たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

太陽神アポローンに愛された美少年が変身したヒヤシンス

2020-04-14 12:24:13 | 花とつぶやき

春の道野辺の足元を彩る紫色の花列ヒヤシンス。
美少年の化身した姿だという哀しくも妖しい神話があります。

古代ギリシャの神々と言えば、
全能の神ゼウスに次いで、太陽の神アポローン。
美しく輝く肉体容姿で象徴される美男神ですね。

美しい女性たちが取り巻いていました。
いくつかの恋をしたが、恋の終わりは、
不幸な結果に終わって、彼を嘆かせました。

神話の古代ギリシャ時代は、オリーブの香りと、
たくましい身体の象徴として、同性愛が普通でした。

アポローンも恋の遍歴の果て最後に、
美少年のヒュアキントスを得ました。



ある日二人は、裸になり、
オリーブ油を塗った肌を輝かせながら、
円盤投げの遊びに興じました。

アポローンが大きな円盤を腕を撓らせながら投げ上げた。
少年は落ちてきた円盤を拾うと駆け寄っていった。
円盤は弾んでヒュアキントスの顔面を直撃して額を割った。

アポローンは少年を抱き起こし、体を愛撫し、
傷口に薬草を塗り、去り行く魂を引きとめようとした‥‥
美少年はそのままアポローンの腕の中で息絶えました。



「青春の花を奪われて‥‥」アポローンは嘆き悲しみ、
お前の思い出が永遠に残るように、悲しみを訴えると、

地上の草を染めていたヒュアキントスの血が、
鮮やかに変わり紫色の花が咲き出た。
花びらにアイアイ(悲しい悲しい)という、
嘆きの文字が浮き出ていたという。

こうして美少年ヒュアキントスは花に化生したのでした。
この花こそが春の野辺を彩るヒヤシンスなのだろうか。



手元にある多田智満子著「花の神話学」2,330円 白水社 1991年刊から、
ストーリーの概略を抜書きさせていただきました。
同書では、もっと詳細に変身譚が述べられています。
世界に今でも残っているヒュアキントスを祀る祭りもあるという。