写真上は、昆明市内の羊のしゃぶしゃぶのお店にて。鶏ガラスープにふんだんに生薬が入っている。漢方風の香りが食欲をそそる。写真下は、昆明の雲南料理の名店・石屏会館の料理。木の毛根を揚げたもの、と説明を受けた。かき揚げゴボウのような味がした。(2008年夏撮影。)
【生活に密着した漢方】
雲南で病気にかかると、お金を持つ親なら子どもにはまず、西洋医学の病院で診察を受け、西洋薬を中心に、プラス漢方の処方箋をもらい、病院の医局もしくは街の薬局に買いに行きます。
一方、大人は、病院に行く前にまずは漢方を試す、もしくは漢方を中心にした病院にかかることが多いようです。
以前にも話しましたが、知り合いの70才くらいの老大人は、雲南特産の「三七」のなかでも、もっとも高価な七年物の丸々とした根を、半年以上飲み続け、ついには白内障を治した、と自慢しておりました。
また、雲南の社宅では、秋ごろ、お年寄りのご夫婦が朝からゴボウのような木の根(黄色)をスライスしたものを広げてはお日様に干し、夕方になると取り込むことを1週間以上、繰り返していました。その名前をご夫婦に伺ったのですが、雲南方言が強くてわかりませんでした。市場の札を後で見ると、「黄耆」と書いてありました。強壮、止汗、利水、排膿などの効能があり、代表的な補気強壮薬〈胃腸系を強めて気を補い、体全体の強壮をはかる薬〉だそう。―漢方薬の生薬.comより。)なのだそうです。
フワフワの毛根のような木の根などを干している光景も見ました。それらは昆明近辺の山でとれた草や根。普通の野菜の10倍以上の値で市場に採れる季節になると出てきます。これも聞き取れなかったけど、何かの漢方だとのこと。それらを買ってきては自分で手を加えて、家族や親戚の薬にしているのです。
半完成品の生薬は、市場が少なくなったので気軽には買いにくくなりましたが、それでもいけば、季節によっては二〇種類ぐらいが種類ごとに分けられて売られています。昆明なら少量でよければ、カル・フールなどの大きなスーパーに行っても、買うことができます。
薬膳料理とまではいかなくても、日常的にしょうがやニンニクを中心に、ドクダミの根を含め、これら豊富な季節の野菜を、豊富に日常的に料理しているのは、やはり健康によさそうです。
日本でも、ここ10年ぐらい「太極鍋」や「モンゴル鍋」などと呼ぶ、辛い汁や鶏ガラスープの中国わたりの鍋料理が食べられる店がありますが、これは雲南でも定番。さらにいえば、それほど値段の高くない店でも、鍋にクコの実やナツメ、竜顔、草莓などといった時々の生薬を、頼まなくてもふんだんにうかべてくれるのが雲南風。今でも娘はこの鍋がむしょうに食べたくなる、といっていますが、日本でこの鍋を再現したら、とてつもない金額になってしまうでしょう。
本屋にいけば、いつでも薬効のある食べ合わせや、逆に食べ合わせたらいけない食べ物を紹介した本はいつも、ベストセラー。明(日本の室町から江戸時代初期ごろの中国の王朝)の李時珍が書いた漢方の元となる本『本草綱目』も、何度となく編集し直されては、売れ筋の棚に並んでいます。
「医薬同源」のお国だけに、そして、動植物の種類の豊富さを誇る雲南だけに、薬に対する考え方は日本とはだいぶ異なるようです。
(つづく)
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