報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「海底に沈む遺産」 6

2014-03-22 00:18:08 | 日記
[同日22:00.TDL前→タクシー車内 敷島孝夫&アリス・フォレスト]

「○○ホテルまで、お願いします」
「はい」
 TDL閉園時刻、敷島とアリスは宿泊先のホテルに戻るのにタクシーに乗り込んだ。
「結局、閉園までいたな……」
 敷島は疲れた様子で、リア・シートにもたれかかった。
 対して、アリスは興奮冷めやらぬ状態だった。
「いやホント、若いっていいわ……」
「? 今日は楽しかったよ。まさか、本当に連れてってくれるなんて思わなかった」
「『男子たるもの、二言発するを許さず』って死んだ祖父さんが言ってたんでね」
「Nigon?」
「まあ、だから三言言ってたけどw」
「……難しいファミリーだったのね。シキシマのキャラクターも、納得だわ」
「何か一瞬ムカついたんだが……」
「それにしても、本当に日本の物価って高いわね」
「日本の物価が、というのも去ることながら、元々日本のディズニー・リゾートの値段がそもそも高いんだよ。土産買うのも大変だ」
「そうだね。フロリダの方が安いかしら?」
「ビザ切れた時にでも、行ってみたら?」
「財団の関係でロング・ステイ・ビザだってこと、知ってるくせに」
「はは……」
 財団がアリスをアメリカから研究者として招聘し、長期滞在ビザの発給が降りた。
(それにしても……)
 と、敷島は園内でのことを思い出した。
 パレードを輝かせた目で見ていたアリス。
 その姿は、『狂科学者の孫娘』であることを忘れさせるくらいの無邪気なものだった。
(あれだけ見ていると、フツーのコなんだけどな……)
 因みに今は、また研究者の目付きに変わっている。
 お土産に買ったティンカー・ベルのぬいぐるみ。これをしげしげと見つめていた。
 欲しいのかと思って敷島が買ってあげたのだが……。
(フェアリー型ロボットは需要がある……。ファンシーキャラとして子供の相手とか、はたまたこの小さい体に飛行能力を持たせて軍事的な諜報ロボットとか……暗殺用とか……)
 完全に研究資料用だった。
(妖精とかが好きなのか。意外と女の子っぽいところもあるもんだ)
 それに気づかない敷島は、ある意味で幸せ者なのか。
(問題は、いかにフェアリー並のハイ・レベルな飛行能力を持たせるかか……)

[3月22日08:30. ホテル内レストラン 敷島&アリス]

(少し、ゆっくりしちゃったな。まあ、チェックアウトまでまだ時間あるし……)
 敷島は朝食会場に足を運んだ。
 途中にエミリーがいて、やはり寝坊しかけたアリスを起こし、レストランまで運んだという。
(寝起きがいいんだか悪いんだか分からんヤツだな……)
 朝食はパンにコーヒーという、コンチネンタル式だ。
 ただ、パンも飲み物もおかわり自由らしく、
「アリス……お前なぁ……」
 予想通りというか、皿に何個もロールパンやら食パンを何枚も乗っけてドカ食いしていたのだった。
 これで太らないのだから、実に便利な体質だ。
「Hi.Good morning.」
「ハイじゃねーし。よく食うなぁ」
「本当はイングランドのタイプがいいんだけど……」
「イングリシュ・ブレックファーストか。あれはかなりボリュームがあるらしいな」
 実に、アリス向きということか。
「で、今日の予定は?」
「ああ。この後ホテルを出たら、財団本部に行くよ」
「どこか遊びには?」
「それは本部での解析の進捗具合によるな。もっとも、もうホテルは引き払うから、ディズニー・リゾートは無いけどね」

[同日10:02.東京メトロ東西線浦安駅 敷島、アリス、エミリー]

「そういえば、本部の近くで、ミクがライブやるんだった。それも見に行こう」
 敷島は思い出したかのように言った。

〔まもなく2番線に、快速、中野行きが参ります。……〕

「おっ。そういえば、東西線には快速があったな。ちょうどいい。これに乗ろう。エミリー、やっぱり新宿へは高田馬場駅で乗り換えた方がいい?」
「イエス。大手町駅での・お乗り換えは・お勧め・できません」
「分かった」
 地下鉄だが、高架駅のホームに電車が滑り込んできた。
 因みに浦安駅からTDRへ行くには、路線バスに乗り換えないとダメなので、非推奨ルートとされているが……。

〔浦安、浦安。快速、中野行きです。……〕

「あー、思い出した」
 敷島はそこで気づく。
「大手町駅の東西線ホームと丸ノ内線ホームって、かなり離れてたなぁ……」
 元・大手町のサラリーマンだった敷島。

〔2番線は、発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕

「昔、俺が働いてた会社がそこにあってだなぁ……」
 電車が走り出す。
「で、どこで人生間違えたの?」
 アリスはニヤリと笑った。
「間違えたって言うなや!」

〔この電車は東陽町、大手町、高田馬場方面、快速、中野行きです。次は東陽町、東陽町です。東陽町から先は、各駅に止まります〕

「南里研究所への出向を命じられた時が運のツキ……じゃなくて、運命の分かれ道だったんだよ」
「その選択肢を間違えて、人生の迷子になった瞬間って?」
「まさかシンディがウィリーを刺すとはなぁ……!あのポンコツ!……あ、悪い」
「一瞬ムカついたけど、シキシマの気持ちも分からなくは無いね。確かに、シンディのあの行動はナシだわ」

 かくいうアリスもまた、シンディの暴走による養祖父の殺傷で人生を大きく変えさせられた1人である。
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“アンドロイドマスター” 「海底に沈む遺産」 5

2014-03-20 19:57:50 | 日記
[同日15:00.石川県金沢市 十条の自宅 十条伝助]

「なに?鍵が見つかった?」
 十条は自宅で平賀からの電話を受けていた。
{「先生なら何かご存知ではないかと思いまして……。シンディの胸の中からも出て来たことですし……」}
「確かにワシはウィリーと同じ釜の飯を食った仲ではあったが、全てを知っているつもりは無いぞ」
{「ご存知ないですか」}
「キミ達は何か仮説を立てたのかね?その上でワシに質問しておるのかね?」
{「はあ……。シンディの胸の中から出て来たのは黄色い鍵なんです。で、今回、浦安で見つけた鍵は緑でした。まあ、どちらも塗装はだいぶ剥げてますが……」}
「それで?」
{「敷島さんは、JR線や東京の地下鉄のラインカラーと何か関係あるんじゃないかと見ています」}
 平賀の回答を聞いて、十条は思わず笑いがこぼれた。
「さすが敷島君じゃ。発想が発明家並みに突拍子も無い。でも、それが何だと言うのかね?」
{「それらのラインカラーが交わる場所というのが新宿。つまり、新宿に何か謎が隠されているのではないかというのが、敷島さんの仮説です」}
「本当に面白い男じゃのう。南里が傍に置いた気持ちも分かるわい。もっとも、寿命の削減と引き換えにはなるじゃろうがな」
{「新宿には財団の本部もありますが、でもだからといって、やっぱりまだ仮説としても弱いですね」}
「いや、意外と灯台下暗しというヤツで、財団本部に隠れてたりするかもしれんぞ?」
{「ええっ!?」}
「まあ、それは冗談じゃがな。しかし、灯台下暗しはあり得る。意外と財団本部の近くにウィリーの隠しアジトがあったのかもしれんぞ?」
{「警視庁など公安関係がガッツリ捜索したはずですが……」}
「その一枚上手を行ったのがウィリーじゃろう?日本の治安当局には1度も拘束されずに済んだのじゃからな。とにかく、浦安で発掘したモノについては、本部に送ったわけじゃな?」
{「はい。自分も後から行きますが、まずは本部のチームにも精査してもらいます」}
「休み返上で大変じゃの」
{「自分は南里先生に師事していた者として、ウィリーの謎を追う義務がありますから」}
「南里のヤツ、偉い弟子を持ったものじゃ。敷島君とアリス嬢はどうするのかね?」
{「今日は市内のホテルに一泊するみたいですよ。で、明日、本部に向かうそうです」}
「おっ、そうかね。それじゃ、気をつけてやってくれ。……うむ」
 十条は電話を切った。
「博士。お茶をお持ちしました」
 そこへキールが部屋に入ってきた。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす、か……」
「は?」
「違うな。死せるウィリー、生ける弟子達を走らす……じゃな」
「???」

[同日同時刻 千葉県浦安市内のビジネスホテル 敷島、アリス、エミリー]

「今日はここで一泊するぞ」
「何だ。オフィシャル・ホテルじゃないのね」
「贅沢言うなや。この3連休で、どこも満室だよ。空いていただけラッキーだと思わなきゃ」
「敷島さんの・仰る通りです」
 エミリーは微笑を浮かべて同調した。
 フロントでチェック・インの手続きをする。
「それでは敷島様、本日より一泊のご利用ですね」
「はい」
「シングルお一部屋とツインお一部屋を御用意させて頂きました」
「とうもー」

 で、部屋に向かう。
「これでも駆け込みセーフだったんだぞ。ネット予約の際、どちらも『残り1部屋』だったんだからな」
 敷島はまず1つの部屋のドアを開けた。
「あー……と、こっちはツインか」
「じゃあエミリー、シングルね」
「イエス。ドクター・アリス」
「こら、違うだろ」
「何が?」
「何が、じゃない。マンションと同じ。ここが、オマエとエミリーが使うんだよ。エミリーも頷かない」
「すいません」
「早いとこ、エミリーの整備してやれよ。じゃあ、俺は隣の部屋にいるから」
 そう言って、敷島は部屋を出て行った。
「シキシマって、難しいね」
「イエス。ドクター・アリス」

[同日17:30.同場所 アリス・フォレスト&エミリー]

「うん。異常は無いね」
「ありがとう・ございます」
 エミリーの整備をしていたアリス。
「あとは充電して……」
 そこへ電話が掛かって来た。
「あっ?」
「私が・出ます」
 エミリーは電話を取った。
「もしもし」
{「あー、エミリーか。俺だけど……」}
「敷島さん。ドクター・アリスに・替わります」
「ん?アタシ?」
「イエス。敷島さんから・です」
 アリスは受話器を受け取った。
「何よ?」
{「エミリーの整備は終わったか?」}
「どこかで監視でもしてんの、アンタは?グッド・タイミングで!」
{「まあ、ただの偶然だ。それより、ディズニー・リゾート行きたいか?」}
「What?」
{「今からならチケット安く買えるから、パレードだけでも見に行けるぞ」}
「……行く!」
{「じゃあ、ロビーで待ってるから。エミリーはどうする?」}
「エミリーは、残りのバッテリーが……」
「ドクター・アリス。私は・ここに・残っています」
「そ、そう?エミリーは充電させておかないとだから」
{「そうか。じゃあ、タクシー呼んどくから急いでね」}
 敷島は電話を切った。
「I’m so happy!」

[同日17:45.ホテル前→タクシー車内 敷島孝夫&アリス・フォレスト]

「ディズニーランドまでお願いします」
「はい、ありがとうございます」
 敷島はホテルのフロントに頼んで、タクシーを予約していた。
 ようやくアリスがやってきて、早速タクシーに乗り込んだ。
「こんなこともあろうかと、ネットでチケット購入しておいたんだ。パレードだけでなく、夕飯もそこで食えるな」
 ロビーでのんきに待っていたら、大歓喜のアリスに抱きつかれた。
 意外とアリスも腕力が強く、危うく腰を折りそうになったらしい。
 今更ながら欧米人の感情表現の強さを思い知った敷島だった。
(しかし、こんなに喜ぶとは……。あっ、そうか)
 そこで敷島は気が付いた。
 アリスは少なくとも現存している記憶の中で、母国のアメリカではテキサス州から出たことがないという。
 アメリカのディズニーランドはフロリダ州にある。ということは、アリスは本家本元のランドには行ったことが無いということだ。
 そして、それは同時に……。
「アリス。ディズニーランド自体、初めてか」
「そうなの!シキシマは?」
「俺は3回くらい行ったな」
「そんなに!?」
「1回目は家族旅行。2回目は中学ん時の修学旅行で、3回目は高校の卒業旅行で行った」
「凄い、スゴーイ!」

 ホテルからTDLまで、その移置関係上、夕日に向かって進むことになる。
(イクスピアリで茶を濁そうとも思ったけど、これだけ楽しみにしてるんなら、入場までしてもいいな)
 敷島は取りあえず、チケット購入を後悔せずに済んだ。
 それどころか、アリスの別の一面を敷島は見ることになるのだった。
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“アンドロイドマスター” 「海底に沈む遺産」 4

2014-03-20 02:20:07 | 日記
[同日09:30.千葉県浦安市内、ビル解体工事現場 敷島孝夫、平賀太一、アリス・フォレスト、エミリー]

 東日本大震災がもたらした被害は、地震そのものの大きな揺れや大津波だけでは無かった。
 関東圏では液状化現象が発生し、それによる建物やライフラインへの損害が深刻であった。
 中でも東京湾沿岸部の埋立地ではそれが如実であり、今なおその爪痕や住民生活への影響を見ることができる。
「ふむ……」
 敷島達が向かった現場は東京湾に程近い場所で、液状化現象の被害が大きい地域の1つだった。
 元々はバブル期に建てられたマンションだったが、先の影響で建物が大きく傾き、住民達は皆逃げ出す有り様で、復旧を諦めたオーナーが止むなく解体を決行した次第である。
「これですか」
 現場の一角にそれはまとめられていた。
 それは明らかに、ロボットの部品の一部だった。
「これは……」
「バージョン・プロトタイプね。個体番号までは分からないけど、時期的にそうだと思う」
 アリスが、ほぼ確定的に言った。
 何故なら、この部品が見つかった場所についてだ。
 マンションの基礎・土台を支える鉄筋コンクリート製の太い柱の根元で眠っていたという。
 このマンションの定礎は平成元年。築25年だ。
 バージョン2.0の開発が始まったのが、アリスが10歳の時。
 その前の1.0がアリスが5歳の時だというから、更にその前だろうという。
「マンションの建築中に、ウィリーがここに隠した?」
「多分ね。じー様は、アタシを引き取る前も日本に来ていたっていうから」
「何の目的で?」
「そんなの知らないよ」
「あの、ドクター・アリス」
 エミリーが話し掛けた。
「この箱が・気になります」
「それもそうね」
 錆付いた鉄製の小箱。
 縦と横の長さは、スマート・フォンくらい。
 高さが5センチくらいあった。
「開けてみて」
「イエス」
 エミリーは箱を拾い上げると、それをこじ開けた。
 バキッという鈍い音がする。
 その中にあったものは……。
「鍵!?」
 古めかしいスケルトン・キーだった。
 キー・コーヒーのロゴマークみたいな形をしていた。……って!
「どこの鍵だろう?」
 平賀が眼鏡を掛け直してよく見ようとした時、敷島が気づいた。
「シンディの胸の中から見つかったものじゃないですか!?」
「あっ!」
 そしてそれは今、エミリーがペンダントにして持っている。
 現存していた唯一の姉妹機の形見として。
「うーん……先端のギザギザの形は同じみたいですね」
「どこの鍵だか分からないか?」
 敷島はアリスに振った。
「知らないよ」
 アリスは肩を竦めた。
「見たこともない」
「いいや!きっと昔、見たことがあるはずだ!思い出してくれ!」
 平賀が迫る。
「バカにしないでよ!IQ185のアタシが『覚えてない』『見たことない』って言ってるのよ!」
「いや、しかしだな!シンディの鍵といい、この鍵といい、絶対にウィリーが関わっているはずなんだ。間近にいたお前が知らないはずがない!この鍵は間違いなく、ウィリーの……」
「まあまあ、平賀先生。アリスが知らないって言ってるんですから」
 敷島は、平賀をなだめた。
「シンディのメモリーの中に、どういう経緯で胸の中に鍵が埋め込まれたかは分かるか?」
 敷島はアリスに別の質問をした。
「それが全然。実は所々、メモリーが意図的に消去されてる箇所があって、その辺りだと思う」
 工事現場で見つかった鍵は、所々緑掛かっている箇所があった。
 最初、それは鍵の成分が酸化(錆)したことによって出た色だと思っていた。
「皆さん。この鍵は・緑色に・塗装されていた・ようです」
 と、エミリーが言った。
「それがどうした?」
 敷島が聞き返す。
「シンディの・中から・出て来たのは・黄色の・鍵でした」
「黄色?元々成分上、そういう色合いなだけだったんじゃないのか?」
 鍵は黄銅製である。だから敷島は気にも留めていなかったのだ。
「ノー。塗料の・跡が・ありました。錆止めに・塗装したのかと・思っていましたが・その鍵が・緑色に・塗られて・いたので・別の・意味が・あるかと・予想されます」
「別の意味?」
「ただの鍵じゃないってことですかね?」
「うーむ……」
「……そもそも、本当にドアを開けるキーではないのかもね」
 最後にアリスがポツリと言った。
「おっ!何か思い出したか!?」
「全然。でも、じー様のやることだから。まず間違いなく、突拍子も無いことだわ」
「確かに」
「むしろアタシより、プロフェッサー十条の方が知ってるかもしれないよ?」
「おおっ、そうか!」
「よし!早速、十条先生に聞いてみよう!」
 平賀は電話を取った。

[同日12:00.JR新浦安駅前のショッピングセンター 敷島、平賀、アリス、エミリー]

「あれ以上の収穫は無かったですね」
 敷島は車を降りながら言った。
「ま、しょうがないですね」
 平賀が十条に電話したところ、十条は何か知っている素振りを見せた。
『思い出すから、しばし待たれい!』
 という大仰な返事をしておきながら、
『すまん。思い出せん。何か、特別なことを企んでいたような気がするのじゃが……』
 と、結局は肩透かしだった。
「取りあえず、昼食にしましょう。午後には財団本部が見つかった部品の回収に来ますから、あとは財団に任せましょう」
 平賀が言った。
「何だか悔しいなぁ……。もうちょっとで、確信に迫れそうなのに」
 敷島は残念そうに呟いた。
「黄色と緑ねぇ……。これで赤があれば、信号機だな」
 平賀も続けた。
「探せば見つかるかもですよ?」
「でもねぇ、見つけたところで、その意味を知らないと結局現状と変わりませんから」
「赤……Redねぇ……」
「何か思い出したか?」
「東京の地下鉄って、色分けされてるよね?」
 アリスが考え込む仕草をした。
「ああ。黄色なら有楽町線、緑なら千代田線だな。もしくは都営新宿線か」
「敷島さん、JR線も色分けされてますよ?」
「ん?黄色なら中央・総武緩行線、緑なら埼京線か」
「山手線じゃないの?」
「確か、常磐線も緑でしたよね?」
 アリスと平賀が同時に言った。それに答える敷島。
「山手線はウグイス色、まあ黄緑か。で、常磐線の快速は深緑……まあ、最近はエメラルド・グリーンが強調されてますが……。なんで、常磐線各駅停車の方ですかね」

 店内の飲食店に入って、敷島はふと気づいた。
「新宿……」
「は?」
「中央・総武緩行線の黄色、埼京線の緑、山手線、都営新宿線の黄緑色が交わる所と言ったら新宿ですが、ちょっと違いますかね?」
「いや、面白い観点ですよ!新宿と言ったら、財団本部もありますしね」
 平賀もハッとした様子だった。
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“アンドロイドマスター” 「海底に沈む遺産」 3

2014-03-18 19:33:24 | 日記
[同日08:53.京葉線快速電車内 敷島、アリス、エミリー]

 地下深い東京駅京葉線ホームを出た電車は、しばらくの間、地下を突き進んだ。
 地下にもバージョン・シリーズを配置していたことのあるウィリーの話を聞いた敷島は、まさかここにもと思ったが、アリス曰く、
「知らない」
 とのこと。もっとも、当の本人は孫娘にも十分な情報を伝えないまま(できぬまま)この世を去ってしまったので、アリスのせいでもないだろう。

 敷島の予想通り、一駅前の舞浜で多くの乗客が下車した。彼らの目的地は、言わずもがなだろう。
「舞浜という地名は、フロリダ州のマイアミから取ったんだそうだ」
「フロリダ州にディズニー・ワールドがあるもんね」
「だったら、舞という名前でもいいような気がするんだが……。ガチ過ぎるからか?」
 などと喋っているうちに、次駅の新浦安駅へ。

〔「まもなく新浦安、新浦安です。お出口は変わりまして、左側です。新浦安を出ますと、次は南船橋に止まります。通過する各駅へおいでのお客様、向かい側に停車中の各駅停車、蘇我行きにお乗り換えください」〕

 電車がホームに着いてドアが開くと、敷島は電車を降りがてら平賀に電話を掛けた。
「あ、もしもし。おはようございます。今、新浦安駅に着きました。……あ、そうですか。分かりました。では、今向かいますので。……はい。失礼します」
 電話を切ると、敷島は2人の方を向いた。
「もう平賀先生着いてるって。早いなぁ……」
「東京から・近いですから」
 エミリーは微笑を浮かべた。
「そうだな」

[同日09:00.JR新浦安駅前→平賀のプリウス車中 敷島、平賀太一、アリス、エミリー]

「おはようございます。平賀先生」
「おはようございます」
 一瞬、気まずい空気が流れる。
 アリスと平賀は養祖父と師匠が敵同士だったし、生死の因縁もある。
(※前作オリジナル版では敷島が南里を謀殺したことになっているが、リメイク版ではシンディが刺殺したことになっている)
「お待たせして、すいませんね、先生」
 敷島が取り繕うように割って入った。
「あ、ああ。いや、それほどでもないですよ。じゃ、乗ってください」
「先生は現場を御存知なんですか?」
 敷島は助手席に乗り込みながら聞いた。
「十条先生から聞きました」
 すると後ろの席から舌打ちする音が聞こえた。
「十条の爺さん、余計なことして……!」
 アリスが十条に伝え、そこから平賀に伝わったのだろう。
「まあまあ。調査チームは多い方がいいからさ」
 本来は十条が参加するはずだったところ、諸事情により、平賀が参加することになったのだから。
「七海は来なかったんですね」
「まだ子供達が小さいし、ナツも大変ですからね。こういう時、メイドロボットは役に立ちますね」
「なるほど。平賀先生と赤月先生の子供達です。早くも天才科学者の卵ってところですか?」
「いやいや……。自分もナツも、IQ自体はそんなに高いわけじゃないんですよ。その辺は間違えないようにしませんと」

 
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“アンドロイドマスター” 「海底に沈む遺産」 2

2014-03-18 17:08:43 | 日記
[3月21日 06:00 JR仙台駅新幹線ホーム 敷島、アリス、エミリー]

〔14番線に停車中の電車は、6時6分発、“やまびこ”202号、東京行きです。……〕

「ふわぁ……あふ……。何でこんな朝早くなのよ?」
 アリスは大きな欠伸をして言った。
「ただでさえ学生は春休みで、尚且つ3連休じゃ、新幹線もメチャ混みだろうが。早くから行って並ぶんだよ。日本の新幹線ナメんな、アメリカ人」
「確かに・本日の・自由席の・乗車率は・高めに・予想されて・います」
「ほら、エミリーもそう言ってる」

〔「14番線の“やまびこ”202号、東京行き、まもなくドアが開きます。ドアが開きましたら、前の方に続いてご乗車ください」〕

 ドアが開くと、自由席の乗客はぞろぞろと各車両に乗り込んだ。
「ほらな?あっという間に満席だ」
 敷島は、したり顔でアリスに言った。
「うん、分かったからさ……」
 アリスは金色の髪をかき上げる。
「アタシら、“はやぶさ”に乗るのに、ジユー席で並ぶって必要なの?」
「敷島・さん。“はやぶさ”2号に、自由席は・ありません」
「まずい。こりゃ、発車時間間違えたとは口が裂けても言えねぇ……」
「What’s!?時間間違えただ!?」
「あ、あれ!?言っちゃった!?」
「あと30分は長く寝られたのに!」
「分かった、分かったから!朝飯食ったら、少しは機嫌良くなるんじゃないか?エミリー。駅弁買ってきてくれ」
「イエス」
 エミリーは敷島からSuicaを受け取ると、ホームの駅弁売り場に向かった。
「どうしてJRのSuicaなの?」
 と、アリス。
「いや、何だか良く分からないけど、アンドロイドに買い物に行かせる時はSuicaという習慣なんだ」
「???」
(多分、初出はミクだ。あいつ、俺に何か買ってくる時、Suica貸せって言ってきたもんな……)
 そこでふと気づく。
(そういや、今日はミクも都内で仕事があったか……)

[同日07:00.東北新幹線“はやぶさ”2号、1号車車内 敷島、アリス、エミリー]

 大宮までノンストップの最速列車は南下を続ける。
「デカい駅弁、完食かよ……」
 敷島は呆れた。
 それでいて太らないのだから凄い。
 聞けば研究室で、整備の時に重量のあるロボット達を持ち上げたりしているからということだが、果たしてそんなのが大きな理由なのかは不明だ。
「ああ、そうだ。今回の調査、平賀先生も来るってさ」
「平賀教授が?」
「たまたま都内の大学にいたらしいよ。本当は今日、仙台に帰るつもりだったらしいけど、予定を変更するってさ」
「ふーん……」

[同日08:15.JR東京駅コンコース 敷島、アリス、エミリー]

 京葉線ホームに向かうコンコースは、多くの利用者で賑わっていた。
「皆、TDRに行くんだろうなぁ……。あ、でも、俺達は行かないぞ。下車駅も舞浜じゃなく、新浦安だ」
「分かってるよ」
 とはいえ、どことなく唇を尖らせるアリスだった。

[同日08:30.JR東京駅京葉線ホーム 敷島、アリス、エミリー]

〔「この電車は8時36分発、快速、蘇我行きです。八丁堀、新木場、舞浜、新浦安、南船橋、海浜幕張、検見川浜、稲毛海岸、千葉みなと、終点蘇我の順に止まります。途中の新浦安で、各駅停車の蘇我行きに接続致します。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

「平賀先生は直接、現地に行くようだ。まずは新浦安駅に迎えに来てくれるみたいだから、それで一緒に行こう」
「七海は来るの?」
「七海は今、ヘビーシッター代わりだからな。平賀先生が単独で来てるだけだよ」
「何だ、そうか」
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