たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

机上の静物の変奏に美の本質を見つめたモランディ

2016-04-06 10:14:07 | 展覧会・美術展

東京駅ステーションギャラリーで開催中の、
ジョルジョ・モランディ~終わりなき変奏~で生絵を観てきました。
モランディが終生を過ごしたボローニャにある「モランディ美術館」から、
収蔵作品100点を一堂に展覧した展覧会です。


初期から晩年まで11のセクションに分類し解説が付いていました。 
モチーフのほとんどは、卓上静物か、数少ない造花描写、風景画です。
それも総べて色彩を控えた「物」として描かれています。
同じモチーフの水差しやカップ、瓶の配置を変えて生み出す、
光や影の微妙な組み合わせだけで「物」の変奏を描出する。


「変奏・ヴァリエーション」の簡素な油彩画が並びます。
観ていると不思議な落ち着きに引き込まれます。



ボローニャに生まれで、画壇との付き合いを避けて、
存在するもの(静物)だけに拘った画家・ジョルジョ・モランディ(1890~1964)
作品を知ったのは、イタリア在住40年、帰国後、
珠玉のエッセイを書き続けた須賀敦子さんの作品を読んでからでした。
須賀さんはモランディの静物画が大好きでした。全集(文庫版)の表紙になっています。


この事は、以前のたにしのブログにも書きました。
須賀敦子の著作に出会う「モランディの静物」

東京ステーションギャラリーは他の美術館とは全く雰囲気が違います。
展示室内部は東京駅の歴史を体現する当時の煉瓦壁の美術館です。
つまり重要文化財の赤レンガの壁も美術館の作品のようなんです。
写真は丸の内北口の改札広場です。美術館への入り口があります。



その赤レンガの壁にモランディの静物画が掛かっています。
移動のための2階と3階を繋ぐ赤レンガの階段がいい雰囲気です。
ここが喧騒に満ちた東京駅の内部空間だと思うと不思議な静けさです。
北口広場の天井装飾です。いまでも見上げて写真を撮る人が居ます。



鑑賞者は皆、静にゆっくり移動する静物のようでした。
会期は10日までです。



毎日新聞から切り抜き