[同日22:00.TDL前→タクシー車内 敷島孝夫&アリス・フォレスト]
「○○ホテルまで、お願いします」
「はい」
TDL閉園時刻、敷島とアリスは宿泊先のホテルに戻るのにタクシーに乗り込んだ。
「結局、閉園までいたな……」
敷島は疲れた様子で、リア・シートにもたれかかった。
対して、アリスは興奮冷めやらぬ状態だった。
「いやホント、若いっていいわ……」
「? 今日は楽しかったよ。まさか、本当に連れてってくれるなんて思わなかった」
「『男子たるもの、二言発するを許さず』って死んだ祖父さんが言ってたんでね」
「Nigon?」
「まあ、だから三言言ってたけどw」
「……難しいファミリーだったのね。シキシマのキャラクターも、納得だわ」
「何か一瞬ムカついたんだが……」
「それにしても、本当に日本の物価って高いわね」
「日本の物価が、というのも去ることながら、元々日本のディズニー・リゾートの値段がそもそも高いんだよ。土産買うのも大変だ」
「そうだね。フロリダの方が安いかしら?」
「ビザ切れた時にでも、行ってみたら?」
「財団の関係でロング・ステイ・ビザだってこと、知ってるくせに」
「はは……」
財団がアリスをアメリカから研究者として招聘し、長期滞在ビザの発給が降りた。
(それにしても……)
と、敷島は園内でのことを思い出した。
パレードを輝かせた目で見ていたアリス。
その姿は、『狂科学者の孫娘』であることを忘れさせるくらいの無邪気なものだった。
(あれだけ見ていると、フツーのコなんだけどな……)
因みに今は、また研究者の目付きに変わっている。
お土産に買ったティンカー・ベルのぬいぐるみ。これをしげしげと見つめていた。
欲しいのかと思って敷島が買ってあげたのだが……。
(フェアリー型ロボットは需要がある……。ファンシーキャラとして子供の相手とか、はたまたこの小さい体に飛行能力を持たせて軍事的な諜報ロボットとか……暗殺用とか……)
完全に研究資料用だった。
(妖精とかが好きなのか。意外と女の子っぽいところもあるもんだ)
それに気づかない敷島は、ある意味で幸せ者なのか。
(問題は、いかにフェアリー並のハイ・レベルな飛行能力を持たせるかか……)
[3月22日08:30. ホテル内レストラン 敷島&アリス]
(少し、ゆっくりしちゃったな。まあ、チェックアウトまでまだ時間あるし……)
敷島は朝食会場に足を運んだ。
途中にエミリーがいて、やはり寝坊しかけたアリスを起こし、レストランまで運んだという。
(寝起きがいいんだか悪いんだか分からんヤツだな……)
朝食はパンにコーヒーという、コンチネンタル式だ。
ただ、パンも飲み物もおかわり自由らしく、
「アリス……お前なぁ……」
予想通りというか、皿に何個もロールパンやら食パンを何枚も乗っけてドカ食いしていたのだった。
これで太らないのだから、実に便利な体質だ。
「Hi.Good morning.」
「ハイじゃねーし。よく食うなぁ」
「本当はイングランドのタイプがいいんだけど……」
「イングリシュ・ブレックファーストか。あれはかなりボリュームがあるらしいな」
実に、アリス向きということか。
「で、今日の予定は?」
「ああ。この後ホテルを出たら、財団本部に行くよ」
「どこか遊びには?」
「それは本部での解析の進捗具合によるな。もっとも、もうホテルは引き払うから、ディズニー・リゾートは無いけどね」
[同日10:02.東京メトロ東西線浦安駅 敷島、アリス、エミリー]
「そういえば、本部の近くで、ミクがライブやるんだった。それも見に行こう」
敷島は思い出したかのように言った。
〔まもなく2番線に、快速、中野行きが参ります。……〕
「おっ。そういえば、東西線には快速があったな。ちょうどいい。これに乗ろう。エミリー、やっぱり新宿へは高田馬場駅で乗り換えた方がいい?」
「イエス。大手町駅での・お乗り換えは・お勧め・できません」
「分かった」
地下鉄だが、高架駅のホームに電車が滑り込んできた。
因みに浦安駅からTDRへ行くには、路線バスに乗り換えないとダメなので、非推奨ルートとされているが……。
〔浦安、浦安。快速、中野行きです。……〕
「あー、思い出した」
敷島はそこで気づく。
「大手町駅の東西線ホームと丸ノ内線ホームって、かなり離れてたなぁ……」
元・大手町のサラリーマンだった敷島。
〔2番線は、発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕
「昔、俺が働いてた会社がそこにあってだなぁ……」
電車が走り出す。
「で、どこで人生間違えたの?」
アリスはニヤリと笑った。
「間違えたって言うなや!」
〔この電車は東陽町、大手町、高田馬場方面、快速、中野行きです。次は東陽町、東陽町です。東陽町から先は、各駅に止まります〕
「南里研究所への出向を命じられた時が運のツキ……じゃなくて、運命の分かれ道だったんだよ」
「その選択肢を間違えて、人生の迷子になった瞬間って?」
「まさかシンディがウィリーを刺すとはなぁ……!あのポンコツ!……あ、悪い」
「一瞬ムカついたけど、シキシマの気持ちも分からなくは無いね。確かに、シンディのあの行動はナシだわ」
かくいうアリスもまた、シンディの暴走による養祖父の殺傷で人生を大きく変えさせられた1人である。
「○○ホテルまで、お願いします」
「はい」
TDL閉園時刻、敷島とアリスは宿泊先のホテルに戻るのにタクシーに乗り込んだ。
「結局、閉園までいたな……」
敷島は疲れた様子で、リア・シートにもたれかかった。
対して、アリスは興奮冷めやらぬ状態だった。
「いやホント、若いっていいわ……」
「? 今日は楽しかったよ。まさか、本当に連れてってくれるなんて思わなかった」
「『男子たるもの、二言発するを許さず』って死んだ祖父さんが言ってたんでね」
「Nigon?」
「まあ、だから三言言ってたけどw」
「……難しいファミリーだったのね。シキシマのキャラクターも、納得だわ」
「何か一瞬ムカついたんだが……」
「それにしても、本当に日本の物価って高いわね」
「日本の物価が、というのも去ることながら、元々日本のディズニー・リゾートの値段がそもそも高いんだよ。土産買うのも大変だ」
「そうだね。フロリダの方が安いかしら?」
「ビザ切れた時にでも、行ってみたら?」
「財団の関係でロング・ステイ・ビザだってこと、知ってるくせに」
「はは……」
財団がアリスをアメリカから研究者として招聘し、長期滞在ビザの発給が降りた。
(それにしても……)
と、敷島は園内でのことを思い出した。
パレードを輝かせた目で見ていたアリス。
その姿は、『狂科学者の孫娘』であることを忘れさせるくらいの無邪気なものだった。
(あれだけ見ていると、フツーのコなんだけどな……)
因みに今は、また研究者の目付きに変わっている。
お土産に買ったティンカー・ベルのぬいぐるみ。これをしげしげと見つめていた。
欲しいのかと思って敷島が買ってあげたのだが……。
(フェアリー型ロボットは需要がある……。ファンシーキャラとして子供の相手とか、はたまたこの小さい体に飛行能力を持たせて軍事的な諜報ロボットとか……暗殺用とか……)
完全に研究資料用だった。
(妖精とかが好きなのか。意外と女の子っぽいところもあるもんだ)
それに気づかない敷島は、ある意味で幸せ者なのか。
(問題は、いかにフェアリー並のハイ・レベルな飛行能力を持たせるかか……)
[3月22日08:30. ホテル内レストラン 敷島&アリス]
(少し、ゆっくりしちゃったな。まあ、チェックアウトまでまだ時間あるし……)
敷島は朝食会場に足を運んだ。
途中にエミリーがいて、やはり寝坊しかけたアリスを起こし、レストランまで運んだという。
(寝起きがいいんだか悪いんだか分からんヤツだな……)
朝食はパンにコーヒーという、コンチネンタル式だ。
ただ、パンも飲み物もおかわり自由らしく、
「アリス……お前なぁ……」
予想通りというか、皿に何個もロールパンやら食パンを何枚も乗っけてドカ食いしていたのだった。
これで太らないのだから、実に便利な体質だ。
「Hi.Good morning.」
「ハイじゃねーし。よく食うなぁ」
「本当はイングランドのタイプがいいんだけど……」
「イングリシュ・ブレックファーストか。あれはかなりボリュームがあるらしいな」
実に、アリス向きということか。
「で、今日の予定は?」
「ああ。この後ホテルを出たら、財団本部に行くよ」
「どこか遊びには?」
「それは本部での解析の進捗具合によるな。もっとも、もうホテルは引き払うから、ディズニー・リゾートは無いけどね」
[同日10:02.東京メトロ東西線浦安駅 敷島、アリス、エミリー]
「そういえば、本部の近くで、ミクがライブやるんだった。それも見に行こう」
敷島は思い出したかのように言った。
〔まもなく2番線に、快速、中野行きが参ります。……〕
「おっ。そういえば、東西線には快速があったな。ちょうどいい。これに乗ろう。エミリー、やっぱり新宿へは高田馬場駅で乗り換えた方がいい?」
「イエス。大手町駅での・お乗り換えは・お勧め・できません」
「分かった」
地下鉄だが、高架駅のホームに電車が滑り込んできた。
因みに浦安駅からTDRへ行くには、路線バスに乗り換えないとダメなので、非推奨ルートとされているが……。
〔浦安、浦安。快速、中野行きです。……〕
「あー、思い出した」
敷島はそこで気づく。
「大手町駅の東西線ホームと丸ノ内線ホームって、かなり離れてたなぁ……」
元・大手町のサラリーマンだった敷島。
〔2番線は、発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕
「昔、俺が働いてた会社がそこにあってだなぁ……」
電車が走り出す。
「で、どこで人生間違えたの?」
アリスはニヤリと笑った。
「間違えたって言うなや!」
〔この電車は東陽町、大手町、高田馬場方面、快速、中野行きです。次は東陽町、東陽町です。東陽町から先は、各駅に止まります〕
「南里研究所への出向を命じられた時が運のツキ……じゃなくて、運命の分かれ道だったんだよ」
「その選択肢を間違えて、人生の迷子になった瞬間って?」
「まさかシンディがウィリーを刺すとはなぁ……!あのポンコツ!……あ、悪い」
「一瞬ムカついたけど、シキシマの気持ちも分からなくは無いね。確かに、シンディのあの行動はナシだわ」
かくいうアリスもまた、シンディの暴走による養祖父の殺傷で人生を大きく変えさせられた1人である。