タイプで、犬型人間のように上に尻尾を振ったり、揉み手をするタイプではありませんが。
 ところが本社がその話を聞いたところ、
「何で国家資格3つ目に挑戦できる人間をそんな辺鄙な所に飛ばすんだ!?……え?実務能力が?でもそんなの関係ねぇ!はい、おっぱっぴー!特にトラブルは起こしてないだろう?もっとちゃんとした所に配属せよ!」
 となり、左遷は免れたもよう。
 本社と支社にあまり温度差があることは会社的に良くないことだろうが、私には功徳(悪運?)でしたw

 実は次の現場は、地下鉄一本で末寺に行ける場所だったりします。
 え?今の所だって丸ノ内線一本で行ける場所だろうって?
 ……そうだったかな?いや、私は鉄道に疎いんでね……(伏し目)。

 とにかく、これで来年からは給料もアップだ!
 功徳〜!
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「沈没船から脱出せよ」

2015-12-15 10:31:15 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:晴 クイーン・アッツァー号(左舷側デッキ→船首甲板) 稲生勇太]

 船首が上になって沈み行く豪華幽霊船。
 稲生は坂道となったデッキを駆け抜けなくてはならなくなった。
 右舷側を走った時とは違い、モンスター達が待ち構えているということはなかったが、それとは別な危険が潜んでいた。
 海に転落する危険というよりは、むしろ……。
「でーっ!?」
 船が大きく傾いていることにより、サイドデッキに置かれていた物が稲生に向かって飛んで来ることだった。
 具体的にはベンチや消火器、ゴミ箱やクーラーボックスまで!
 飛んで来る度に稲生は床に伏せたり、柱の陰に隠れたりしてやり過ごさなくてはならなかった。
 極めつけはドラム缶や救命ボートまで!
 右舷側より左舷側の方が散らかっていたようだ。
 救命ボートは“魔の者”によって壊されたと酔っ払い乗客が書き残していたが、これを見る限り、そうでもないように見えたが……。

 それでも稲生は徐々に傾斜が急になっていくデッキを駆け抜け、何とか船首甲板まで辿り着くことができた。
 すると、船首部分の、往時はヘリポートとして使われていた所の真上に空飛ぶ船が待機していた。
 大きさはこのクイーン・アッツァーよりは小さいが、それでも日本の海上保安庁の巡視艇くらいの大きさはあるだろうか。
「マリアさん!」
 その前に稲生は、甲板からラウンジに入るドアを開けた。
 船底と同様、そこもソファやテーブルが散乱する有り様だったが、それでもマリアは無事だった。
「大丈夫ですか!?」
「ユウタ……」
「大丈夫ですか?歩けますか?」
「何とか……」
 稲生はマリアの手を引いて、ラウンジから再び船首甲板に出た。
 だが、そこに出たところで、マリアが倒れ掛かった。
「もうすぐですからね。頑張りましょう」
 稲生が手だけでなく肩も貸しながら、何とか旧ヘリポートまでやってきた。
 と、同時に飛空艇から魔王軍の救助隊員が降り立った。
「生存者2名を発見!」
「魔道師の男女2名、情報通りです!」
{「了解。2名の状況を確認し、直ちに救助せよ」}
「了解!」
「我々は救助隊の者だ。キミ達、ケガの具合は?」
「僕は大丈夫ですが、マリアさんが歩くのも困難な状態です」
「分かった。……こちら2番、生存者のうち、女性の方の疲弊が激しいもよう。ストレッチャーの降下を求む」
{「了解。すぐに降下する」}
 ロープに括り付けられたストレッチャーが下ろされ、マリアはそこで寝かされた。
 もちろん、途中で落下しないよう、ベルトで固定された。
 マリアが先に飛空艇に向かって吊り上げられる。
「キミは直接上がろう」
「えっ?」
 救助隊員といっても、そこは魔王軍の軍人。
 そして魔王軍といえば、人間の軍人よりも魔族の軍人の方が多いのが常。

 ゴゴゴゴゴゴゴ!

「うわっ!?」
 船が更に大きく傾いた。
 稲生がバランスを崩し、ラウンジの方に向かって転がりそうになるが、後ろから肩を掴まれて上昇した!
「えっ?」
「生存者の1名にあっては、直接救助に当たる」
「尚、既に確保。これより、直ちに艇内に戻る」
 救助隊員達の背中にはコウモリのような翼が生えており、稲生はそのうちの1人に後ろから抱えられ、バッサバッサという翼の羽ばたきを聞きながら飛空艇へと連れて行かれた。
「生存者2名の救助、完了しました!」
「ご苦労!医療班にあっては、生存者2名を直ちに医療室に搬送せよ!」
「了解!」
「操舵室、操舵室!直ちに現場を離脱し、王都へ向かえ!」
{「了解!」}
 飛空艇が低空飛行から上へ上昇する。
 医療室に運ばれる際、稲生が窓から外を見た光景は、海に深く沈んで行くクイーン・アッツァー号の姿だった。

12月13日06:15.飛空艇1号艦“ハラーショ”号・医療室 稲生勇太&マリアンナ・スカーレット]

「ちょ、ちょっと待ってください……」
 稲生は頭を抱えていた。
 いや、別に自分のケガが意外と重かったとか、マリアが実は瀕死の重傷だったとか、そういうことではない。
 室内に掲げられていたカレンダーと時計を見て、かなり時間が経っていたことに頭を抱えていたのだった。
「魔界で流れる時間と人間界で流れる時間で違うという話は聞いていますが、同じ魔界の海の上にいて、この流れは何ですか?」
 稲生の治療に当たっている軍医に聞く。
「幽霊船のことだから、私にも分からないねぇ……。まあ、王都にお師匠さんがお待ちかねでいると思うから、その方に聞くといいよ」
 とのこと。
 医者だけに随分とクールな回答だが、まあ、確かに医療の範疇ではないか。
「まあ、安心しなさい。まだ2015年だから」
「はあ……。(そういうことじゃないんだよなぁ……)」
 稲生のケガは、あっちこっちに湿布を貼る程度だった。
 あと、体力をガン無視した動きのため、点滴も打たれた。
「マリアさんの方は大丈夫ですか?」
「正直、キミよりダメージが大きい状態だ。精神的にタフな魔道師さんだが、さすがに“魔の者”との戦いは凄まじかったみたいだねぇ……。すぐに王都の軍病院に搬送して、入院措置が取られるだろう」
「そうですか……」
「まあ、キミも今日1日は病院に泊まってもらうことになるだろうね」
「1日だけですか!」

[同日07:00.魔界アルカディア王国・王都アルカディアシティ(魔王軍病院) 稲生、マリア、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

「2人とも、無事で良かったわ〜」
 イリーナにハグされる稲生。
 持ち前の巨乳が稲生の顔に当たっても、お構いなしである。
 もっとも、『2人とも』と言っても、マリアは既に処置室に運ばれているため、ここにはいない。
「あー、そうそう。勝手に船に“ライディーン”ぶっ放した安倍首相は張っ倒しておいたからw」
「ええっ!?」
「あとルーシー女王にもクレーム出しておいたからw」
「いいんですか!?」
 さすがは、大魔道師はぶっ飛んでいる。
 稲生はそう思った。
「もっとも、女王様は『ハルのヤツ、また勝手なことをやって……』って、知らなかったみたいだけど」
「そうですか」
「まあ、マリアは確かにちょっと体も精神もボロボロになったけど、命の心配は無いし、ユウタ君はこの通り元気で、1日入院だけでいいから、話は後で色々しようね」
「は、はい」
 病院の外は相変わらず、“霧の都”の名に相応しい霧が発生していた。

 本当に“魔の者”は倒せたのか。
 サンモンドの話によれば、『また現れる』とのことだが……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする