たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

「関ヶ原・敗者たちの勝算と誤算」(著者:武光誠、大型活字文庫)を読む

2016-08-27 13:49:25 | 本・読書

市川市中央図書館の大型活字本のコーナーで見つけてきました。
大変興味深く、一気に読み終えました。実に面白いです。

いま、NHKの大河ドラマ「真田丸」が関ヶ原の戦い前夜に差し掛かっています。
主君・秀吉の遺言を無視し、勝手に振舞う徳川家康。
許せない石田三成は、家康成敗を決意する。
最も信頼できる武将・大谷吉継に協力を要請するが、‥‥



この大型活字本「関ヶ原・敗者たちの勝算と誤算」は、
石田三成と西軍の中心になった大谷吉継はじめ、
安国寺恵瓊、毛利秀元、上杉景勝、立花宗茂、真田昌幸、島左近、
宇喜多秀家、小西行長、直江兼続の12人の武将たち。

関ヶ原の戦いで徳川家康と敵対する側に立った所以と、
理想、野望、義理、保身、打算が渦巻く戦国ドラマを通して、
敗者たちの思いと運命の変転と生き様が描かれています。
大型活字でストレス無く、一気に面白く読み終えました。



石田三成は「反徳川家康」同盟の形成に自分を追い詰めていく、
石田三成はなぜ、徳川の天下取りを忌避したかったのか――

冒頭に置かれた章――石田三成から終章の直江兼続まで、
反徳川陣営に参加に至る葛藤、思惑、戦さの最中の優劣、
勝算、裏切りなど各武将の心理状態、心情に分け入って、
史実をもとに、筆者(武光誠)はリアル想像で筆勢を進めます。
そのときの状況と独白で構成された臨場感一杯の戦国フィクションでした。



三成はつぶやく、
「大きな流れに身をまかせるのは、楽だ、しかし、それに、何の益があるだろうか」
――この日本には夢を追って生きる侍が多くいる。かれらの夢を叶えるためならば命も惜しまない。

「しかし」と三成はつぶやく。
――かけがえのない「侍の夢」を奪うのが、家康どのだ。
すべての侍は家康どのの天下の下、
忠実な番犬、小役人、あるいは農夫たちへの奉仕者に成れというのか。

石田三成は、このとき家康と対決する道を選択した。
「われら戦国の男子は、己の器量を用いて思うままに出世することを夢見てきた」
徳川の秩序は「生まれたままの身分にあった生涯をおくれ」と言う。

三成は声をだして言った「徳川の支配のもとで、ただ生きていくだけで良いのか」
そして三成は自分に語りかけた。
「『己の技で一国一城の主たらんとする武士の夢』よ。この夢を持つものが集えば、
『豊臣の世を保つ』理想が具現化する」

決意を込めた三成の書状が樽井宿(大垣)にいる大谷吉継に発出された。
大谷吉継は三成と並ぶ「豊臣恩顧の武将」だった。
第二章は、いま歴女たちの間で真田幸村と人気を二分する「大谷吉継」の、
「起つか退くか」葛藤がドラマチックに描かれます

作者の武光誠さんは、1950年、山口県防府市生まれ。
1979年、東京大学大学院国史学博士課程を修了。現在、明治学院大学教授。日本古代史を専攻し、
歴史哲学的視野を用いた日本の思想・文化の研究に取り組む学者さんです。(同書から抜粋)
日本の歴史物語など多数の作品があります。

NHK真田丸は「武士の夢を追う三成」が、
「階層固定化をもくろむ腹黒・家康」に追い込まれ、
抜き差しならぬ状況から「勝算無き」関ヶ原の戦いに向かいます。

また、NHK[BSプレミアム]2016年8月25日(木) 午前8:00~9:00(60分)
英雄たちの選択「大谷吉継 関ヶ原もうひとつのシナリオ 誤算に消えた西軍必勝」
の再放送がありました。奇しくも同番組を見ました。
秀吉死後の豊臣政権を支え、家康からも信頼された大谷吉継。
なぜ圧倒的に不利な西軍に加わったのか、
歴史家たちの検証を興味深く拝見しました。

引き続いてこの本を読んでいます。
文字が小さいのでなかなか進みません。